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韓国コンビニも営業時間短縮、しかし日本とはかなり事情が異なる

ニューズウィーク日本版 2019年3月29日 18時20分

<韓国のコンビニにも営業時間の見直しが進んでいる。しかし、その要因は、日本とはかなり違うようだ>

日本ではコンビニエンスストアの24時間営業の見直しが問題になっているが、韓国でも営業時間を短縮して24時間営業の看板を下ろすコンビニが増えている。韓国コンビニエンスストア最大手のCUは深夜営業を行わない店舗が2割近くになり、GS25とセブンイレブンも6.5店に1店が深夜営業を行っていない。営業時間を短縮する要因としては、日本ではアルバイトの確保など人材不足が大きいが、韓国では最低賃金の上昇と売上不振による影響が大きい。

過当競争の中、最低賃金の上昇と労働時時間52時間制が追い打ち

文在寅政権は2020年までに労働者の最低賃金を1時間1万ウォンに引き上げるという公約を掲げてきた。韓国の最低賃金は2014年以降、年7%から8%ずつ引き上げられてきたが、2018年に前年の6430ウォンから16.4%高い7530ウォンとなり、さらに2019年には8350ウォンまで引き上げられた。2年で3割近く上昇した最低賃金は小規模事業者の経営を圧迫し、なかでも飲食店とコンビニエンスストアを直撃することになった。

最低賃金委員会に提出された2019年度の給与所得者の標準月収は329万ウォンだが、小規模自営業者の月収は勤労者を下回る209万ウォンで、自身の収入を削って高騰する従業員の賃金を支払う状況が加速する。従業員を雇用しない自営業者が387万1000人から403万9000人に増え、無給の家族従事者も118万人となった。自営業者と家族労働者は就業者全体の25%を占めている。

そして、人件費の高騰に夜間売上の不振が追い討ちをかけている。2018年7月から労働時時間52時間制が導入され、会社員が夜遅くまで残業をすることがなくなった。退勤後の会食も減り、帰宅時間が早まった会社員が深夜に買い物をしなくなったが、夜10時から朝6時までの深夜時間、コンビニ店主は従業員に最低賃金の1.5倍の時給を支払わなければならない。全国コンビニ加盟店協会によるコンビニ店主の平均月収は2017年の195万5000ウォンから2018年は130万2000ウォンまで落ち込んだ(韓国経済新聞)。

また政府がカード会社に強要した手数料の引き下げといった対策も焼け石に水で、公正取引委員会は直近3か月間の午前0時から午前6時の収支が赤字になったコンビニは、契約に関わらず深夜営業を中断できる規定を設けた。

しかし、コンビニの経営が苦しい最大の要因は出店競争による過密化だ。韓国のコンビニは約4万軒、1250人に1軒の割合である。そこで、過密を是正するため、韓国コンビニ産業協会と公正取引委員会はコンビニの出店を規制する規約を制定した。



株式の売却を発表したミニストップだったが......

韓国のコンビニ業界は、店舗数約1万3100軒のCUと1万店強のGS25を9500店余のセブンイレブンが追いかける構図となっている。4位のイーマート24は3500店余で、大きく水をあけられている。出店規制で店舗網の拡大が厳しくなったセブンイレブンを運営するロッテとイーマート24を運営する新世界は、株式の売却を発表したミニストップの買収に名乗りを挙げた。

韓国ミニストップは、食品メーカーの大象(デサン)が設立した大象流通が母体で、2006年6月にイオンが買収した。イオンが株式の76.06%を保有し、大象が20%、残りを三菱が保有する。2014年にファミリーマートが撤退し、韓国コンビニ業界唯一の外資系コンビニチェーン店となった。

イオンは単身世帯の増加と消費パターンの変化で、韓国のコンビニ市場が成長すると予想したが、過当競争に突入すると営業利益が激減する。そこで流通業のノウハウがあるパートナーと組む必要があると判断し、株式を売却することにしたのである。

株式売却で、最も高い入札価格を提示したロッテと交渉を進めたが、ロッテはミニストップの看板を下ろしてセブンイレブンに転換することを求め、新世界もイーマート24に転換する条件を提示した。2550店のミニストップを加えるとロッテはGS25を抜いて2位となり、新世界も一気に店舗網が拡大するからだ。

しかし、韓国ミニストップの株式を売却する目的は縮小や撤退ではなく、また、ミニストップの看板を下ろすことに抵抗があるため、結局、2社との交渉が決裂したイオンは株式の売却を中断した。

いっぽう、政界ではコンビニ店主等の最低収入保障を含む加盟事業法改正案が発議されている。韓国ミニストップは他のチェーンと異なり、店主の最低収入を保障しているが、実際に最低収入保障を適用している店は多くはない。韓国ミニストップのシム・グァンソプ代表は、出店競争には参入せず、加盟事業の本質である店主の収益最大化に全力を注ぐと話している。

過当競争の果ての出店規制、人件費の高騰と夜間売上の不振、韓国のコンビニ業界にとっては、まだはっきりした対策の打ち出しようのない厳しい時期が続きそうだ。


佐々木和義

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