Infoseek 楽天

地球のCO2貯蔵庫は温暖化で崩壊寸前

ニューズウィーク日本版 2019年3月27日 19時30分

<温室効果ガスを吸収して保持する、植物と土壌の「貯蔵機能」がもうすぐ限界に>

気候変動に起因する潜在的脅威は山ほどあるが、今回さらに新しい問題が見つかった。気候変動が気温上昇に対する自然の抵抗力を低下させる可能性だ。

植物や土壌には二酸化炭素(CO2)を吸収・保持することで、温室効果ガスによる気温上昇を防ぐ「炭素貯蔵庫(カーボンシンク)」の機能がある。

メカニズムは単純明快だ。植物はCO2を吸収し、光合成によって炭素を成長と回復のためのエネルギーに変換する。土壌も腐食した植物、動物の死骸や老廃物などの有機物からCO2を取り込み、大気中の2~3倍の炭素を保持する。両者が吸収するCO2は、人類が排出する量の25%に達すると推定される。

18年、人類は過去最大のCO2を大気中に排出したが、植物と土壌の炭素吸収能力は限界に近づいた可能性がある。気候変動が引き起こす干ばつや洪水などの異常気象が土壌の水分量を変動させたり、植生を壊す原因になるからだ。

今年1月に英科学誌ネイチャーに掲載された論文で、研究チームは土壌の変化が炭素吸収に及ぼす影響を調べた。その結果、土壌は当面はより多くの炭素を何とか吸収しようとするが、2060年までに吸収量はピークに達し、その後は大幅に低下することが分かった。このため大気中により多くのCO2が残り、地球温暖化を加速させるという。

「これは大変なことだ」と、コロンビア大学工学・応用科学大学院博士課程のジュリア・グリーンは論文で述べている。温暖化に対する土壌水分の影響の大きさに衝撃を受けたと、グリーンは言う。

この研究は今世紀末までの影響を定量化した最初の例だ。干ばつや熱波は土壌を干上がらせ、植生を破壊して炭素吸収を不可能にする。この研究によれば、通常より降水量の多い年があっても、乾燥した年の損失分を補填できないという。



「干ばつによって森林が乾燥したサバンナや泥炭地に変われば、土壌が保持する炭素が減る。それによって大気中に残るCO2が増え、温暖化を加速させる」と、英エディンバラ大学のデーブ・レイ教授(この研究には参加していない)は解説する。

今回の研究で使われたモデルはまだ、地域ごとの気候変動に対する多様な反応をうまく説明できていないと、レイは言う。だが同時に、こう強調するのも忘れなかった。

「世界中の森林と土壌という巨大な炭素貯蔵庫は、過去1世紀の急激なCO2排出量増大の影響を緩和する『地球サイズの圧力弁』の役割を果たしてきた。もし排出量を早急かつ大幅に削減できなければ、この巨大な貯蔵庫の機能が損なわれ、CO2を吸収する『人類の友人』がCO2を大量排出する敵へと徐々に変化しかねない」

<本誌2019年03月26日号掲載>


カシュミラ・ガンダー

この記事の関連ニュース