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飢えた自国民を経済封鎖し、支援物資を求める人々に発砲するマドゥロの狂気

ニューズウィーク日本版 2019年2月25日 15時30分

<経済破綻し市民が極度の貧困に苦しむベネズエラで、野党指導者が呼びかけた支援物資の搬入が、軍によって力づくで阻止された>

南米ベネズエラのマドゥロ大統領に忠誠を誓うベネズエラ軍は2月23日、コロンビアやブラジルとの国境経由でアメリカからの人道支援物資の搬入を試みた反マドゥロ派の市民に対して催涙ガスやゴム弾を発射した。

AFP通信はコロンビアの民間防衛当局の話として、ベネズエラ軍とデモ隊の衝突で300人超が負傷したと報じた。

複数の人道団体によれば、ベネズエラとブラジルとの国境地点で、支援物資を受け取ろうと集まってきた市民に向けて軍が発砲。地元の病院の医師がロイター通信に対し、14歳の少年を含む2人が死亡したと明らかにした。

人権団体フォロ・ペナルは、2月23日の衝突によってベネズエラ全土で2人が死亡、29人が負傷したとロイター通信に語った。

アメリカが仕組んだショー?

今回の衝突は、ベネズエラの経済が破綻し、数百万人が貧困に苦しむ最中に発生した。

ベネズエラの野党指導者フアン・グアイドは、国境を接するコロンビア北部に大量に集まったアメリカからの支援物資を2月23日にベネズエラ国内に搬入する、と予告していた。だがマドゥロは人道危機など存在せず、食料も水も足りているとして受け入れを拒否。逆にそうした支援はアメリカが政権転覆のために仕組んだショーだと非難した。

グアイドは今年1月11日、マドゥロの正当性を認めないとして自ら「暫定大統領」就任を宣言。アメリカをはじめとする諸外国は、彼を承認した。

グアイドはマドゥロ政権に対して2月23日まで猶予を与え、支援物資の国内搬入を認めるよう要求。市民に対しては支援物資の受け入れを求めて大規模な反政府デモを行うよう呼びかけていた。



衝突で大混乱となり支援物資搬入が失敗に終わったことを受けて、グアイドはマドゥロ政権打倒を目指して国際社会が「あらゆる選択肢」を検討するよう提案。同日の夜にこうツイートした。

「今日の出来事を受けて決心した。われわれは国際社会に対し、ベネズエラの自由を守るため、いかなる選択肢も排除してはならないと正式に提起する」

マイク・ポンペオ米国務長官も同日、ベネズエラ軍による市民への暴力を批判し、こうツイートした。

「アメリカはマドゥロ率いる悪党どもによるベネズエラ市民への攻撃を非難する。それらの攻撃で死傷者が出た。犯罪行為の犠牲者やその家族に心からお悔やみ申し上げる。われわれは正義を求める市民の要求を支持する。#EstamosUnidosVE(ベネズエラと連帯する)」

マイク・ペンス米副大統領は2月25日、コロンビアの首都ボゴタで開かれる、米州諸国でつくる「リマ・グループ」の緊急首脳会合に出席し、グアイドと会談する予定。今回の衝突を受けて、アメリカはマドゥロ政権に対する制裁を強化する見通しだ。

「いかなる形であれ、もしベネズエラ軍が市民を攻撃するかネガティブな反応を示せば、ペンス副大統領や諸外国はマドゥロ政権を国際的な金融取引からもっと締め出すために、新たな対抗措置を打ち出す可能性がある」と、米国務省の関係者が匿名を条件にロイター通信に語った。

人権団体にも危機感

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、マドゥロ政権がデモ隊に対する武器の使用をやめるよう訴えた。

「われわれはニコラス・マドゥロに武器の使用をやめるよう要求する。治安部隊は市民に対する銃器などの武器の使用をやめなければならない。ニコラス・マドゥロを支持する武装組織を解体させなければならない」と、アムネスティ・インターナショナルの南北アメリカ担当ディレクターを務めるエリカ・ゲバラ・ロサスは言った。

「市民に対する武器使用は重大な人権侵害であり、国際法違反の犯罪だ」

(翻訳:河原里香)


トム・ポーター

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