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航空会社のリクライニング制限は、乗客の敵か味方か

ニューズウィーク日本版 2019年4月17日 16時30分

<狭い飛行機で座席の背もたれを倒すのは無礼か否か。航空業界長年の論争に終止符が打たれるときがきた?>

米デルタ航空は、新たに導入する航空機の一部で、座席のリクライニング角度を制限すると発表した。デルタ航空のエアバスA320の乗客は、これまで約10センチ座席を倒すことができたが、今後は約5センチになる。ファーストクラスのリクライニングも、これまでの約14センチから約9センチに縮小される。

もっと座席を詰め込むのが狙い? いや、乗客の「パーソナルスペース」を確保することだと、デルタ航空は説明する。

「素晴らしいアイデアだと思う」と語るのは、ジョニージェット・ドット・コムを運営する旅行エキスパート、ジョニー・ディスカラだ。「航空各社は前後の座席の間隔をもっと広げるべきだ。そうでなければ、リクライニング自体をなくすべきだろう。機内で起きる言い争いのほとんどは、背もたれを倒す角度が原因になっているのだから」

ほかの航空会社もデルタの後に続くだろうとディスカラは予想する。

乗客に残された最後の特権?

格安航空会社のなかには、すでにリクライニング機能を廃止しているところもある。スピリット航空(米)、イージージェット(英)、ライアンエアー(アイルランド)などだ。ナショナルフラッグ・キャリアにも同様の動きはある。2018年にはブリティッシュ・エアウェイズが、新たに導入する35機のエアバスA320neoおよびA321neoで、背もたれを少し後ろに傾けた状態で固定すると発表した。「機内の全員が快適な旅を楽しめるようにするため」だ。日本ではピーチ・アビエーションが同様の「プレリクライニング・シート」を導入している。

座席のリクライニングは、ますます窮屈になる航空機の乗客に残された数少ない特権のひとつのようにも思えるが、使い方を誤ると、リラックスどころかかえってストレスが増える。前の座席の乗客が急に背もたれを倒してきて、「飲み物がこぼれたり、ノートパソコンがあやうく壊れそうになったりしているのを見たことがある」とディスカラは話す。「ファーストクラスでさえ、問題が起こる」

今回デルタ航空の変更の対象となるのは62機(デルタ航空が所有する全航空機の10%未満)で、そのほとんどは短距離の路線だ。現在のところ、国際線の座席に変更を加える計画はない。

座席のリクライニングが失礼な行為であるかどうかについては、長らく議論の的になってきた。トリップアドバイザーのあるフォーラムでは、それについてさまざまな反応が寄せられた。



あるメンバーは、「状況による」と書いている。「夜のフライトで、後ろの座席の乗客が眠っているなら問題ない。でも、フライトの間ずっとリクライニングのままというのは、絶対によくない。たしかに本人にとってはそのほうが快適だが、後ろの気の毒な乗客にとってはそうではない」

マナー違反者は「座席を後ろから蹴られても当然だ」とも書かれている。

だが別の回答者は、シートベルト着用サインが消えたら直ちにリクライニングボタンを押すと書いている。「おそらく小型のプロペラ機以外は、どんな飛行機にもリクライニング機能はある。これからは長距離フライトでしか使ってはいけなくなるというのなら、航空会社はそれを乗客に知らせるべきだ。航空会社は(座席を一つでも多く詰め込むために)『余分なもの』をどんどん省いてきた。今度はリクライニングまで奪おうというわけだ」

とりあえず、リクライニングのマナーを復習しておこう。ディスカラは言う。

「リクライニングする前に、振り返って後ろに座っている人に合図をするのが作法だ。後ろの人がドリンクを飲んでいたり、ノートパソコンを出したりしていないか、あるいは眠っているかどうかを確認する。飛行機に乗っているときは、誰に対しても心の底から丁寧に振る舞わなければ何が起こるかわからない」

(翻訳:ガリレオ)



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ダニエル・アベリー

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