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「かわいげ」が人生の武器になる、「かわいげ」には33種類ある

ニューズウィーク日本版 2019年4月8日 13時0分

<「どこか憎めない」と思わせる不思議な力(=かわいげ)は、複雑な現代社会を生き抜くための武器になる。ビジネスマン必須の能力......でもあるかもしれない>

この季節、環境が変わり、新たな人間関係を築いていく必要に迫られる人も多いだろう。そんなとき、どこへ行っても周囲とうまくやっていける人をうらやましく思うことはないだろうか。特に気になるのが、能力や年齢に関係なく「どこか憎めない」というタイプだ。

そういう人は、仕事でミスをしたり暴言を吐いたりしても、なぜか許されてしまう。「まぁ仕方ないか」と思わせる空気を醸し出しているからだ。その空気のおかげで、本当の実力以上に評価されることすらある。複雑な現代社会を生き抜いていく上で、これはかなり有利になる。

ビジネスマン必須の能力......とまでは言えないものの、いつか窮地を救ってくれるかもしれないその不思議な力、それは「かわいげ」だ!――と熱く説く本が刊行された。その名も『「かわいげ」は人生を切りひらく最強の武器になる』(久田将義・著、CCCメディアハウス)。

この本は、著名人の行動から一般の「あるある」、さらには名言や歴史まで、男性の「かわいげ」を多角的に観察した、初の『「かわいげ」研究本』だ。

声高らかに笑う、率先してバカになる、美味しいものではしゃぐ

まず、本書の言う「かわいげ」とは「かわいい」ことではない。だから、容姿や見た目、年齢などは一切関係ない。具体的に本書で「かわいげの人」として紹介されているのは、例えば、ビートたけし、浜田雅功、辰吉丈一郎、石原慎太郎......といった面々だ。

人によっては疑問符が付くかもしれないが、彼らのことを「憎めない」と感じている人は多いのではないか。強烈な個性を持ち、時にある種の「毒」を放ちながらも、長年にわたって多くの人から支持され続け、存在感を発揮している。その秘密が「かわいげ」なのだという。

その対極にいる布陣としては、宮根誠司、堀江貴文、小泉進次郎などの名が挙げられている。こちらも、ある程度うなずけるラインナップだろう。だが、彼らは決して「かわいげのない人」ではなく、あえて言うならば「かわいげの発動に失敗した人」らしい。

もちろん「かわいげの人」は身近でも見つけられる。なぜか周囲からちやほやされる人に特有のしぐさとして、「首がもげそうなほど、うなずく」「誰よりも声高らかに笑う」「面と向かって持ち上げてくれる」「いつだって全力投球」「率先してバカになれる」などが取り上げられている。

「同僚の信頼を勝ち取る」「上司の覚えめでたい」「社交場の華になる」といった目的別に、本書には計33パターンもの「『かわいげ』しぐさ」が掲載されており、これらはその一部に過ぎない。ここで全部は紹介しきれないが、他には以下のようなものもある。



・落ち着きなく話しかけて回る
・別れの挨拶に真摯に取り組む
・「ごきげん」であることを最重視する
・マウントを取らずに人を立てる
・「はい!」の返事が絶妙
・美味しいものではしゃぐ
・女性全員に等しくやさしい

確かに、これらのしぐさをする人には、年齢や立場にかかわらず、「無邪気」と言いたくなるような魅力がある。反対に「いつも仏頂面」「対抗心をむき出しにする」「人のせいにする」「自主性がなく指示待ち」といった態度は、「かわいげがない!」と陰口を叩かれかねない「NGしぐさ」だ。

100パーセント全力の謝罪で、ピンチがチャンスに変わる

そもそも「かわいげ」とは何なのか。主に子供や容姿の端正な人が持つ「かわいい」という要素は、幼さやあどけなさに由来している。そして多くの人は、子供時代を終えて社会に出て、さまざまな矛盾や理不尽に直面することで、徐々に無邪気な笑顔を忘れていく。

子供の顔から「かわいい」がそぎ落とされることで、仕事をする人の顔になり、そうして人は大人になっていくのだ。それは、大人にとって「かわいい」は必ずしも必要不可欠な要素ではないからだとも言える。

だが、なかには「かわいい」をずっと持続する人もいる。幼さ由来の「かわいい」が大人になってからも保たれ続けると、それはやがて「かわいげ」に変化していく――というのが本書の説明だ。つまり「かわいげ」とは、本来誰もが持っている「人間的魅力」のひとつだと言えるだろう。

そんな「かわいげ」が最も力を発揮するのは、謝罪の場だという。たとえ自分のミスであったとしても、一切の打算なく謝罪することは、実は難しい。「とりあえず頭を下げておけば......」という気持ちが、無意識のうちに働いてしまうからだ。

しかし、もしもそこで100パーセント全力の謝罪ができれば、相手も「許してやろう」という気になり、さらに「かわいげのあるヤツだな」という評価を得られる可能性がある。危機に陥っていた人間関係が、逆に良い方向に転換するのだ。まさに、ピンチがチャンスに変わる。そんな力が「かわいげ」にはある。

ハードルが高いなら、せめて「NGしぐさ」に気をつけたい

いくらビジネスで有利に働くと言われても、いきなり「全力の謝罪」ができる人は、既に「かわいげ」をうまく使いこなしている人だろう。そうでない人は、まずは、前述したような「『かわいげ』しぐさ」を取り入れることから始めてみるといいかもしれない。

それでもハードルが高いと思うならば、せめて「NGしぐさ」には気をつけたい(本書には20パターンの「NGしぐさ」も掲載されている)。それだけでも、少なくとも悪印象を与えることは避けられ、無為に評価を下げてしまうリスクが減るはずだ。



「かわいげ」を身につけるために必要なのは、自意識や守りの姿勢を捨てることだと本書は言う。だが、ただ無防備になればいいということでもない。時には自分を恥じ入ること、甘えないこと、礼儀正しさ、それに謝罪力なども「かわいげ」の本質へとつながる要素だと指摘する。

著者である久田将義氏は、編集者として複数の出版社などを渡り歩き、現在はニュースサイト「TABLO」の編集長を務めている。人間観察が好きだと話す久田氏が「かわいげ」の存在に気づいたのは、ある嫌いな著名人のことを、知人が「かわいいじゃないですか」と指摘したことがきっかけだという。

自分にとっては受け入れがたくても、他の人には「まぁいいや」と思わせてしまうような気配、つまり「かわいげ」は、「第六感」や「虫の知らせ」のような人間の不思議な能力だと久田氏は語る。

社会を生き抜くために、私たちはいろいろな手段を駆使している。得意先の挨拶、気の合わない知り合いとのゴルフ、取引先への謝罪......。面倒くさいことばかりだ。割り切れないときもある。そのときに「かわいげ」を思い出してほしい。そこに、現代社会を生きていくうえでの活路が見いだせると思っている。(164ページ)

なお、本書ではあえて男性の「かわいげ」に限定されているが、本質的には女性も変わらないはず。また、幼い頃は誰しも「かわいい」を備えていたはずだから、その意味で、どんな人であれ少しくらいは「かわいげ」の要素を秘めているとも言える。

もしも人付き合いやコミュニケーションに悩みを抱えているなら、この「かわいげ」が何らかのヒントになるかもしれない。少なくとも、相手を威圧したり実力で黙らせたりするよりは、ずっと簡単だ。騙されたと思ってやってみても損はない。

『「かわいげ」は人生を切りひらく最強の武器になる』
 久田将義 著
 CCCメディアハウス



ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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