Infoseek 楽天

韓国でも話題に 政治に関心が薄い10代〜20代が第3次韓流ブームを牽引

ニューズウィーク日本版 2019年5月30日 14時30分

<日本と韓国の往来は1000万人を突破。政治に関心が薄い10代から20代がグルメ主体の第3次韓流ブームを牽引している>

韓国マスコミ各社が日本の第3次韓流ブームを取材している。第1次韓流ブームは日韓サッカーワールドカップの直後で、韓国ドラマ「冬のソナタ」の放映がきっかけだった。続いてK-POPが人気となり、韓流ドラマやK-POPで育った世代が、グルメ主体の第3次韓流ブームを牽引している。

「嫌韓は、心配していたほどではなかった」

東京・四谷の韓国文化院で、2019年5月9日、同院開院40周年記念特別企画展「2019韓国工芸の法古創新~水墨の独白」の開幕式が行われた。黄星雲(ファン・ソンウン)院長は、聯合ニュースの取材に、着任前は日本国内の嫌韓に対する懸念があったが、心配していたほどではなかったと答えている。黄院長は前年10月の着任直後に新大久保を訪れ、K-POP関連商品の販売店や韓国料理店に大勢の人が訪れるのを見て驚いたという。

日本の本格的な韓流ブームを振り返ってみると、2003年頃がその始まりだろう。NHK BSでドラマ「冬のソナタ」が放映されると、30代以上の女性を中心にドラマで主人公を演じた俳優ペ・ヨンジュンの人気が高まり、「ヨン様」ブームが巻き起こった。当時の小泉純一郎首相が盧武鉉大統領(当時)との会談で「冬のソナタ」に触れる一幕もあったほどである。2005年に時代劇ドラマ「大長今」(日本名「宮廷女官チャングムの誓い」)が放映されると、韓流ブームは男性にも広がった。

韓国は、ひとたびブームが起きると官民あげて右へ倣えをすることが多いが、当時の韓国芸能界は第2、第3の「ヨン様」を目論み、ドラマや映画を日本に輸出した。しかし、その期待ほどには二番煎じ的ドラマが爆発的なヒットに繋がることはなかった。

李明博大統領が竹島に上陸した影響も大きい

そして、ドラマ主体の第1次韓流ブームは収束したが、K-POPが第2次韓流ブームを引き起こすことになる。音楽業界がBoA(ボア)、東方神起、BIGBANG(ビッグバン)、少女時代、KARA(カラ)など韓国のアイドル歌手を日本に売り込み、ブームに繋がった。

韓国の音楽業界が、国内で投資金を回収することは難しい。文化体育観光部から音楽振興予算を得た芸能事務所は、さらに'輸出'を強化する。「冬ソナ」ブーム時に8600万ドルだった韓国のコンテンツ輸出額は、3億1300万ドルまで成長し、その80%を日本に依存した。

芸能事務所は次々とアイドルグループを誕生させて、アジアやアメリカにも輸出したが、2012年頃には供給過多となり、陰りを見せはじめる。同じようなアイドルグープが数多く複製され新鮮さが失われたのだ。この年ヒットしたK-POPはPSY(サイ)の「江南スタイル」くらいしかない。

そして、日本の韓流ブームも「江南スタイル」を最後に勢いをなくす。李明博大統領が竹島に上陸して、天皇への謝罪要求を行った影響も大きい。日本で激しい嫌韓・反韓世論が巻き起こり、韓流関連の店舗は次々と閉店に追い込まれた。



韓国食ブームを牽引する10代から20代

韓国ドラマやK-POPは下火になったが、近年、韓国グルメが浮上した。定番とされていた焼肉やキムチなどではなく、韓国で人気が出はじめた料理がリアルタイムで広がりはじめたのだ。

鶏肉と野菜を甘辛い味つけで炒めてチーズをトッピングしたチーズタッカルビなど新しいメニューが人気となり、韓国料理店が集まる新大久保など、多くの日本人で賑わうようになる。韓流ブームが終わって下落していた新大久保の家賃も上昇の兆しを見せている。

韓国食ブームを牽引しているのは、主に10代から20代の若い世代である。数年前まで中国人が占領していたソウルの繁華街・明洞は日本人で溢れかえり、日本のテレビや雑誌で紹介された飲食店など、韓国人客より日本人客の方が多い店すらある。

第1次韓流ブームは、30代以上の女性が牽引した。韓国は日本で流行した後、15年から20年遅れてブームになるコンテンツが少なくない。第1次韓流ブームの15年前の日本はバブルの真っ只中で、多くのアイドルがテレビに登場した時代でもある。スターがいない'アイドル冬の時代'を経て、冬のソナタが放映されるとバブル期に学生時代を過ごした女性が飛びついた。K-POPが登場するとスター性のあるアイドルを求める世代が韓流ドラマからK-POPに移行する。

日本と韓国の往来は1000万人を突破

第1次・第2次韓流ブームを牽引したのは30代以上で、政治に関心が高い世代でもあり、ブームは政治情勢に作用される。一方、新たな韓流ファンは、第1次韓流ブームを牽引した祖母・母親世代の影響を受けながら成長した世代で、政治への関心が薄い世代でもある。

強制徴用を巡る判決や日韓合意に基づく和解・癒やし財団の解散、レーダー照射問題など政治的な対立が続くなか、日本と韓国の往来は1000万人を突破した。政治的な葛藤と文化交流は別の問題と捉える日本人が増えていることが往来増加と第3次韓流ブームの背景にあるが、日本バッシング一辺倒だった韓国マスコミが、日本叩きを抑制するようになった論調の変化もプラスに作用しているかもしれない。




佐々木和義

この記事の関連ニュース