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「仕事辞めたい」 本当に辞める前にすべき1つの質問

ニューズウィーク日本版 2019年5月9日 17時5分

<漠然とした気持ちのまま会社や学校を辞めてしまったら、後悔するだけでなく、同じことを繰り返す羽目になる。質問の力が、そんな「あなた」を変える>

大型連休が終わり、「会社(学校)に戻れるだろうか?」と不安を抱いた人、あるいは日常が戻りつつある今でさえ「もう行きたくない......」と精神的につらい人もいるかもしれない。新年度、新学期など大きな環境の変化による緊張状態のままで連休に入ったことで心身ともに調子を戻せず、「五月病」が起きるのはこの時期だ。

とはいえ、もし漠然とした「仕事(大学)が嫌で辞めたい」という気持ちのまま、突発的に辞めてしまったら、それを後悔することになるだけではない。そもそもの問題が解決されないままになってしまうのだ。

「嫌だ」と思って辞める問題の根深さについて、「質問コンサルタント」として活動する河田真誠氏は次のように指摘する。

 仕事がイヤでやめた人の多くは、新しい職場でも同じことで悩むことになる。(略)これは問題が「あなた」にあるからだ。「イヤな仕事」や「イヤな人間関係」があるのではなく、「イヤだと思っているあなた」がいるだけなのだ。その「イヤだと思う」を変えない限り、相手や環境を変えても同じことを繰り返すだけである。
※河田真誠・著『人生、このままでいいの? 最高の未来をつくる11の質問』(CCCメディアハウス)85ページより


そこで、仕事(学校)を辞めたい人への河田氏の提案は「辞めない」だ。

もちろん好きな仕事を楽しくやっている人は存在する。しかし、そもそも「楽しい仕事(勉強)」が最初から存在するのではなく、それを「楽しめる人」と「楽しめない人」がいるだけだという。つまらなく、つらい仕事でも楽しめる方法を自分なりに見つけた上でやり切れば、たどり着いた山頂からはまた違う景色が見えてくるというわけだ。

しかし、ここで根本的、かつ哲学的な問題が出てくる。それは、その仕事が本当に「辞めないに値するか」だ。どうやってそれを見極めればいいのか。

物理的にも精神的にも、がんじがらめになっている

河田氏は、企業研修や学校での授業において、生き方や考え方、働き方といった人々の悩みや問題を、質問を通して解決に導く専門家だ。その河田氏によれば、こんな場合に有効な質問は「やめたいことや、捨てたいことは何だろう?」である。著書の『人生、このままでいいの? 最高の未来をつくる11の質問』で掲げる11の質問の3番目だ。

現代人は物理的にも精神的にも、一杯の状態にある。自分が思っている以上に多くの選択肢を持ち、そこから多くを選び取った結果、身の回りは要らないものであふれている。時間的にも精神的にも余裕がないのに、もっと多くを手に入れようとしたり、まだ何かを始めようとしたりするから一向に進まない。多くのものにがんじがらめになり、足取りが重くなっていることに気付かないでいる。



今は宝物のように大切にしているものであっても、明日の自分には必要がないものである可能性もある。それを見極めていくことで、やめずに続けるべきか、それでもやはりやめるべきかが分かるのだ。

その見極めのために河田氏は、先の質問に派生して次の8つの質問を投げ掛ける。

・これからは、何を大切に生きていきたいですか?・捨てたり、やめたいことは何ですか?・これからも大切にしたいことは何ですか?・本当に、なくてはならないものは何ですか?・どうすれば、捨てることができますか?・何を怖れていますか?・どんな自分を生きていきますか?・どうすれば、もっと味わったり、楽しんだりできますか?
※河田真誠・著『人生、このままでいいの? 最高の未来をつくる11の質問ノート』(CCCメディアハウス)33、35ページより


質問の答えは必ず書き出す、考えるだけではダメ

この8つの質問で自分が変えたいと思っていることがよりクリアになり、要らないものを捨てる覚悟ができ、必要なものに入れ替える作業をしながら、新しい自分に変えることができる。必要なものは大事にし続ければいいし、要らないものを捨てて身軽になれば、自然と次の一歩を踏み出すことができる――河田氏はそう説明する。

上記の8つの質問を掲載した『人生、このままでいいの? 最高の未来をつくる11の質問ノート』は、前作を補完する「実践ワークブック」として出版したという。そこで強調されているのは、実際に書き出すことの大切さだ。

メモや日記など、実際に書き出すことの効果が最近よく指摘されるが、頭の中で考えるのと実際に書き出すのはまったく違う行動である。

例えば、「あなたのいいところはどこですか?」と聞かれると、「優しいところ」「丁寧に仕事をするところ」「決断が早いところ」など、頭の中に思い浮かぶことがあるだろう。しかし、それを実際に書き出すとなると、「誰に対しても優しくできているだろうか?」「本当に丁寧に仕事ができているだろうか? 単に仕事が遅いだけでは?」「自分勝手に決めているだけでは?」など、違う感情が生まれてくるのではないだろうか。

書き出すという行為は、頭の中にあるアイデアを明確に言語化する作業だ。書き出すことで「本当にそうなのだろうか?」と問い直し、心にぐっときたり、ときに恥ずかしく思ったり、また、イラっと嫌な気分になる。この感情が揺さぶられてしまうプロセスが最も重要なのだ。

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大きな決断をする前に「ワクワクするか?」を自問する

嫌なことをさっさとやめるのもひとつの手だが、それは単にリセットボタンを押しているにすぎない。不平を言うだけだったり、突発的にやめたりすることは簡単だが、「どうして嫌なのか?」「本当にやめるのか?」とまずは自分に問うことなしには、根本的には何も変えることができない。自分の内面が変わることがないからだ。

また、ワクワクする気持ちも必要だ。会社が嫌だから転職するのではなく、もっとワクワクするようなやりたい仕事があるから転職すべきだし、もっとワクワクすることを自分でしたいから起業しなくては、新たな苦労を乗り越えることはできないだろう。

もし、会社や学校を辞めようと考えてしまうのであれば、まずは自分に問いかけたほうがいい。その悩みはもしかしたら悩むに値しないほど小さなことだと気付くかもしれないし、逆に心の中にしまっておいた自分が本当にやりたいことに気付かせてくれるかもしれない。 

質問には偉大な力がある。もし「自分の人生、このままでいいの?」と思うようなことがあるのなら、心が揺さぶられるほど自分と向き合う経験ができる「質問」を一度、自分に投げ掛けてみてはどうだろうか。


『人生、このままでいいの? 最高の未来をつくる11の質問』
 河田真誠 著
 CCCメディアハウス



『人生、このままでいいの? 最高の未来をつくる11の質問ノート』
 河田真誠 著
 CCCメディアハウス



ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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