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台湾海峡で中国軍が軍事演習 アメリカは「脅し」と反発

ニューズウィーク日本版 2019年4月16日 13時10分

<米台の非公式な関係樹立40周年を祝うイベントの開催に軍事演習をぶつけて挑発する中国>

中国の空軍と海軍は4月15日、中國と台湾を隔てる台湾海峡で軍事演習を実施した。アメリカはこれを挑発と受け止めて非難している。

中国人民解放軍東部戦区の報道官である張春暉大校は15日に声明を発表。「艦船や爆撃機、偵察機をはじめとする海軍および空軍部隊を台湾島周辺に派遣し、必要な訓練および演習を実施した。複数機能を果たす統合作戦の能力のテストだ」と明らかにした。張はまた、軍事演習は「年間計画の範囲内の通常の措置であり、主権国家の正当な権利だ」とも述べた。

同演習は「台湾海峡全域の平和と安定の維持にもつながる」と張はつけ加えた。「人民解放軍東部戦区は常に、自分たちの任務は何かを念頭に置き、新時代の戦闘に勝利するための能力を強化する努力をし、中国の主権と領土の保全を断固として守っていく決意だ」

トランプ政権と台湾の接近に怒る中国

米政府が台北に設置した窓口機関である米国在台湾協会は、中国側のこの動きに不快感を表明した。ロイター通信によれば、米・台湾の非公式な関係樹立(両者の関係を定めた台湾関係法の制定)から40年を記念して開催されたイベントで演説を行ったジェームズ・モリアーティ理事長は、次のように警告した。「脅しや抑圧を通して台湾に影響を及ぼそうとする試みはすべて、地域を不安定化させ、台湾海峡の安定を脅かすものだ」

アメリカは台湾と公式な関係を樹立してはいないが、1949年に中国で起きた国共内戦に敗れて本土を追われ以降、台湾に軍事支援を約束している。ドナルド・トランプ米大統領は2017年の就任以降、徐々に米台関係を強化しており、2018年には台湾旅行法(米政府当局者と台湾高官が互いを自由に行き来し会談できると定める)を成立させ、南シナ海や台湾海峡でのいわゆる「航行の自由」作戦も増やしている。

1982年に採択された海洋法に関する国連条約を批准している中国(アメリカは批准していない)は、アメリカのこうした動きを非難。一連の取り組みには、世界で最も航行量の多い貿易ルートの一つであり、石油および天然ガスの埋蔵量が数兆ドル相当にのぼると見られている南シナ海において、軍事的および政治的なプレゼンスを拡大しようとする狙いがあると非難した。中国は南シナ海の領有権を強く主張しており、複数の島や小島、岩礁を軍事拠点化。アメリカや、同海域の領有権を主張する周辺諸国と対立している。



中国による軍事演習を受けて、台湾は独自に空軍と海軍の部隊を配備。台湾国防部は声明を発表し、「軍事作戦と世論戦を通じて、台湾海峡で現状に挑もうとする中国の試みは、台湾海峡の平和を助けるものではなく、地域の安定に悪影響を及ぼすものだ」と述べた。

米国在台湾協会のイベントには、米連邦議会下院の代表団も出席していた。代表団を率いるポール・ライアン前下院議長は、マイク・ペンス米副大統領が2018年10月に行った演説を引用し、台湾の「民主主義の擁護は、すべての中国国民により良い道を示すものだ」と語った。

中国の習近平国家主席は「一国二制度」の原則の下、台湾に限定的な自治を認めてきた(香港とマカオについても同様だ)。だが習は、必要とあれば武力によって中国と台湾の再統合を行うとも表明している。

4月23日には山東省青島で、中国海軍の創設70周年を記念する大規模な式典が予定されており、同式典には約60カ国の代表団が参加するとみられている。4月下旬には、中国海軍とロシア軍との合同海上軍事演習も行われる予定だ。ロシアも中国もトランプ米政権とは外交政策上の対立関係にあり、米軍の「拡張主義」と見なすものに反発を抱く両国は関係を緊密化させている。

(翻訳:森美歩)


トム・オコナー

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