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お金持ちになりたいなら、もっとお金を使おう

ニューズウィーク日本版 2019年2月18日 11時5分

<お金持ちになるためには「節約・貯金をすべきではない」。豊かな生活を送るための第一歩は、投資の知識などより、「デキる人」のお金の使い方を学ぶこと>

日本は今、景気がいい。しかし悲しいかな、その実感を持てない人が多い。将来が不安だ、給料が上がらない、もっと節約しなければ......。

所得の上昇が伴っていないといった、好景気を実感できないことの原因はここでは措いておくとして、あなた個人がもっと豊かな生活を送るには、どうしたらいいだろうか。

お金持ちになるには「もっとお金を使うべし」――。

そう訴えるのが、『デキない人のお金の使い方 デキる人のお金の使い方』(CCCメディアハウス)の著者、柴田博人氏と竹松祐紀氏だ。本書によれば、貯金は美徳という考えは大いなる過ち。「備えあれば憂いなし」という格言があるが、現実には憂いがなくなるどころか、貯金こそが人生を破綻させる一因になりかねない。

確かに、日本人は貯金が好きだと言われる。日本銀行の調査によると、家計の金融資産のうち実に52.5%を「現金・預金」が占めている。アメリカの場合、「現金・預金」は13.1%にすぎず、最も比率が高いのは「株式等」の36.2%だ。対して、日本の家庭における「株式等」の割合は10.9%に留まっている(日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」2018年8月)。

では、なぜ貯金したり節約したりするのが、良くないことなのだろうか。

お金の使い方の上手い人がお金持ちになれる

節約して地道に貯金していけば、銀行の預金残高は増えていく。しかし、寿命は延び、今や「人生100年」時代。

大雑把な計算になるが、例えば毎月10万円ずつ貯めるとすると、1年で120万円、30年で3600万円だ。大金のように思えるが、それでも引退後の余生に十分ではない。総務省の調査によれば、高齢世帯などの無職の夫と妻の家計で1月に約25万円の支出があり、3600万円の貯金は12年で使い切ってしまう計算になるのだ。

本来、お金というのは交換のための「道具」にすぎない。かつての物々交換の時代から、より利便性と公平性を高めるためにお金が発明された。

今では、それ自体が価値あるもののように思われがちだが、お金は、それだけではほとんど無価値と言っていい。欲しいものを手に入れたり、行きたい所に行ったり、あるいは夢や希望をお金で買うとしても、結局は「使う」という行為が必要だ。

それが、お金を何かに交換するということであり、お金はそのためにのみ存在する。だから、包丁やバットといった道具の扱いに長けた人が一流の料理人やプロ野球選手になれるように、お金という道具の使い方(=交換の仕方)が上手い人がお金持ちになれる、と著者たちは説く。



「消費」「浪費」「投資」の3つの箱をイメージする

どんな道具でもそうであるように、積極的に使わなければ上達はしない。だから「もっとお金を使おう」というのが本書の主旨だ。だがそうは言っても、無頓着に使ってはいけない。どんなに便利な道具でも、使い方を誤れば人を傷つけることもあるからだ。

著者たちが説く「上手なお金の使い方」は、決して難しいことではない。その第一歩は、「何のために使うのか」を常に意識すること。コンビニで水1本を買うにしても、それは何のためなのか、本当に必要なのか、それが自分にとってどういう意味があるのか――お金を使う目的を考えるのだ。

そのとき、「消費」「浪費」「投資」という3つの箱をイメージしよう、と著者たちは言う。すべての出費は、この3つに分類されるからだ。ただし、どれかが正しくて、どれかは間違っているということではない。たとえ浪費だとしても、自分にとって必要であれば、それでいい。まずは意識することが重要だ。

そうすると、無用な出費が減るだけでなく、自分が本当に欲しいものが分かり、より良いお金の使い方ができるようになるという。それは決して節約できるという意味ではなく、自分が最も幸せを感じられ、かつ豊かになれる場所を知るということだ。

「お金持ちになりたい!」と話す人の多くが、「では、いくら欲しいのか?」という質問に答えられない。なぜなら、考えていないからだ。それでは到底叶わない。日々お金を使う場面での小さな積み重ねが、自分が本当に欲しいものを理解するカギとなり、豊かな人生への扉を開いてくれる。

大事なのは「感覚」 お金持ちがお金持ちになったきっかけ

本書の著者のひとりである柴田博人氏は、建設会社の社長の息子として生まれた。小学生の頃、同級生が嬉しそうに話していた「給料日」というのが、自分の家では「いちばんお金がない日」だと教えられたことで、お金には「払う人」と「もらう人」がいることを知ったという。

そうした経験によって、幼いうちにお金に対して対等な感覚を身につけたことが、結果的に、大きく稼いで富を築く土台になったそうだ。現在では、株や不動産などの投資で安定的に資産を築く一方、ビジネスでも大きな成功を手にしている。

対して竹松祐紀氏は、地方の公務員家庭に生まれ、本人曰く「お金持ちは『悪い人』」だと思っていたそうだ。そのため、プロ野球選手のような1億円プレーヤーに憧れたものの、そのためには何かしら嫌なことをしなければいけない、という思いがあったという。

だが、実際それに近い経験をする中で「何かが違う」と感じるようになった。そこからさまざまな学びを通して、お金は「我慢の対価としてもらえるもの」ではなく、「他人に喜びをもたらす価値を提供する対価としてもらえるもの」と気づいたのだという。

それによって、竹松氏の人生は「ブレーキが外れ」たそうだ。柴田氏と出会ってビジネスパートナーとなり、現在までに100億円を超える売り上げを生み出している。



誰もが貯金ばかりする社会では、誰も豊かになれない

お金持ちになるために必要なのは、どんな仕事で稼ぐか、どう投資してリターンを得るかということ以前に、まずはお金持ちのマインドセットを持つことなのかもしれない。だから柴田氏、竹松氏によるこの本でも、金融資産の増やし方に関するアドバイスに入る前に、お金をどう考え、どう使うかを丁寧に説明している。

残念なことに、これまで日本ではお金の使い方について学ぶ機会がほとんどなかった。それに加えて、「貯金すべき」という無意識の圧力を自分にかけてしまい、お金を使うこと自体に躊躇したり、罪悪感を覚えたりする人が少なくないようだ。

だが、それが結果的に、どんなに貯金しても豊かになれない要因となる。

考えてみてほしい。誰もが貯金ばかりしてお金を使わないと、経済が回らず、あなたの元にお金は入ってこない。お金を使う人がいなければモノが売れず、企業の利益は伸びず、給料も上がらない。だから、自分がもっと稼ぎたければ、まずは自分がもっとお金を使うことから始めるべきだ。

そうは言っても、お金を手放すのは難しい。そこで、著者たちはこう言う。

(前略)今手元にあるお金は、「預かっている」と表現することもできます。今は一時的に自分のところにあるけれど、そのうち使って、別のだれかのもとに行くことが、あらかじめ決まっているからです。(中略)そもそも「自分のもの」にはなっていないのです。お金は、だれのものでものでもないのです。(196~197ページ)

そのうえで、もし放置したままの定期預金やタンス貯金があるなら、まずはそれを使ってみることを勧めている。「貯金はお金が眠っている」と言われるが、著者たちに言わせれば「死んでいるも同然」だ。

だが幸い、お金は生き返る。死に金を蘇らせることから始めてみてはどうだろうか。


『デキない人のお金の使い方 デキる人のお金の使い方』
 柴田博人×竹松祐紀 著
 CCCメディアハウス


※当記事は2018年11月19日にアップした記事の再掲載です。


ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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