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米海軍の潜水艦で女性乗組員の「レイプリスト」、艦長は解任

ニューズウィーク日本版 2019年5月20日 18時45分

<逃げ場のない潜水艦のなかで身の危険さえ感じていた女性たちの不安を、上官は理解しなかった>

米海軍の潜水艦の乗組員らが、同じ艦の女性乗組員を対象に性的魅力ランキングのリストを作成し、わいせつなコメントをつけて共有していたことが捜査により明らかになった。

問題が起きたのは原子力潜水艦フロリダで、女性の乗務が認められた米軍で2番目の潜水艦だ。男性乗組員は、女性乗組員のいわゆる「レイプリスト」を作って回覧していた。しかし海軍幹部は十分な対応を取らなかった。

ミリタリー・ドットコムによれば、リストに関する捜査は情報自由法に基づく請求によって行われた。74ページに及ぶ捜査報告書によれば、艦内では性差別的で不適切な振る舞いや発言が「許容され、上官と部下の間の信頼は存在しなかった」という。

フロリダに女性兵士が乗務するようになったのは昨年2月で、早くも6月には、艦長のグレゴリー・カーチャー大佐の元に複数の部下から問題のリストに関する報告が上がっていた。リストには女性乗組員を星の数で評価するものと、それぞれの名前の後に性的なコメントが書き加えられたものがあった。コメントにはやってみたい性行為など攻撃的な性的活動に関するものもあったが、ミリタリー・ドットコムによればレイプについての記載はなかったという。

対応を渋った艦長は解任

第10潜水艦群の司令官でカーチャー艦長の上官であるジェフ・ジャブロン少将は、フロリダの事件についてこう報告している。いわく、「『レイプリスト』の噂が乗組員全体に広がり、かなりの数の女性(乗組員)が身の安全に懸念を抱く事態となっている。また、このリストについて知った男性乗組員はいずれも嫌悪感を抱いていた」。またジャブロンはこうも述べた。「(艦長による)対応は控えめなもので、どんな対応が取られたか知る者もほとんどいなかった」

捜査報告書によれば、カーチャー艦長はリストが誰の手に渡り、誰が読んだのかを突き止めるための調査を命じたものの、正式な捜査を始めようとはせず、リストの存在についても上官に報告しなかったという。

カーチャー艦長は就任からたった5カ月後の8月に解任された。指揮官としての能力への信頼が失われたためだとミリタリー・ドットコムは伝えている。



問題が起きた時のフロリダの乗組員は173人強で、うち女性は32人だった。調査報告書によれば、昨年6月4日に男性水兵の1人が問題のリストを印刷し、翌日、女性下士官に渡して問題を知らせた。

10日後、同じ男性水兵が更新されたリストを印刷し、同じ女性下士官に渡した。この男性水兵はリストについて、艦のコンピューターネットワーク上に保存され、定期的に更新されていたと述べたという。

女性下士官はリストを撮影した画像を男性の上官に提出。この上官はカーチャー艦長に報告を上げるなどしたが、カーチャーからリスト問題の調査にかまけすぎているとして「スローダウン」するよう命じられたという。

カーチャーは海軍の犯罪調査部門の助けも借りたが、艦のコンピューターシステム内でリストのありかを突き止めることができなかった。噂が広がる中、カーチャーはリストの捜索のためにどんな手を打ったか説明もしなければ、噂の拡散を抑えようともしなかった。

「上官たちはリストのことなどとっくに忘れている」

「若手の(女性)水兵たちは、これが誰がの仕業か突き止めようとする努力を指揮官がしなかったことを知って、自分たちの身が安全でないと感じている」と捜査報告書には書かれている。ある女性乗組員は捜査担当官に対し、上官たちは「リストのことなどとっくの昔に忘れてしまった」との見方を語ったという。

リストを手に入れた女性下士官は、艦の男性上官たちでは十分な対応を取らないとだろうと考え、恋人や家族、そしてジョージア州ギングズベイの母港にいる上官にもリストの画像を送った。

ジャブロンは「カーチャー大佐がさらなる対応をすべきだと認識したのは、公式にこの女性下士官から連絡を受けてからだ。つまり、リスト発覚から数週間経ってからだった」と述べ、カーチャーの艦長解任を上申した。

ある海軍幹部はミリタリー・ドットコムに対し、少なくともフロリダの2人の乗組員が免職になったほか、数は明らかになっていないもののリストに関連して複数が懲罰の対象になっていると語っている。

(翻訳:村井裕美)


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デービッド・ブレナン

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