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韓国と日本、政治と観光は別──両国を行き来する人々は増加中

ニューズウィーク日本版 2019年3月19日 18時30分

<日韓関係は悪化しているが、2018年11月から19年1月までの3か月間に、両国を行き来している人々の数は増えていることがわかった>

日韓関係が悪化している一方、観光客が活発に両国を行き来している実態が明らかになった。2018年11月から19年1月までの3か月間に韓国に入国した日本人は前年より32.9%多い77万9000人で、訪韓外国人全体の増加率は21.9%で日本人観光客が全体を押し上げている。また、日本政府観光局(JNTO)の推計データによる3か月間の訪日韓国人も204万9000人と外国人全体の26.4%を占めており、高い水準が続いている。

日本と韓国の観光交流は衰える気配がなく、政治と観光は別と考える風潮が広がっていると韓国のマスコミは伝えている(聯合ニュース)。

日本と韓国は良好な関係にある?

東京とソウルを結ぶ航空路線は週222便。日本全国の空港を発着する国際線5174便のうち、4分の1近い1224便が日韓線だ。国際線の過半が韓国便という地方空港やなかには国際線は日韓路線のみという空港もある。羽田空港と成田空港の発着数が週200便を超える路線はソウルしかなく、こうした状況は第三国の人からすると、日本と韓国は良好な関係にあると映るという。

そもそも韓国人の訪日旅行ブームは日本食や日本酒の認知が広がった2010年にはじまっている。東日本大震災の影響で落ち込んだが、ふたたび増加に転じた。そして、2012年には対馬旅行がブームに。釜山から対馬への日帰り旅行費が10万ウォン以下まで下がり、前年の5倍近い29万人の韓国人が対馬を訪れた。

韓国人が対馬に殺到した要因に免税がある。韓国の消費税に相当する付加価値税は10%で、出国予定者が免税店で手続きをすると税金免除が受けられる。300万ウォンのブランド品を購入する際に負担する付加税は30万ウォンだが、20万ウォンの日本ツアーを利用すると免除を受けられ、税金を払うより安くなる。そのため旅行費が安い対馬や九州北部に免税旅行が殺到した。

免税旅行はなくなったが、格安航空会社が急増

その後、韓国税関が短期間で帰国する人から税金を徴収するようになり、免税旅行はなくなったが、代わって格安航空会社(LCC)が急増し、訪日韓国人は右肩上がりで増えていった。

LCCは機内食やドリンクは有料で、座席間隔が狭い。長時間のフライトではエコノミー症候群等の懸念もあるが、日韓路線は最も長時間の札幌でも3時間以下で、大半のエリアが2時間以内だ。

また、日本人乗客はマナーがよく、折り返しの清掃時間が短時間で済むなど航空会社にとって効率が良い。そうしたこともあって国内競争が激しくなった韓国のLCC各社が日本路線の拡充に乗り出している。

金浦空港にて

また、韓国の国内観光地のコンテンツ不足も訪日観光客の増加に拍車をかけている。郷土食など韓国の地方都市で注目を浴びたコンテンツはソウルに集まる。ソウルで磨きをかけられ、市民権を得たメニューやコンテンツは全国に広がっていく。たとえば韓流ドラマや映画がブームになると、観光地は右へ倣えと模倣する。

国内どこに行っても同じようなコンテンツで溢れかえり、国内観光の魅力は失われていく。済州島は独自のコンテンツが多いが、中国人旅行者が増加するとホテルの予約が困難になるなど価格が高額化した。いっぽう日本は韓国にはないコンテンツで溢れている。地方特有の文化もある。さらに訪日旅行は国内旅行より安くなった。

一方、日本でも首都圏から九州に旅行するより、時期によってはソウルに行くほうが安い。LCCの直行便が就航している地方都市など、国内旅行より韓国旅行が安いところが少なくない。



韓国の航空会社は過当競争と専門人材不足

しかし、LCC特有の問題も起きている。フルサービス航空会社(FSC)は利用する座席クラスや会員ランクに応じて荷物を預け入れることができるが、LCCは預入れが制限され、受託手荷は別料金というクラスもある。

訪日観光客に人気の香水や訪韓観光客に人気の化粧品など、機内への持ち込みが制限されている上、ショッピング旅行は帰りの荷物が多くなる。仁川と関西空港を往復10万ウォンで利用できる割引航空券は、荷物は有料で、20キロ以下の受託手荷物は往復7万ウォン前後となっている。

そんななか韓国国土交通部は、エアプレミア、エアロケイ、フライ江原の3社に国際航空運送事業免許を発行すると発表した。エアプレミアは中長距離路線に就航する計画だが、清州空港を拠点とするエアロケイと襄陽空港を拠点とするフライ江原は日本路線を視野に入れ、年内の就航を目指している。

韓国の航空会社はFSCとLCC合わせて11社になる。サービス競争は消費者には望ましいが、韓国の航空各社は熟練した操縦士と整備士の人材不足に苦しんでおり、業界関係者は過当競争と専門人材不足、インフラ不足にともなう安全面の懸念を指摘している。


佐々木和義

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