Infoseek 楽天

ロシア軍は超能力を使っている?

ニューズウィーク日本版 2019年4月5日 16時0分

<政府公認の出版物が超能力の使用を肯定する記事を掲載して、国内でも驚きの声があがっている>

ロシア国防省の公式機関誌に掲載されたある記事が話題になっている。ロシア軍が超能力者と手を組み、超常現象を利用した戦術で兵士を支援したり、イルカを使ってテレパシー実験を行っている、という内容だ。

この記事は陸軍ダイジェスト誌に掲載されたもので、「未来の戦争に対応するスーパー兵士」というタイトルがつけられている。記事では、鍵のかかった金庫に保管している書類の内容を、鍵を開けずに超能力者に読み取らせることに成功したといった、ロシア軍が行った奇妙な実験の数々が紹介されている。

この記事が最初に公開されたのは2月だったが、4月に入り、ロシアのRBC誌や、政府に批判的なノーヴァヤ・ガゼータ紙、ニュース系ウェブメディアのメデューサなどが相次いで取り上げたことで、にわかに注目を集めている。超能力を肯定する内容の記事が、政府公認の出版物に掲載されたことに、識者からは驚きの声があがっている。

この記事を書いたニコライ・ポロスコフは、チェチェンやシエラレオネでの軍事作戦に参加した経験を持つ人物だ。そのポロスコフによると、1980年当時のソ連軍で、科学者たちが超常的な能力を使う方法を開発したという。「いわゆる変性意識状態にある人間から情報を引き出す」ことが目的だった。

ポロスコフはさらに、この手法がチェチェンでの軍事作戦で実際に用いられたと記している。その目的は、「敵対勢力の計画や、部隊の編成、武器を暴く」ことだったという。

遠隔地からの尋問も

さらにポロスコフは、ロシアには、テレパシーを使って囚人を尋問する専門家が存在すると述べている。この能力は、イルカを使った実験で磨かれたものだという。

「彼らはイルカに芸をするようテレパシーを送った。それが、人間にも使えることが判明した」とポロスコフは書いている。

2月の記事では、超常的な能力を活用した戦術が、外国語の習得や負傷した兵士の治療、待ち伏せの察知といった任務で、兵士の支援に用いられていると主張している。超能力でコンピューターをクラッシュさせることも可能だという。

記事によると、テレパシーを使った「言葉を使わない尋問」は、敵軍の兵士が寝返りの誘いを受け入れる余地があるかどうかを判断するのに役立つという。また「超能力的な対抗手段」は、特殊部隊の兵士が敵の尋問に耐え、秘密を守るのにも役立っている。

雑誌「ロシアの兵士」の分析部門でトップを務めるアナトリー・マトビチュクは、RBC誌の取材に対し、旧ソ連の科学者が超能力に関わる分野の研究を行っていたことは事実だと述べた。こうした研究は、特に1960年代から1980年代にかけて盛んに行われたという。



「戦闘目的の超心理学は、実際に一定の地位を占めてきた。(中略)この手法は、ソ連科学アカデミーが人間が持つ驚異的な能力を発見しようとした試みのなかで開発された」と、マトビチュクは述べた。

しかし、ロシア科学アカデミーでニセ科学の撲滅に取り組む委員会の座長を務めるエフゲニー・アレクサンドロフはRBC誌に対し、「戦闘目的の超心理学」などというものは、ニセ科学が生み出した概念だと一蹴した。

「こうした取り組みは実際に存在し、開発も行われ、機密扱いになっていた(中略)。しかし、世界の多くの国と同様に、これらの研究はすべて、今ではニセ科学的の烙印を押されており、まったく意味がないものだ。超心理学など存在しない。おとぎ話だ」と、アレクサンドロフは断じた。

「いかなるものであれ、離れたところにいる人間に思念を伝達できるとの主張には、科学的根拠はなく、そうした報告例は存在しない。まったく不可能だ」と、アレクサンドロフは付け加えた。

(翻訳:ガリレオ)



※4月9日号(4月2日発売)は「日本人が知らない 品格の英語」特集。グロービッシュも「3語で伝わる」も現場では役に立たない。言語学研究に基づいた本当に通じる英語の学習法とは? ロッシェル・カップ(経営コンサルタント)「日本人がよく使うお粗末な表現」、マーク・ピーターセン(ロングセラー『日本人の英語』著者、明治大学名誉教授)「日本人の英語が上手くならない理由」も収録。



ブレンダン・コール

この記事の関連ニュース