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「マリフアナ合法化で暴力犯罪は増え続ける」

ニューズウィーク日本版 2019年2月19日 18時15分

<なし崩し的に解禁へと向かうアメリカで、元ニューヨーク・タイムズ記者が出す警告の深刻度>

20年前のアメリカで、マリフアナ合法化に賛成する人は3分の1以下だった。それが昨年秋のピュー・リサーチセンターの調査では62%が賛成。ミレニアル世代では4分の3近くに上る。

現在は33州が慢性疼痛や不安神経症などの治療に医療用マリフアナの処方を認め、うち10州が嗜好用マリフアナを合法化している。企業など推進派はマリフアナを大々的に宣伝しているが私たちは健康への影響をきちんと把握しているのだろうか?

理解は足りていない、とニューヨーク・タイムズ紙の元記者アレックス・ベレンソンは言う。彼は、犯罪心理学者である妻との会話でその事実に気付いた。自分が出会った人の多くが罪を犯したときにマリフアナでハイになっていたか、マリフアナ常用者だと妻は語ったという。

ベレンソンが調査をしたところ、驚いたことに、妻の発言を裏付けるデータを科学者たちが持っていることが判明。マリフアナが普及することの危険性について新著『子供たちに伝えて――マリフアナと精神疾患と暴力の真実』にまとめたベレンソンに、本誌ニーナ・ゴドルスキーが話を聞いた。

◇ ◇ ◇


――統合失調症とマリフアナ使用を関連付けた研究があると分かって、どう思った?

どうして誰も知らないんだと思っていたが、科学者たちは知っていたんだ! 17年に全米医学アカデミーが報告書で指摘したが、誰も注目しなかった。

――17年? なぜもっと早く報告が出なかったのか。

1970年頃まで、マリフアナはそれほど広く使用されていなかった。ここ20年ほどで、より効き目の強い製品が登場してきた。証拠は増えているが、(マリフアナ)擁護派がうまくごまかしてきた。

たばこと肺癌に関係があることに合理的な疑いの余地はない、と科学者が証明するのにも約40年かかった。たばこ業界がそれに異議を唱えるのをやめるまで、さらに5~10年かかった。

――マリフアナの心身への影響について、17年の研究で分かったことは?

「喫煙の結果、生物学的変化が起きて、自分では制御できない考えを持つようになる」とは言えない。だが(関連研究によって)疫学的に証明はできる。統合失調症の人がマリフアナを使えばどうなるのか? 科学的に理解する方法はあるわけだ。



――合法化する州が増えている。

アメリカはおそらく国として合法化するだろう。20年の大統領選で民主党が勝てば、合法化へ強力な後押しとなる。そうなれば価格が下がり、使用に拍車が掛かり、マリフアナは安全だという認識が広がる。私は賛成できない。

だが何より重要なのは合法かどうかではなく、人々が使用の危険性を知っているかどうかだ。たばこは合法でマリフアナは非合法だが、10代ではマリフアナを吸う人よりもたばこを吸う人のほうが少ない。

――どんな規制が必要か。

21歳未満は買えないようにすること。マリフアナの危険性を周知させる活動をすること。有害性について信頼できるデータを集めること。マリフアナに関連する暴力や精神疾患、自殺についての研究もすべきだ。

――合法化した州で犯罪は増えている?

店でマリフアナを販売している全ての州で、暴力的犯罪は増加している。ただし、合法化がその理由だとは証明されていない。合法化前は「暴力犯罪が減るだろう」と人々は言っていたが、それは真実でなかった。

因果関係が明白な事例は多い。(14年にオーストラリアで)マリフアナで被害妄想を起こしたと思われる人物が、8人の子供を殺害する事件も起きている。

まだまだ研究が足りないし、今後の成り行きについて私は楽観できない。合法化が進めば、大量に使用する人が増えるだろう。マリフアナ絡みの暴力犯罪は増え続けると予測できる。

<本誌2019年02月12日号掲載>



※2019年2月12日号(2月5日発売)は「袋小路の英国:EU離脱3つのシナリオ」特集。なぜもめている? 結局どうなる? 分かりにくさばかりが増すブレグジットを超解説。暗雲漂うブレグジットの3つのシナリオとは? 焦点となっている「バックストップ」とは何か。交渉の行く末はどうなるのか。


ニーナ・ゴドルスキー

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