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3度のミサイル発射、北朝鮮は「安保理決議違反」ではないと主張 

ニューズウィーク日本版 2019年8月5日 17時44分

<軍事境界線で会うというパフォーマンスも含め、3度にわたって「歴史的な」会談を重ねてきたのに、金正恩が弾道ミサイル発射を繰り返すのは、和平プロセスがまたも頓挫している証拠ではないのか>

7月下旬以降、北朝鮮が3回にわたりミサイル発射を行った問題で、北朝鮮は国連安保理決議違反だとする国際社会の批判に北朝鮮が反発している。そもそも署名していないのだからそうした批判は的外れだというのだ。

2回目の発射を受けてイギリスの国連代表部は、フランスとドイツの代表部とともに「ここ数日の北朝鮮による弾道ミサイル発射に対する懸念」を表明するとともに、「国連安保理決議違反であるそうした発射を非難」した。だがその数時間後の2日、北朝鮮は3回目の発射を行うとともに声明を出した。

<参考記事>北朝鮮のミサイル発射直後、アメリカはICBMを発射していた
<参考記事>侮るなかれ、北朝鮮の「飛翔体」 新型短距離ミサイルはICBM超える脅威


国営朝鮮中央通信によれば、北朝鮮外務省の報道官は「(北朝鮮は)違法に勝手にねつ造された国連『決議』を認めたこともなければ将来的にも認めるつもりはない」との談話を発表した。

報道官は「当事者が認めてもいないそうした『決議』をでっち上げ、主権国家の主権に関わる問題についてあれこれ口出しをするのは、北朝鮮に対する侮辱、軽視、そして深刻な挑発だ」とも述べたという。

韓国国防省によれば、25日に発射されたのは移動式の短距離地対空ミサイルで最高高度は約50キロ、飛行距離は約600キロだった。31日に行われた「多連装ロケットランチャーシステム」の試験発射では、高度は30キロ、飛行距離は250キロだった。

北朝鮮のミサイル発射は何物にも縛られない

2日の発射についての情報はほとんど明らかになっていない。聨合通信によれば、韓国の統合参謀本部は「2つの短距離飛翔体」が最高高度約25キロ、マッハ7近い速度で220キロ飛んだと明らかにしたという。

2日の発射については画像も公開されていない。31日の発射については、北朝鮮の国営朝鮮中央テレビが使用された施設の映像を伝えたが部分的にモザイク加工されていた。25日の発射の様子については、5月の短距離ミサイル発射の時と同様、朝鮮中央通信が複数の写真を配信している。

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とアメリカのドナルド・トランプ大統領は昨年、歴史的な対話に動き出そうとした。その地ならしとして金は、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射試験の一時停止を表明。この約束は今も破られてはいないが、短距離ミサイルの発射を再開したことで、北朝鮮の非核化や制裁解除、朝鮮半島における永続的な平和の実現に向けた具体的な計画が決まらないまま、和平プロセスはまたも頓挫したのではとの懸念が高まっている。

2日の北朝鮮外務省の声明によれば、「北朝鮮はいかなる国ともミサイルその他の飛翔体の射程の制限に関して合意を結んではおらず、関連する国際法に縛られてもいない」という立場だ。「核実験やICBMの試験発射を停止するという北朝鮮の決断は、対話のパートナーに対する善意と配慮の結果に他ならない」とも主張した。



また外務省は「朝鮮半島の平和と安定に対する国際社会の共通する期待に配慮し、北朝鮮は最大限の忍耐をもって20カ月以上にわたり、核実験とICBMの試験発射を停止している。だが国連安保理は、韓国における軍事演習や韓国への最新鋭の攻撃兵器の搬入には目をつぶる一方で北朝鮮の通常兵器の開発に対する根拠のない中傷を行い、北朝鮮の神経を逆なでしている」と主張。「わが国の国連に対する堪忍袋の尾が切れた」とも述べた。

一方のトランプは2日のツイートで、今回のミサイル発射が重大な挑発だとの考えには与しないとの姿勢を示した。3回の発射は「シンガポールでわれわれが署名した合意の違反ではないし、そもそもわれわれが握手した際、短距離ミサイルは議論されなかった」とトランプは述べた。

またトランプは、発射が安保理決議違反である可能性は認めたものの、「金委員長は私を失望させたいとは思っていない。北朝鮮にとっては非常に多くを手にできるチャンスだ。金正恩のリーダーシップの下で国としての可能性は無限だ」とも述べた。

(翻訳:村井裕美)


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トム・オコナー

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