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未婚女性が結婚相手の男性に求める年収とは......理想と現実の大きなギャップ

ニューズウィーク日本版 2019年6月26日 15時30分

<未婚女性の約半数は結婚相手の男性に年収500万円以上の収入を望んでいるが、未婚男性の半数以上は年収300万円未満というのが現実>

日本社会の少子化は着実に進んでいる。2018年の出生数は91万8397人と過去最低になった。政府は、出産・育児に関わる経済的負担を軽減し、仕事と育児を両立しやすい環境の整備を目指すとしている。

だがそれ以前の問題として、未婚化が進んでいることも大きい。結婚と出産が結びついている日本では、少子化の最大の原因は未婚化であるのは疑いない。成り行きまかせでは改善しないと、各地で婚活の取り組みが行われているが、なかなか成果は上がらないようだ。

理想の相手に出会えないということもあるようだが、結婚相手に何を求めるかは各種の調査で分かっている。とりわけ女性ははっきりしていて、18~34歳の未婚女性の9割が「経済力」を重視すると答えている(国立社会保障・人口問題研究所『出生動向基本調査』2015年)。

昨年に内閣府が実施した調査では、未婚の男女に対して、結婚相手に希望する年収をたずねている。<図1>は、女性が相手に希望する年収と、男性の年収の分布を対比したものだ。



女性の46.0%が年収500万円以上の男性を望んでいるが、それに見合う男性は15.9%しかいない。未婚男性の半分以上が年収300万未満だが、それでいいという女性は1割もいない。女性にすれば理想と現実のギャップは大きく、婚活が功を成さないのも頷ける。

年収には地域差があるので、都市部では高収入の男性が多いのではないかと思われるかもしれない。2017年の総務省『就業構造基本調査』に、未婚男性の所得(税込み)の分布が都道府県別に出ている。全県の中央値(median)を計算し、高い順に並べると<表1>のようになる。



各県における普通の未婚男性の稼ぎだが、トップの東京都でも380万円で、女性の半数が求める500万円には遠く及ばない。筆者の郷里の鹿児島県では、300万円稼ぐ男性に出会えたら御の字だ。各地の結婚相談所の壁に、このデータを貼っておくといいかもしれない。



これをもって女性の「高望み」を責めるのはたやすいが、賃金には性差があり、かつ女性は結婚すればバリバリ稼ぐのが難しくなる。未婚者と既婚者の所得カーブを、男女で分けて比較してみるとよく分かる<図2>。



男性は未婚者より既婚者の所得が高いが、女性はその反対だ。未婚者ではジェンダー差がなく、結婚のインパクトが男女で逆であることが分かる。女性は結婚すると、正社員であっても稼ぐのが難しくなる。

これでは、女性は結婚相手にある程度の収入を期待せざるを得ない。しかし稼ぎのある男性は減っており、ゆえに未婚化が進行する(山田昌弘『モテる構造 男の女の社会学』ちくま新書、2016年)。こうした現実があることは否定できない。

未婚化・少子化に歯止めをかけるには、夫婦二馬力で稼げるようにして、かつ給与の性差を是正する必要がある。男性の家事・育児分担を促し、保育所も増設しなければならない。こうした対策が進んだ北欧諸国では、日本で見られるような未婚男女の「すれちがい」は小さいのではないか。

昭和の高度経済成長期ならいざ知らず、男性の腕一本で家族を養える時代などとうに終わっている。令和の時代になっても、偏狭な性役割分業を前提としたシステムが維持されるなら、少子化が止まるはずはない。

<資料:内閣府『少子化社会対策に関する意識調査』(2018年)、
    総務省『就業構造基本調査』(2017年)>










舞田敏彦(教育社会学者)

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