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トランプ政権が生んだ、命も危ない児童移民収容所

ニューズウィーク日本版 2019年6月24日 16時15分

<メキシコとの国境からやってきた移民の子供たちを収容する施設の非人道的な環境が明らかになった>

メキシコとの国境からやってきた移民の子供たちに対する非道な扱いをめぐって、トランプ政権に対する怒りが沸騰している。テキサス州にある児童移民を収容する施設では食料、水ともに不足し、衛生状態は劣悪で、子供が幼児の子守りをさせられているという。

AP通信によると、ある法律家のチームが、テキサス州エルパソ近郊の児童移民施設に収容された60人の子供たちにインタビュー。収容所生活の衝撃的な実態を明らかにした。

あるケースでは、10~15歳の3人の少女が、「パンツはおもらしで濡れたまま、替えのおむつもなく、粘液まみれのシャツを着た」男児の世話を任されていた。

少女たちの話では、国境警備隊の警備員が2歳のこの子を連れてきて、「この子の世話をしたい子は?」と尋ねたという。「最初は別の子が面倒を見ると言っていたけど、数時間で興味を失くしたので、昨日から私が面倒を見ている」と、一人の少女は弁護士に語った。

この子供たちは、親の同伴なしで単独で国境を超えようとしたか、2018年にトランプ政権が行った親子引き離し政策の犠牲者だ。国内の強い反発からトランプ政権は引き離しを撤回し、既に引き離された親子を再会させようとしているが、再会に失敗したままの子供たちも多いのだ。

米政府の規則では、米税関・国境取締局(CBP)管轄下の国境警備隊は、子供を拘束した場合、72時間以内に身柄を米保健福祉省に引き渡さなくてはならないのだが、毎月子供だけで数千人という移民が押し寄せて手が回らないのだ。

子供たちが法律家たちに語ったところによると、収容所の食事は、凍ったままだったり、白米だけだったりするという。着替えやシャワーは不定期にしか与えられない。

子供たちのうち15人がインフルエンザにかかっており、隔離された子供も他に10人いた。

【参考記事】オカシオコルテスの過激発言が波紋「まるで強制収容所」

心の傷が長引く可能性も

こうした扱いは、子供の精神的外傷になりかねない。「子供に子供の世話をさせることは、大人や政府がその責任を放棄し、裏切ることを意味する」と、アメリカへの亡命を求める親子約50人を診察した経験のあるサンフランシスコの精神分析家、ギルバート・クリマンは言う。

米議会議員や権利擁護団体は、連邦政府の保護下にある子供たちを「心的外傷をもたらしかねない危険な状況」に陥らせた責任は、トランプ政権にあると激しく非難している。

民主党のラウル・ルイス下院議員は本誌に声明を寄せ、「アメリカ南部の国境地帯における危機は深刻であり、CBPは子供の人道的ニーズを満たせていない」と述べた。「食料も水もなく、衛生的でもない環境で暮らしている事実は容認できない。野蛮で、アメリカの価値観に反する」

人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチで子どもの権利に関する上級顧問を務めるマイケル・ボシュネクは、子どもたちがエルパソの施設で「危険な状況」に置かれていることをツイッターで警告した。

「移民の収容施設は子供にとって過ごしやすい環境ではない」と、アメリカ小児科学会移民健康特別利益団体で共同議長を務めるジュリー・リントン博士は言う。

「こんな環境は子供にとって不健康であるばかりか、安全でもない」


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ニコール・グッドカインド

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