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インド発の健康スーパースナック「オニバスの種」登場

ニューズウィーク日本版 2019年2月26日 18時45分

<低カロリーで食物繊維も栄養価もたっぷり、環境にも優しいオニバスの種がアメリカでブレイク中>

見た目は妙に丸っこいポップコーンだが、素材はアメリカの大型農場で大量の農薬を浴びて育ったトウモロコシではない。インドの沼地でのんびり育ったオニバス(鬼蓮)の種子だ。オニバスはモネの絵で有名なスイレンの仲間で、お釈迦様が乗る蓮の遠縁に当たる。しかも、現代人の食生活で不足しがちな栄養素を豊富に含んでいる。

そう、今年のアメリカではオニバスの種が私たちの「体に優しい」スナックとして大ヒットの予感。もともと原産地のインドでは、伝統的なおやつとして人気の食材だ。

「ふわっとしているのに、一口目はカリッとしている」と言うのは、「ボハナ」というブランド名でオニバスの種を売り出したプリヤル・バーティア。「そのままだと少し土臭いけど、いろんなスパイスで風味を加えるとおいしくなる」

オニバスをアメリカ市場にもたらしたのはインド系の人たちだ。例えばアシャとジャイのファルスワニ親子は17年にロサンゼルスの青空市場でオニバスの種を売り始めたが、今ではニューヨークなどに100以上の店を出している。

オニバスは、アジア各地の湖沼に自生するスイレン科の一年草だ。春に紫色の花が開き、8月頃に実ができる。実に含まれるたくさんの種を取って天日で乾燥させ、鍋で煎ると、黒い外皮がはじけて白いポップコーンみたいになる。これがインドで「マハナ」と呼ばれる伝統的な菓子だ。地産の多彩な香辛料で味付けして食べるが、カレーに加えてもいい。

「ボハナ」の創設者バーティアもインドのニューデリー育ち。「学校から帰ると、いつもおやつに食べていた。クミンやウコン、カレーリーフみたいな伝統の香辛料を加えて、母が作ってくれた」と言う。

その味が恋しくて、彼女は友人を口説き落として「ボハナ」を創業した。「私たちはアメリカの市場に、塩だらけのスナックに代わる健康的なお菓子を紹介したかった」と、バーティアは言う。

ただしオニバスには英語名がないので、ウオーターリリー(スイレン)の名で売り出すことにした。「アメリカの消費者は、今までとは違う食材を求め始めていた。だから、絶好のタイミングだと思った」



実際、オニバスの種は栄養が豊富なわりにカロリーが低い。「ボハナ」のヒマラヤン・ピンクソルト味の場合、1袋でたった110カロリーだからダイエットにはうってつけ。しかも種には多くの食物繊維が含まれるため、腸の動きを活発にし、コレステロール値を下げるのにも役立つ。

カリウムも血圧を下げ、心臓のリズムを調整する効果がある。含まれる必須アミノ酸の量も米や小麦、魚よりも多いとされる。

伝統医療では薬用にも

またアーモンドやクルミなどの一般的なナッツ類やドライフルーツと比べても、タンパク質やアスコルビン酸、ポリフェノールの含有量で優れている。

インドの伝統医療アーユルベーダでは、オニバスの種を薬として使う。バーティアによれば、「オニバスの種はアルカリ性で、炎症を抑える作用がある。だからよく処方されていて、妊娠中や授乳中の女性でも心配ない」という。

おまけに環境にも優しい。主産地のインド東部ビハール州でも、最近は開発により湿地帯が減っている。だがオニバスの需要が増え、栽培が盛んになれば沼を守れるかもしれない。

ただし天日干しなどの伝統的製法を守っているから、値段は高くなる。小売価格は1袋4~5ほど。ポップコーンほど気楽には食べられない。

<本誌2019年02月26日号掲載>



※2019年2月26日号(2月19日発売)は「沖縄ラプソディ/Okinawan Rhapsody」特集。基地をめぐる県民投票を前に、この島に生きる人たちの息遣いとささやきに耳をすませる――。ノンフィクションライターの石戸諭氏が15ページの長編ルポを寄稿。沖縄で聴こえてきたのは、自由で多層な狂詩曲だった。


イブ・ワトリング

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