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メーガン妃の「赤ちゃんの肌の色は?」でCNNが炎上

ニューズウィーク日本版 2019年5月8日 18時55分

<ハリー王子とメーガン妃の第一子誕生を「英王室に初のアフリカ系アメリカ人」などと囃し立てる報道に対し、人種は関係ないと戒めたCNNの記事に非難殺到。無神経なサブタイトルが原因だった>

「(メーガン妃の)赤ん坊の肌はどのくらい黒い?」――ネット記事にこんなサブタイトルをつけたCNNが炎上中だ。記事自体は、サセックス公爵夫人ことメーガン妃の出産をきっかけに持ち出されたアフリカ系のルーツにまつわる「作り話」を封じる趣旨だが、インターネット上ではこのサブタイトルが一人歩きして批判の的になっている。

政治家やテレビの脚本家、そしてCNNの元従業員までが、ハリー王子とメーガン妃の第一子誕生にまつわる人種問題を論じたこの記事をこきおろした。

執筆したのは、CNNエンタープライズのライター兼プロデューサー、ジョン・ブレイク。彼はバラク・オバマが大統領になったときのように「人種的多様性の偉大な希望」などとオバマが黒人であることを過度に称える逆差別の風潮に警鐘を鳴らし、今回の出産を「王室に初めて生まれたアフリカ系アメリカ人」などと囃すセンセーショナルで人種差別的な記事が世界中に出回っていることを批判した。

ブレイクがめざしたのは、「誰かを傷つけることをまったく意識せずに」「こうした偏見を煽るコメンテーターたち」の認識を改めることだった。

人種差別はどっち?

だが皮肉なことに、専門家たちはブレイクのほうこそ人種差別に対する意識が低いとCNNを激しく非難した。

「CNNの幹部クラスに、もっと有色人種を採用すべきだ」と、CNNのニュース番組でアンカーを務めていたソルダッド・オブライエンはツイートした。

人気トークショー番組の脚本を担当する作家アンバー・ラフィンは、「赤ん坊の肌はどのくらい黒い?」というサブタイトルのスクリーンショットに、記事の要約とハリー王子夫妻の動画を載せた。

記事のなかでブレイクは、自分もまた混血であることを告白し、オバマをはじめ「権力の座にある非白人の象徴的存在」に対して世間は理不尽に高い期待を持ち、「新しい人種の時代」と持ち上げてきた歴史を批判した。

これに対し、ラフィンはただ「何それ?」と鼻で笑った。こうした脊髄反射的な反応は、ブレイクが全体として伝えようとしたメッセージからすれば不公平といえるかもしれないのだが、ラフィンの反応に共感する声は膨大な数にのぼった。



このサブタイトルに対して反射的な批判の声をあげた人々の多くは、ブレイクの記事の、「慎重を期す必要がある理由はこうだ」という書き出しで始まる以下の段落をとくに問題視した。

「ロイヤルベビーへの注目は、すでに人種に関する最も危険な偏見のいくつかを復活させた。そして多くの場合、偏見を助長している専門家はそれがどれほど人々を傷つけているかまったく気づいていない」

ブレイクに批判的なジャーナリストや政治家らは、6日夜から7日にかけて、このサブタイトルをソーシャルメディアに次々と投稿した。

「なんとCNNは『赤ん坊の肌はどのくらい黒い?』と問いかけた。それでよく他の専門家を人種差別的だと批判できるものだ」と投稿したのは、バージニア州上院議員に民主党から立候補している人権に関する著述家クアシム・ラシッドだ。

パームビーチポストの記者レスリー・ストリーターは、「これはまったくの監督不行き届き。どんなバカでも公式ニュースサイトを使ってその代表であるかのように発言できてしまうことから起こることだ」と批判した。

無視された真の論点

「これは本当に起こったことなのか?」 と、投稿したのはワシントンポスト紙のユージーン・スコットだ。

人気テレビドラマ『Empire 成功の代償』の脚本家エリック・ヘイウッドも参戦し、「みんな落ち着いて。ロイヤルベビーが『黒人』か、それが『普通』かはともかく、誰も人種差別主義者にはならないようにしよう。だってそれは、本当にみっともないことだから」と綴った。

ブレイクの記事に対する批判は、彼が主張する重要な論点を頭から無視し、もっと些末な部分に噛みつくものばかりだった。

ブレイクの分析と、彼の言葉の受けとめられ方のギャップを明らかに示しているのは、記事の結びの部分だろう。

最後の段落で、彼は自分の希望をこう綴っている。「想像してほしい。公爵夫妻のようなカップルに子供が生まれたとき、その子の人種が何なのか、色が白いか黒いかなどということには誰もこだわらない未来を」──それが、ブレイクの結論だ。

(翻訳:栗原紀子)

ベンジャミン・フィアナウ

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