<インドはパキスタンよりずっと大国だが、パキスタン軍の戦闘機とのドッグファイトでは旧ソ連時代のミグ戦闘機で撃墜される旧時代の軍隊だ>
インドでは、軍の装備品が時代遅れであることや軍事費が乏しいことがにわかに危機感をもって語られはじめた。万が一戦争が起きたときに国が無防備な状態になりかねない。
インド政府の概算によると、軍事用に備蓄している弾薬はわずか10日分しかもたないと、ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。さらに装備の3分の2以上は旧式で、軍も年代物と認めている。
同紙は、インドのエコノミック・タイムズ紙が2018年7月に報じた内容を引用しながら、インド会計監査局(CAG)が自国の軍装備について厳しい調査結果を出したと伝えた。CAGは、「激戦」を40日間継続できる程度の弾薬備蓄を目指す政府の方針を、インド防衛機関が完全に「無視」していると強く批判している。
CAGの報告書には、「2013年3月時点で、各種弾薬のうち半分は、備蓄が危機的状態にあるか、10日分にも満たない」と書かれている。
2月27日、インド空軍機はカシミール地方上空でパキスタン軍機と空中戦を演じた挙句、撃墜された。操縦士は助かったが、旧ソ連時代の老朽化したミグ21戦闘機は失われた。規模はインド軍の半分で、軍事費も4分の1のパキスタン軍が、装備の質では上回っていることからもこの一件からよくわかる。
いずれも保有国である両国は互いに報復し合って緊張を高めており、軍事衝突する可能性も出てきている。
戦争は待ってくれない
報復合戦の発端は2月中旬、両国が領有権を争うカシミール地方のインド支配地域で自爆テロが発生し、インド治安部隊の40人以上が死亡したこと。パキスタンを拠点とするイスラム過激派ジェイシモハメドが犯行声明を出した。インド空軍は2月26日、テロリストの拠点を叩くとしてパキスタン領内を空爆。それに対する報復がインド軍機撃墜だった。
ちなみに、インド軍機を撃墜したパキスタン軍機はアメリカ製の戦闘機F16ではないか、という疑惑が持ち上がっている。アメリカはF16売却時に使用目的を対テロに限定しており、もし使われたとすれば、合意違反になる。パキスタン政府は否定しているが、米政府は調査を開始する。
インド議会常任防衛委員会の委員を務めるガウラフ・ゴゴイはニューヨーク・タイムズ紙に対し、「インド軍は先進の装備を持たないが、21世紀の軍事作戦を遂行しなくてはならない」と述べた。
アメリカは、アジア地域における中国の影響力拡大に対抗するため、インドを潜在的な同盟国とみなしており、ここ10年間でインドに対して150億ドル相当の武器を供与した。2018年5月には、当時の国防長官ジェームズ・マティスはアメリカ統合軍のひとつ「アメリカ太平洋軍」を「アメリカインド太平洋軍」に改名すると発表した。
英シンクタンク国際戦略研究所がまとめたデータによると、インド軍は、戦車3565台、歩兵戦闘車(IFV)3100台、装甲兵員輸送車(APC)336台、装甲兵員輸送車336台、火砲9719門を保有する。
豪シンクタンクのローウィー研究所が発表した2018年版アジア国力指数によると、インドの2018年の軍事費は450億ドルで、対立するパキスタンの97億ドルよりはるかに多い。この指数の軍事力部門では、インドは世界で4位にランクしている。
しかし、軍事費の大半は現役兵士120万人の給与として使い果たされ、新たな軍備に投じられるのは140億ドルにすぎない。
ゴゴイは、「現代的な軍隊は諜報力と技術力の向上に多大な資金を投じている。インドも同取り組む必要がある」と述べた。
(翻訳:ガリレオ)
※3月12日号(3月5日発売)は「韓国ファクトチェック」特集。文政権は反日で支持率を上げている/韓国は日本経済に依存している/韓国軍は弱い/リベラル政権が終われば反日も終わる/韓国人は日本が嫌い......。日韓関係悪化に伴い議論が噴出しているが、日本人の韓国認識は実は間違いだらけ。事態の打開には、データに基づいた「ファクトチェック」がまずは必要だ――。木村 幹・神戸大学大学院国際協力研究科教授が寄稿。
ブレンダン・コール
インドでは、軍の装備品が時代遅れであることや軍事費が乏しいことがにわかに危機感をもって語られはじめた。万が一戦争が起きたときに国が無防備な状態になりかねない。
インド政府の概算によると、軍事用に備蓄している弾薬はわずか10日分しかもたないと、ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。さらに装備の3分の2以上は旧式で、軍も年代物と認めている。
同紙は、インドのエコノミック・タイムズ紙が2018年7月に報じた内容を引用しながら、インド会計監査局(CAG)が自国の軍装備について厳しい調査結果を出したと伝えた。CAGは、「激戦」を40日間継続できる程度の弾薬備蓄を目指す政府の方針を、インド防衛機関が完全に「無視」していると強く批判している。
CAGの報告書には、「2013年3月時点で、各種弾薬のうち半分は、備蓄が危機的状態にあるか、10日分にも満たない」と書かれている。
2月27日、インド空軍機はカシミール地方上空でパキスタン軍機と空中戦を演じた挙句、撃墜された。操縦士は助かったが、旧ソ連時代の老朽化したミグ21戦闘機は失われた。規模はインド軍の半分で、軍事費も4分の1のパキスタン軍が、装備の質では上回っていることからもこの一件からよくわかる。
いずれも保有国である両国は互いに報復し合って緊張を高めており、軍事衝突する可能性も出てきている。
戦争は待ってくれない
報復合戦の発端は2月中旬、両国が領有権を争うカシミール地方のインド支配地域で自爆テロが発生し、インド治安部隊の40人以上が死亡したこと。パキスタンを拠点とするイスラム過激派ジェイシモハメドが犯行声明を出した。インド空軍は2月26日、テロリストの拠点を叩くとしてパキスタン領内を空爆。それに対する報復がインド軍機撃墜だった。
ちなみに、インド軍機を撃墜したパキスタン軍機はアメリカ製の戦闘機F16ではないか、という疑惑が持ち上がっている。アメリカはF16売却時に使用目的を対テロに限定しており、もし使われたとすれば、合意違反になる。パキスタン政府は否定しているが、米政府は調査を開始する。
インド議会常任防衛委員会の委員を務めるガウラフ・ゴゴイはニューヨーク・タイムズ紙に対し、「インド軍は先進の装備を持たないが、21世紀の軍事作戦を遂行しなくてはならない」と述べた。
アメリカは、アジア地域における中国の影響力拡大に対抗するため、インドを潜在的な同盟国とみなしており、ここ10年間でインドに対して150億ドル相当の武器を供与した。2018年5月には、当時の国防長官ジェームズ・マティスはアメリカ統合軍のひとつ「アメリカ太平洋軍」を「アメリカインド太平洋軍」に改名すると発表した。
英シンクタンク国際戦略研究所がまとめたデータによると、インド軍は、戦車3565台、歩兵戦闘車(IFV)3100台、装甲兵員輸送車(APC)336台、装甲兵員輸送車336台、火砲9719門を保有する。
豪シンクタンクのローウィー研究所が発表した2018年版アジア国力指数によると、インドの2018年の軍事費は450億ドルで、対立するパキスタンの97億ドルよりはるかに多い。この指数の軍事力部門では、インドは世界で4位にランクしている。
しかし、軍事費の大半は現役兵士120万人の給与として使い果たされ、新たな軍備に投じられるのは140億ドルにすぎない。
ゴゴイは、「現代的な軍隊は諜報力と技術力の向上に多大な資金を投じている。インドも同取り組む必要がある」と述べた。
(翻訳:ガリレオ)
※3月12日号(3月5日発売)は「韓国ファクトチェック」特集。文政権は反日で支持率を上げている/韓国は日本経済に依存している/韓国軍は弱い/リベラル政権が終われば反日も終わる/韓国人は日本が嫌い......。日韓関係悪化に伴い議論が噴出しているが、日本人の韓国認識は実は間違いだらけ。事態の打開には、データに基づいた「ファクトチェック」がまずは必要だ――。木村 幹・神戸大学大学院国際協力研究科教授が寄稿。
ブレンダン・コール