<格安クルーズプランが増えたことによって船上のモラルが低下している。どんちゃん騒ぎの内実とは>
豪華クルーズ船での船旅といえば究極の贅沢。夜は盛装でディナーやダンスを優雅に楽しみながら、濃密な社交の時間を過ごす――そんなイメージが今、パーティー狂の若者たちによって損なわれつつある。複数の報道によれば、彼らは船上で大酒を飲んでどんちゃん騒ぎを繰り広げたあげくにドラッグを使用。まるで動物のように振る舞ってグループセックスに興じているという。
こうした恥ずべき実態が露呈したのは7月26日。イギリスの豪華客船ブリタニア号の船上で酔っ払い同士の喧嘩がもとで男女6人が怪我をしたと報じられたのだ。
<参考記事>50歳以上の「節操のないセックス」でHIV感染が拡大
かつて客船のエンターテイナーだったある人物は、格安クルーズプランが増えていることが1つの原因だと言う。「手頃なパッケージツアーや飲み放題プランが、乗客を動物に変身させる」
ある客船乗務員(匿名)は、今では多くの客船で乗客が度を超えたどんちゃん騒ぎをしたり暴力をふるったり、恥も外聞もなく裸になったりする光景が繰り広げられていると語る。
学生向けに春休みクルーズを販売する米CPC社の動画
船上での「野外セックス」も
5年以上にわたってさまざまな客船で仕事をした元エンターテイナーによれば、最悪なのは期間が短いクルーズだ。「長旅よりもはるかに安いので、バーの酒がなくなるまで浴びるように飲む連中が集まりやすい」。ショーの最中にやじを飛ばしたり、バーの閉店後に喧嘩を始めたりするのは日常茶飯事だという。
元乗務員のクレア・サンダース(29)は、ベルギーからフランスまでのクルーズに乗船したところ乗客が酒を飲んで騒ぎ、「まさに悪夢だった」と語る。「飲み放題プランを最大限に活用するのは、決まってイギリス人だった」と彼女は言う。喧嘩がなく静かだと思うと酒や薬でつぶれている。船内でコカインが発見されたという報告は日常的にあり、もう誰も驚かない。
客室の外で堂々とセックスをしたり、裸になったりする人も増えているとサンダースは指摘した。オーストラリアからフィジーへの船旅では、船上結婚式をしたカップルがデッキの上でセックスをしたことを理由に「次の停泊地で船を下ろされた」と彼女は言う。
<参考記事>巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
新婚の夫婦なら、情熱的になるのもまだ分かる。だが、そうでなくても客室の外ではしゃぎ回るのが好きな客は多く、最近の調査によれば、船旅経験者の10%前後が船上での「野外セックス」の経験があると回答した。
クルーズ船がまるで「水上都市」のようにどんどん大型化し、何千人もの乗客が乗船するようになる一方で、開放的な「性的快感」を求める気運が盛り上がっている。
客だけでなく、乗務員も同様だ。船上で長い時間を過ごす乗務員たちは、「よく働き、それ以上に遊べ」が信条。ある乗務員によれば、勤務は12時間シフト。乗務員だけのパーティーもあり、そこでみんな「はじける」のだという。
「月に1回、乗務員だけで盛装してパーティーをするが、そこでカップルが誕生する。イギリス人はだれかれ構わず手を出していた。みんな上級船員と寝たがった。彼らの方がいい客室を使っているからだ」
ある元乗務員によれば、既婚者でも「船上の妻/夫」をキープしているスタッフが多かったという。
「こんなことはめったにない」
ロイヤル・カリビアン・クルーズが実施した調査では、回答者1000人のうち98%が、船旅を「最もロマンチックな旅だと思う」と回答。99%がクルーズ中のアクティビティとして一番好きなのは「セックス」だと回答した。
調査の主な結果は以下のとおり。
・90%がクルーズ中に一番多いアクティビティとしてセックスを挙げた
・75%が船旅でパートナーとの絆が深まると回答
・62%が船上のセックスは最高だと回答
・52%が地上よりも船の上の方がパートナーとの関係が親密になる傾向が強いと回答
・31%が夜は冒険するのにぴったりの時間帯だと感じる
・28%がセックスは朝・昼・夜のどの時間帯でも構わない
だがトラベルエディターのリサ・ミノーは、イメージが損なわれた部分はあってもクルーズの楽しみがなくなってしまった訳ではないと指摘する。地上であれ海上であれ、パーティーとなると普段はしないような突飛な行動をとる人はいるものだと彼女は言う。
「私はこれまで20以上の船でクルーズをしてきたが、先日ブリタニカ号で起こったような場面に遭遇したことはまだ一度もない」
(翻訳:森美歩)
※8月6日号(7月30日発売)は、「ハードブレグジット:衝撃に備えよ」特集。ボリス・ジョンソンとは何者か。奇行と暴言と変な髪型で有名なこの英新首相は、どれだけ危険なのか。合意なきEU離脱の不確実性とリスク。日本企業には好機になるかもしれない。
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カルヤン・クマル
豪華クルーズ船での船旅といえば究極の贅沢。夜は盛装でディナーやダンスを優雅に楽しみながら、濃密な社交の時間を過ごす――そんなイメージが今、パーティー狂の若者たちによって損なわれつつある。複数の報道によれば、彼らは船上で大酒を飲んでどんちゃん騒ぎを繰り広げたあげくにドラッグを使用。まるで動物のように振る舞ってグループセックスに興じているという。
こうした恥ずべき実態が露呈したのは7月26日。イギリスの豪華客船ブリタニア号の船上で酔っ払い同士の喧嘩がもとで男女6人が怪我をしたと報じられたのだ。
<参考記事>50歳以上の「節操のないセックス」でHIV感染が拡大
かつて客船のエンターテイナーだったある人物は、格安クルーズプランが増えていることが1つの原因だと言う。「手頃なパッケージツアーや飲み放題プランが、乗客を動物に変身させる」
ある客船乗務員(匿名)は、今では多くの客船で乗客が度を超えたどんちゃん騒ぎをしたり暴力をふるったり、恥も外聞もなく裸になったりする光景が繰り広げられていると語る。
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船上での「野外セックス」も
5年以上にわたってさまざまな客船で仕事をした元エンターテイナーによれば、最悪なのは期間が短いクルーズだ。「長旅よりもはるかに安いので、バーの酒がなくなるまで浴びるように飲む連中が集まりやすい」。ショーの最中にやじを飛ばしたり、バーの閉店後に喧嘩を始めたりするのは日常茶飯事だという。
元乗務員のクレア・サンダース(29)は、ベルギーからフランスまでのクルーズに乗船したところ乗客が酒を飲んで騒ぎ、「まさに悪夢だった」と語る。「飲み放題プランを最大限に活用するのは、決まってイギリス人だった」と彼女は言う。喧嘩がなく静かだと思うと酒や薬でつぶれている。船内でコカインが発見されたという報告は日常的にあり、もう誰も驚かない。
客室の外で堂々とセックスをしたり、裸になったりする人も増えているとサンダースは指摘した。オーストラリアからフィジーへの船旅では、船上結婚式をしたカップルがデッキの上でセックスをしたことを理由に「次の停泊地で船を下ろされた」と彼女は言う。
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新婚の夫婦なら、情熱的になるのもまだ分かる。だが、そうでなくても客室の外ではしゃぎ回るのが好きな客は多く、最近の調査によれば、船旅経験者の10%前後が船上での「野外セックス」の経験があると回答した。
クルーズ船がまるで「水上都市」のようにどんどん大型化し、何千人もの乗客が乗船するようになる一方で、開放的な「性的快感」を求める気運が盛り上がっている。
客だけでなく、乗務員も同様だ。船上で長い時間を過ごす乗務員たちは、「よく働き、それ以上に遊べ」が信条。ある乗務員によれば、勤務は12時間シフト。乗務員だけのパーティーもあり、そこでみんな「はじける」のだという。
「月に1回、乗務員だけで盛装してパーティーをするが、そこでカップルが誕生する。イギリス人はだれかれ構わず手を出していた。みんな上級船員と寝たがった。彼らの方がいい客室を使っているからだ」
ある元乗務員によれば、既婚者でも「船上の妻/夫」をキープしているスタッフが多かったという。
「こんなことはめったにない」
ロイヤル・カリビアン・クルーズが実施した調査では、回答者1000人のうち98%が、船旅を「最もロマンチックな旅だと思う」と回答。99%がクルーズ中のアクティビティとして一番好きなのは「セックス」だと回答した。
調査の主な結果は以下のとおり。
・90%がクルーズ中に一番多いアクティビティとしてセックスを挙げた
・75%が船旅でパートナーとの絆が深まると回答
・62%が船上のセックスは最高だと回答
・52%が地上よりも船の上の方がパートナーとの関係が親密になる傾向が強いと回答
・31%が夜は冒険するのにぴったりの時間帯だと感じる
・28%がセックスは朝・昼・夜のどの時間帯でも構わない
だがトラベルエディターのリサ・ミノーは、イメージが損なわれた部分はあってもクルーズの楽しみがなくなってしまった訳ではないと指摘する。地上であれ海上であれ、パーティーとなると普段はしないような突飛な行動をとる人はいるものだと彼女は言う。
「私はこれまで20以上の船でクルーズをしてきたが、先日ブリタニカ号で起こったような場面に遭遇したことはまだ一度もない」
(翻訳:森美歩)
※8月6日号(7月30日発売)は、「ハードブレグジット:衝撃に備えよ」特集。ボリス・ジョンソンとは何者か。奇行と暴言と変な髪型で有名なこの英新首相は、どれだけ危険なのか。合意なきEU離脱の不確実性とリスク。日本企業には好機になるかもしれない。
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カルヤン・クマル