Infoseek 楽天

人気チャットアプリ「Discord」、小児性愛コンテンツも野放しの衝撃

ニューズウィーク日本版 2019年2月8日 18時0分

<ソーシャルメディアの番人役であるモデレーターが集団で関与していた>

「ディスコード」は米国発のゲームユーザー向けチャットアプリ。毎日1900万人のユーザーがチャットルームに集まり、ビデオゲームから「スティーブン・ユニバース」などの人気アニメにいたるまで、様々なことを話している。2015年5月に開始したこのチャットアプリは今、違法行為の温床として批判を浴びている。米誌フォーブスは、ディスコードのプラットフォーム上で、盗品(ネット上のパスワードやアカウントを含む)やハッキング方法の売買、さらには性的虐待目当ての子供の待ち伏せが横行している疑いでFBI(米連邦捜査局)が捜査中、と報じた。

同時に、社内スキャンダルも発覚した。違反コンテンツの監視・削除を行う「モデレーター」と呼ばれるスタッフ自らが、個人の嗜好を理由にルールを破っていたのだ。違反は特に「ファーリーズ」(Furries、「擬人化された動物」の意)を自称するモデレーターやユーザーの間で目立つ。一部のモデレーターは行動規範に反して、子供を性的対象にした合成ポルノを共有するコミュニティを贔屓にしていた。ユーザーがそうした行為を知ったのをきっかけに、ソーシャルメディア上では「#ディス―ドを改革せよ」#ChangeDiscord運動が巻き起こった。


ディスコードで未成年を性行為に誘い出す手口を警告する動画

ディスコードは本誌の取材にこう回答した。「当社はコミュニティの安全を真剣にとらえており、信頼と安全を常に評価し、改善している。デジタル技術を活用した対話型プラットフォームにはリスクが付き物だ。当社はユーザーの安全を確保し強化するため、必要に応じて司法当局と密接に捜査協力している」

カブ・プレイ

他社のソーシャルメディアと同様、ディスコードはコミュニティガイドラインを定めている。違反したユーザーはモデレーターにアカウントを禁止され、コミュニティごと削除される可能性もある。

2018年2月、ディスコードは提携するサーバーにおいて、職場や学校で閲覧するのに適さない「NSFW(ノット・セーフ・フォー・ワーク)」のコンテンツを完全禁止すると発表した。「サーバー内におけるコミュニティの居心地を良くするためにこの方針を打ち出した。今後もすべてのユーザーに安全な利用環境を提供していく」

ディスコードのコミュニティガイドラインで特に監視対象とするのは、幼い男の子や女の子を性的対象にした「ショタコン」や「ロリコン」を含む「子供の合成ポルノ」だ。

2019年1月下旬、ディスコードのユーザーが米ニュースサイト「レディット」のサブフォーラムである「サブレディット」上に、TinyFeexというハンドルネームで知られるディスコードの管理者とやり取りした際のメールの内容を転載した。その中でTinyFeexは、「カブ」関連のコンテンツは利用規約に違反しないと書いた。「カブ」は、擬人化された動物のキャラクターを好む「ファーリー」のコミュニティにおいて未成年のメンバーを指し、「カブ・プレイ」はカブとの性行為を表す際に使われる。ディスコードのユーザーたちが管理者のメールのコメントを非難すると、すぐにサブレディットの管理者が投稿を削除し、ディスコードの安全向上協議会のkarrdianというモデレーターによる回答を掲載した。

「『カブ』と『ロリ』には重複する部分がある」とkarrdianは書いた。「『カブ』の描写にも、全く人間っぽくないものもあれば、架空の生物に見えるものもある。そうしたコンテンツはかなりグレーゾーンにあり、一概に全面禁止にはしていない」



ファーリーとディスコード

ユーザーたちはディスコードの利用規約の担当チームとのやり取りをシェアし始めた。ツイッター・ユーザーMrTempestilenceは2月3日、ズーフィリア(動物性愛)が動物ポルノを投稿していることやモデレーターが「カブ・プレイ」を許容していることなど、ディスコードに対する非難の内容を詳細に投稿。そのツイートが拡散を始めた直後、ディスコードの「ゲイ、ズー、ファーリー」コミュニティは削除された。

「最初はディスコードのスタッフがどれほどひどいかを単にからかうつもりだった。でもスレッドで追加情報を投稿し始めた時、事の重要さに気付いた」と、MrTempestSilenceは本誌に語った。「ディスコードのスタッフがどれほど有害か、みんなが知る必要がある。自分はそれを知らせることができた」

そのツイートは8000人超から「いいね」を集めた。翌2月4日には、フリーランス・ジャーナリストのニック・モンローが、ディスコードの利用規約を担当するモデレーターとファーリーのコミュニティの間の結び付きについて追及を始めた。「スレッドを読めば自ずと実態は明らかだった」と、モンローは本誌に語った。「あのスレッドを読んだ誰の目にも、ディスコードの安全向上協議会の対応は異常だった」

ツイッターのハッシュタグ「#ChangeDiscord」はソーシャルメディアで広まり、モデレーターとの過去のやり取りをシェアするユーザーがさらに増えた。モンローとMrTempestSilenceは、ディスコードの利用規約を担当するモデレーターでファーリーであると見られるallthefoxesが、自分の気に入ったコミュニティが削除されないようにする「カブ」の特例を最初に生み出した人物だと主張した(ディスコードの広報担当者はそれについて返答しなかった)。

ディスコードは本誌の質問にこう回答した。「当社は利用規約とコミュニティガイドラインを定めており、すべてのコミュニティとユーザーが遵守する必要がある。それらは特に嫌がらせや脅迫のメッセージ、暴力の呼びかけ、またはあらゆる違法活動を禁止し、さらにドクシング(個人情報の漏洩)など他社のプラットフォームより広範な行為をカバーする内容になっている。われわれはユーザーの私的なメッセージを読まないが、サーバーやユーザーから違反に関する通報を受ければ捜査し直ちに対処する。その際はサーバーを閉鎖するかユーザーを追放することもあり得る」

ソーシャルメディアのモデレーターは難しい仕事だが、プラットフォーム企業の存続には必要不可欠だ。もし自分は不当な理由で追放された、あるいは他人の便宜のためにルールがねじ曲げられたと感じれば、ユーザーは他社に逃げるかもしれない。

(翻訳:河原里香)




スティーブン・アサーク

この記事の関連ニュース