Infoseek 楽天

不動産投資はもう「安く買って高く売る」投資ではなくなっている

ニューズウィーク日本版 2019年2月18日 15時15分

<「サラリーマンでも買える」不動産投資がいま注目されている理由。「ミドルリスク・ミドルリターン」となった不動産投資は、どんな魅力があり、どんな点に注意すべきか>

銀行預金の金利は上がらず、将来年金をどれだけもらえるかも分からない......そんな状況の中、そろそろ自分も資産運用を始めたほうがよさそうだ、と思う人が増えています。株式、債券、金(きん)など投資対象にはさまざまな種類がありますが、最近注目されているのが不動産投資です。

「サラリーマンでも買える」「300万円から投資できる」といった謳い文句を掲げる広告や書籍も目立つようになっていますが、果たして、そうした投資で本当に利益を出せるのでしょうか? 他の投資と比べて、どんなメリットとデメリットがあるのでしょうか?

不動産投資の最大の魅力は「インカムゲイン」

「不動産投資」とは、土地や建物といった不動産にお金を投じて利益を得ることです。

株式や金などの場合、購入したときよりも売却したときの価格が高ければ、その差額が利益になります。もちろん不動産でもそれは同じで、かつてバブルの時代には「(かなり)安く買って(ものすごく)高く売る」ことで莫大な財産を築いた人も多くいました。

しかし、近年人気を集めている不動産投資は、それとは違います。

企業の株式を保有している株主は、業績に応じて「配当金」を受け取ることができます。不動産投資における配当金のような存在が「賃料」です。購入した物件を貸し出すことで、そこから毎月一定の利益を手にすることができるのです。

配当金や賃料のように、保有していることで継続的に得られる利益を「インカムゲイン」と言います。反対に、売却したときに得られる利益を「キャピタルゲイン」と言い、投資の利益と言えば、このキャピタルゲインだと思っている人も多いかもしれません。

しかし、いま不動産投資が幅広い層に注目されているのは、まさに「インカムゲイン」の魅力が大きいからなのです。

「年利回り5%」でも定期預金の20倍になる

例えば、500万円でワンルームマンションを購入したとします。これを月5万円で貸し出すと、年間の賃料収入は60万円になります。利回りは12%。株式投資の平均利回りは6%前後と言われているので、その倍です。

実際、インターネットで検索してみると、300万円で利回り10%以上の投資用物件は多く見つかります。この場合、月々2万5000円、年間30万円の収入になります。「そんなものか......」と思うかもしれませんが、同じ300万円を銀行に預けておいた場合と比べれば、その差は歴然です。

ネット銀行でキャンペーンなどを活用しても、定期預金の金利はせいぜい0.25%。300万円を1年間預けて得られる利益(利息)は7500円です。もし300万円の物件で利回り5%だったとしても、年間15万円の賃料収入は、7500円の利息の20倍ということなのです。

株式の場合、企業が急成長を見せれば、時には株価が10倍(つまり1000%)以上になることもあります。しかし同時に、予期しない要因で急落することもありますし、最悪の場合には会社が倒産して株式価値がゼロになるリスクも抱えています。

一方、銀行預金はゼロになることはありません(銀行が破綻しても元本1000万円までは保護されるため)が、その分、得られる利益も少ないわけです。



それに対して不動産投資は、金額は大きくないかもしれませんが、借り主がいる限り毎月安定して収入を得られます。物件の価値がゼロになる可能性は低く、購入資金を借り入れできること、購入した物件を担保にできることなども、他の投資と比べた場合のメリットと言えます。

また、積極的に物件のメンテナンスやリフォームをするなど「事業」として取り組むことで、より高い賃料で貸し出せるだけでなく、節税にもつながります。

空室が続けば破産するというリスクも

資産運用をしたいけれど、株はよく分からないし、銀行に預けておくのはもったいないし......と思っている人ならば、ここまでの話を読んで、不動産投資に興味が湧いたかもしれません。ただし、不動産投資にも当然デメリットはありますし、相応のリスクもあります。

最初に挙げられるのが、空室リスクです。どんなにいい物件を手に入れても、借りてくれる人がいなければ利益になりません。だからといって賃料を下げれば、予定していた収入が見込めません。借り入れをしている場合は返済が厳しくなり、赤字が膨らんで破産してしまうケースもあります。

中古物件の場合、設備などの修繕に想定以上の出費がかさめば、やはり赤字になってしまうリスクがあります。売却しようにも、物件の価値が下落して売れないとか、損失覚悟で値下げする必要があるかもしれません。

さらに、自然災害や火災などで物件が倒壊・消失してしまう可能性があることも、忘れてはいけないリスクです。

全ては「物件選び」にかかっている

常に借り手がつくか、経費は最低限に抑えられるか、売却したときに利益になるか......結局のところ、全ては「物件選び」にかかっている、と言っても過言ではありません。

それには、物件のあるエリアも非常に重要です。人口が少ない地域では、必然的に借り手を見つけるのは難しくなります。反対に人気の地域であれば、築30年の中古物件でもそれなりの賃料で貸し出せます。

中古ワンルームマンションから、一棟アパートや戸建て、はたまたビルオーナーまで、不動産投資にもさまざまな種類があります。当然、必要となる金額は大きく違いますし、抱えるリスクも異なります。物件選びの前に、不動産投資によってどんな利益を得たいのかを明確にすることが重要です。

物件探しの際に注意してほしいのが利回りです。確かに利回り10%以上の物件は多くありますが、ほとんどの場合、この数字は「表面利回り」です。上記の説明でも「300万円で利回り10%なら年間30万円の収入」と書いたように、単純に割り算をしただけの数字なのです。



実際には、物件購入時には経費や税金がかかりますし、その後も管理・修繕費や保険料、税金などのコストが発生します。つまり、300万円の資金と利回り10%の物件があったとしても、それだけで年30万円が手元に入ってくるわけではないのです。

物件選びの際には、これらを計算に入れた「実質利回り」と、賃料収入からコストや返済分を差し引いた「キャッシュフロー」(実際に手元に残る金額)を確認する必要があります。高い表面利回りに気を取られて、赤字物件をつかんでしまっては元も子もありません。

自分に合った投資スタイルを見極めることが大切

数万円から始められる株式投資と比べると、不動産投資は投じる金額が大きくなります。借り入れができれば自己資金が少なくて済むことは事実ですが、それはあくまで「借金」であり、返済できないリスクを負うということを忘れずに。

株式にせよ、不動産にせよ、投資信託や債券、金などにせよ、投資には常にリスクが伴います。そのリスクを十分に理解した上で、リスクを負うことを選択するからこそ、リターンを得られるのです。

どんなリスク(投資)を選ぶべきかは、どんなリターンを得たいかによって異なります。年金代わりに老後資金を貯めたいのか、子供の教育費にしたいのか、生活費の足しにしたいのか。それとも、不労所得だけで食べていく生活を目指すのか。

自分にふさわしい投資スタイルを見極めることが何よりも大切です。その選択肢のひとつとして不動産投資を視野に入れてみると、これまで見えていなかった可能性が開けるかもしれません。

※当記事は2018年7月9日にアップした記事の再掲載です。

ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

この記事の関連ニュース