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トランプにも負けない民主党の新人オカシオコルテスが世界を救う?

ニューズウィーク日本版 2019年4月4日 16時28分

<民主党の左派グループと「グリーン・ニューディール」決議案をまとめたオカシオコルテスは温暖化対策と貧困対策を一度に解決すると政界を揺るがしている>

「この前私をばかにした男は選挙で負けた......それだけは覚えておいて」

ドナルド・トランプ米大統領に「若いバーテンダー」と呼ばれて、そう切り返したのは民主党のアレクサンドラ・オカシオコルテス下院議員(29)。

ヒスパニック系の元バーテンダー、オカシオコルテスは昨秋行われた米中間選挙のニューヨーク州連邦下院選で共和党の大物ジョセフ・クラウリーを敗って史上最年少で当選。全米を驚かせた。

その新人議員を中心に民主党の議員グループがまとめたのが、気候変動対策で雇用を創出する「グリーン・ニューディール」だ。議会に決議案が提出されたこのプランについて、トランプはたかが「若いバーテンダー」の思い付きだと一笑に付した。


2月7日、グリーン・ニューディール決議案を発表したオカシオコルテスとその他の民主党議員


グリーン・ニューディールは、2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを達成し、10年以内にアメリカの電力需要を100%再生可能エネルギーで賄うという野心的なもの。オカシオコルテスもこの決議案も、トランプと共和党に袋叩きにされている。当初案では2030年までに排出ゼロを目指すことになっていたため、コストが膨大で目標設定が非現実的すぎるとして、民主党内でも懐疑的な声が多い。

トランプが食いついた訳

「若いバーテンダー、素晴らしい若い女性がグリーン・ニューディールを掲げている。最初に聞いたときは『とんでもなくクレージーだ』と思った」と、トランプは4月2日、共和党全国下院委員会の資金集めの夕食会で演説した。

ただし、この案をすぐにつぶさないように共和党議員に釘を刺すことも忘れなかった。

「まだ生かしておくことだ。(2020年の大統領選では)これを争点にしたい。もしもグリーン・ニューディールで民主党が勝ったら、潔く敗北を認めようじゃないか」

米上院は3月26日、この決議案を採決にかけた。ミッチ・マコネル上院院内総務率いる上院共和党は採決を急いだが、公聴会も開かず、議論もせず、いきなり採決に踏み切ることに民主党が猛反発。賛成でも反対でもない「出席」の票を投じた結果、決議案は0対57で否決された。

下院民主党の指導部は、この決議案を審議にかけることにあまり乗り気ではなさそうだが、それでも提出したことに意義があると、オカシオコルテスは本誌に語った。

「もちろん下院で採択されれば大きな前進だが、決議案を提出した時点で、目標の9割は達成できている。今後は導入すべき技術や具体的な政策について議論を進める必要があるが、この決議案がたたき台になる」



指導部にとっては頭痛のタネ?

下院民主党は3月27日、2017年にトランプが離脱を表明した「パリ協定」への残留を義務付ける法案を提出したが、そこではグリーン・ニューディール決議案には一切触れられなかった。そのため、どうやら指導部はこの決議案をまともに検討する気がないようだ、との見方が強まっている。

下院気候危機対策特別委員会のキャシー・キャストー委員長は、本誌の取材に対しグリーン・ニューディールという言葉を意図的に避けてか、「ニュー・グリーンディール」という名称を持ち出して、以下のように述べた

「特別委員会では、概ねニュー・グリーンディールの精神に基づいた包括的な政策提案をまとめるつもりだ。特にクリーンエネルギーへの転換、気候変動への適応、影響を軽減する措置など、すぐに行動を起こすべき問題を取り上げる。これが最初のステップとなる」

オカシオコルテスは指導部が自分たちのまとめたプランを推進すると確信している。ただし、仮に下院で採択されても、決議案が法的拘束力を持たないことも認めた。

ちなみに4月3日には、大きなハリケーン被害を受けてきた地元フロリダの代表として、共和党のマシュー・ゲイツ下院議員が気候変動と戦う「グリーン・リアル・ディール」を発表。グリーン・ニューディールに対する対抗案だ。トランプ政権下の共和党から提案が出てくるのはいい傾向だ。


4月3日、グリーン・ニューディールへの対抗案「グリーン・リアル・ディール」を発表した共和党のマシュー・ゲイツ下院議員




※4月9日号(4月2日発売)は「日本人が知らない 品格の英語」特集。グロービッシュも「3語で伝わる」も現場では役に立たない。言語学研究に基づいた本当に通じる英語の学習法とは? ロッシェル・カップ(経営コンサルタント)「日本人がよく使うお粗末な表現」、マーク・ピーターセン(ロングセラー『日本人の英語』著者、明治大学名誉教授)「日本人の英語が上手くならない理由」も収録。



2月7日、グリーン・ニューディール下院決議案を発表したオカシオコルテスとその他の民主党議員


4月3日、グリーン・ニューディールへの対抗案「グリーン・リアル・ディール」を発表する共和党のマシュー・ゲイツ下院議員(フロリダ州選出)


ラムジー・タッチベリー

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