<好きなのに、必要なのに、SNSに疲れていないだろうか。ツイッターやフェイスブックを「居心地のよい居場所」にするには、いくつかのコツがある>
今ではネットワークづくりやコミュニケーションのツールとして、ツイッターやフェイスブック、LINEなどのSNSを全くやらない人を見つけるほうが難しい。しかし、ネットでのコミュニケーションで無理をしているというような「SNS疲れ」を感じている人もいるのではないか。
だからと言って「じゃあ、SNSをやめればいい」と簡単に言えるものでもないだろう。プライベートでも仕事でも、SNSがないと支障をきたすという人は少なくないし、多くの人にとってSNSは「居場所」の1つでもあるからだ。
生きていくためには、人間関係で悩む必要がない、居心地のよい居場所が必要だ。それはリアルな場であろうがSNSであろうが関係ない。そして、そんな居場所を確保するためのコミュニケーション方法は「インプロ」を通して学ぶことができる――。
そう主張するのが、『自分の居場所はどこにある?――SNSでもリアルでも「最高のつながり」の作り方』(CCCメディアハウス)の著者、渡辺龍太氏だ。
放送作家であり、インプロのワークショップを全国各地で開催するコミュニケーション術の「伝道師」でもある。これまでも『1秒で気のきいた一言が出るハリウッド流すごい会話術』(ダイヤモンド社)、『ウケる人、スベる人の話し方』(PHP研究所)といった本を世に送り出してきた。
インプロとは何か。渡辺氏はかつて、コミュニケーションが苦手で、人付き合いがうまくいかずに苦労していたという。だがアメリカの大学留学中に即興演劇がベースになったコミュニケーション術であるインプロを学び、コミュニケーション下手を克服。さらには引きこもりからも脱出した経験を持つ。
あなたはSNSで無理していないだろうか?
ここでは『自分の居場所はどこにある?』からSNSでの居場所づくりのコツを一部抜粋し、2回に分けて掲載する。
◇ ◇ ◇
SNSは見栄を張りやすい居場所でもあります。どこかのコミュニティに入ったり、主催したり、ネットで居場所づくりをすると、他の人がキラキラ輝いて見えると思うことが増えてくるでしょう。たとえば、SNSでフォロワーの多い人には、一目置かざるを得ない気分になりがちです。
しかし、フォロワーは戦略的に増やすことができます。知らない人をフォローし、フォロー返しをもらうやり方でフォロワーが10万人規模にまでなっている人もいます。また、最近では社会問題にもなっていますが、偽物インフルエンサーなど、フォロワーを買っている人もいます。ですから、フォロワー数で、その人の影響力を判断することはしないほうがいいですし、そもそもできません。「フォロワー=反応」ではないのです。
また、文章にも注意が必要です。大物感を出すために、「今、すごい人と、すごいプロジェクトの打ち合わせしてます」というような、投稿をする人です。誰をすごい人と認識し、何をすごいプロジェクトと定義するかは、書いた人のさじ加減です。ですから、本当にすごいかどうかは誰にもわかりません。
また、講演会に行って、終了後に質問しただけなのに、「◯◯(有名人)さんと、この前、お話ししたんですが〜」と、あたかも知り合いのような投稿をする人を見かけたことはないでしょうか。そういう人を変に尊敬して、あなたが利用されないように注意しましょう。
ちなみに、インプロでは自分の立場を高く見せるための行動を「ステイタスを高めるためのアクション」といいます。しかし、ステイタスを高めようと思えば思うほど、逆に低く見えることがあります。なぜなら、本当にすごい人はステイタスを高めるようなアクションを起こさずとも、ステイタスが高い状態を維持しているからです。つまり、そんな行動を起こすこと自体が「小物」であるという逆説です。
ネットの世界でも「ステイタスを高めようとしている」という匂いがする人は、偽物である可能性がかなり高いことを理解しておきましょう。
正義感を持ってはいけない
ネットの偽物に注意することはもちろん重要ですが、もう1つ重要なことは、正義感を持ってはいけないということです。
もし、あなたが「偽物インフルエンサー」を見つけたからといって、「この人、有名人◯◯さんの友人というようなコメントを書いてますが、講演に行って質問したことを大きく書いているだけです。注意したほうがよいです!」と正義感を振りかざしたところで、あなたはその「偽物」よりもさらに厄介な人物として認識されるのがオチです。これは「自分が正しい」として、「ステイタスを高めるためのアクション」をやりすぎたことによって、逆に低く見られてしまう例の1つです。
リアルな世界では正義感を強くもって糾弾することに、「なるほど」と周りの人がリアクションし、場合によっては賛同してくれることもあります。しかし、ネットはそれが文字に残ります。書いた本人は正義感から訴えていても、書き方によっては単なる誹謗中傷という印象を周囲に与えることもあるのです。実際に事実を指摘しただけでも、その人の名誉を毀損(きそん)する内容であれば、法的にも罰せられる可能性があるので要注意です。
ですから、ネット上の変な人とは距離を取る。これが鉄則です。妙な正義感を振りかざしたことでかえって恥をかき、場合によっては自分が法律に反したことで捕まったり、お金を失う可能性もあるので慎重にならなくてはいけません。
(中略)
無駄に正義感をもたないことです。自分の考えを過剰に表明すると、自分の考えとは違う人を拒絶することになります。リアルでは文脈の中で柔らかく主張できることも、SNSでは単に糾弾していたり、罵っているようにしか見えないことがあります。そうなると「気難しい人」と周りに思われてしまい、居場所をつくる上ではまったくメリットはありません。
※第2回:人がSNS中毒になる理由は「反応の遅さ」と「ギャンブル的要素」
『自分の居場所はどこにある?――
SNSでもリアルでも「最高のつながり」の作り方』
渡辺龍太 著
CCCメディアハウス
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
今ではネットワークづくりやコミュニケーションのツールとして、ツイッターやフェイスブック、LINEなどのSNSを全くやらない人を見つけるほうが難しい。しかし、ネットでのコミュニケーションで無理をしているというような「SNS疲れ」を感じている人もいるのではないか。
だからと言って「じゃあ、SNSをやめればいい」と簡単に言えるものでもないだろう。プライベートでも仕事でも、SNSがないと支障をきたすという人は少なくないし、多くの人にとってSNSは「居場所」の1つでもあるからだ。
生きていくためには、人間関係で悩む必要がない、居心地のよい居場所が必要だ。それはリアルな場であろうがSNSであろうが関係ない。そして、そんな居場所を確保するためのコミュニケーション方法は「インプロ」を通して学ぶことができる――。
そう主張するのが、『自分の居場所はどこにある?――SNSでもリアルでも「最高のつながり」の作り方』(CCCメディアハウス)の著者、渡辺龍太氏だ。
放送作家であり、インプロのワークショップを全国各地で開催するコミュニケーション術の「伝道師」でもある。これまでも『1秒で気のきいた一言が出るハリウッド流すごい会話術』(ダイヤモンド社)、『ウケる人、スベる人の話し方』(PHP研究所)といった本を世に送り出してきた。
インプロとは何か。渡辺氏はかつて、コミュニケーションが苦手で、人付き合いがうまくいかずに苦労していたという。だがアメリカの大学留学中に即興演劇がベースになったコミュニケーション術であるインプロを学び、コミュニケーション下手を克服。さらには引きこもりからも脱出した経験を持つ。
あなたはSNSで無理していないだろうか?
ここでは『自分の居場所はどこにある?』からSNSでの居場所づくりのコツを一部抜粋し、2回に分けて掲載する。
◇ ◇ ◇
SNSは見栄を張りやすい居場所でもあります。どこかのコミュニティに入ったり、主催したり、ネットで居場所づくりをすると、他の人がキラキラ輝いて見えると思うことが増えてくるでしょう。たとえば、SNSでフォロワーの多い人には、一目置かざるを得ない気分になりがちです。
しかし、フォロワーは戦略的に増やすことができます。知らない人をフォローし、フォロー返しをもらうやり方でフォロワーが10万人規模にまでなっている人もいます。また、最近では社会問題にもなっていますが、偽物インフルエンサーなど、フォロワーを買っている人もいます。ですから、フォロワー数で、その人の影響力を判断することはしないほうがいいですし、そもそもできません。「フォロワー=反応」ではないのです。
また、文章にも注意が必要です。大物感を出すために、「今、すごい人と、すごいプロジェクトの打ち合わせしてます」というような、投稿をする人です。誰をすごい人と認識し、何をすごいプロジェクトと定義するかは、書いた人のさじ加減です。ですから、本当にすごいかどうかは誰にもわかりません。
また、講演会に行って、終了後に質問しただけなのに、「◯◯(有名人)さんと、この前、お話ししたんですが〜」と、あたかも知り合いのような投稿をする人を見かけたことはないでしょうか。そういう人を変に尊敬して、あなたが利用されないように注意しましょう。
ちなみに、インプロでは自分の立場を高く見せるための行動を「ステイタスを高めるためのアクション」といいます。しかし、ステイタスを高めようと思えば思うほど、逆に低く見えることがあります。なぜなら、本当にすごい人はステイタスを高めるようなアクションを起こさずとも、ステイタスが高い状態を維持しているからです。つまり、そんな行動を起こすこと自体が「小物」であるという逆説です。
ネットの世界でも「ステイタスを高めようとしている」という匂いがする人は、偽物である可能性がかなり高いことを理解しておきましょう。
正義感を持ってはいけない
ネットの偽物に注意することはもちろん重要ですが、もう1つ重要なことは、正義感を持ってはいけないということです。
もし、あなたが「偽物インフルエンサー」を見つけたからといって、「この人、有名人◯◯さんの友人というようなコメントを書いてますが、講演に行って質問したことを大きく書いているだけです。注意したほうがよいです!」と正義感を振りかざしたところで、あなたはその「偽物」よりもさらに厄介な人物として認識されるのがオチです。これは「自分が正しい」として、「ステイタスを高めるためのアクション」をやりすぎたことによって、逆に低く見られてしまう例の1つです。
リアルな世界では正義感を強くもって糾弾することに、「なるほど」と周りの人がリアクションし、場合によっては賛同してくれることもあります。しかし、ネットはそれが文字に残ります。書いた本人は正義感から訴えていても、書き方によっては単なる誹謗中傷という印象を周囲に与えることもあるのです。実際に事実を指摘しただけでも、その人の名誉を毀損(きそん)する内容であれば、法的にも罰せられる可能性があるので要注意です。
ですから、ネット上の変な人とは距離を取る。これが鉄則です。妙な正義感を振りかざしたことでかえって恥をかき、場合によっては自分が法律に反したことで捕まったり、お金を失う可能性もあるので慎重にならなくてはいけません。
(中略)
無駄に正義感をもたないことです。自分の考えを過剰に表明すると、自分の考えとは違う人を拒絶することになります。リアルでは文脈の中で柔らかく主張できることも、SNSでは単に糾弾していたり、罵っているようにしか見えないことがあります。そうなると「気難しい人」と周りに思われてしまい、居場所をつくる上ではまったくメリットはありません。
※第2回:人がSNS中毒になる理由は「反応の遅さ」と「ギャンブル的要素」
『自分の居場所はどこにある?――
SNSでもリアルでも「最高のつながり」の作り方』
渡辺龍太 著
CCCメディアハウス
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部