Infoseek 楽天

日韓、香港、米中......あなたも世界の動きと無縁ではない。トランプの嘘とも

ニューズウィーク日本版 2019年8月16日 11時10分

<遠い世界の出来事に思えた「国際情勢」が、あなたの夏の旅行にまで影響する――そんな時代になった。そうは言っても、海外のニュースなんて難しくてよく分からないという人は、まずは登場人物を知ることから始めればいい>

あいちトリエンナーレをめぐる騒動や自民党議員・小泉進次郎の結婚、NHKから国民を守る党の「場外戦」など、さまざまなニュースが行き交うこの夏、2つの国際ニュースが注目を集め続けている。日韓の対立と香港のデモだ。ネットでもテレビでも、連日のようにトップニュースとなっている。

日韓関係と香港情勢、それに昨年から継続する米中貿易戦争もそうだが、これらはシンプルな現実を日本人に突き付けている。それは、日本人の生活も国際情勢と無縁ではいられないという現実だ。現に、報道によれば、行楽シーズンにもかかわらず、日本から韓国・香港への旅行にキャンセルが相次いだという。実際、香港では空港閉鎖まで起こっているのだ。

当然だと考える人もいるだろうが、「国際情勢なんて難しくて、自分にはよく分からない」と思っている人は珍しくない。だが、プライベートでも仕事でも、不利益を被る可能性だってあるのに、「難しい」で敬遠してしまっていいのだろうか。

確かに、国内のニュースに比べれば取っつきにくさはあるかもしれない。しかし、テレビのコメンテーターとしても活躍するお笑い芸人のパックン(パトリック・ハーラン)によれば、国際情勢を理解するにはまず「登場人物」から始めればいい。

現在発売中の本誌「パックンのお笑い国際情勢入門」(8月13&20日号)特集で、パックンは「日本ではなぜ、お笑い芸人の政治的発言が問題視されるのか」を研究し、さらにはパックンならではの「笑える」国際情勢解説に挑んだ。

「笑い」というフィルターを通して国際情勢の解説を書くに際し、パックンが焦点を当てたのが「人物」だ。特集に収録された「パックン流危険人物図鑑」の導入部で、パックンはこう書く。

コメディーは、「人物」「場面」「展開」という3つのパートからなる。というわけで、国際情勢を笑おうとするなら、まずは登場人物を知ることから始めよう。ここに載っている大物を把握しておけば、ニュースで見る彼らが置かれた場面も、彼らがもたらす展開も笑えるようになるかもしれない。

これは何も、コメディーに限った話ではない。政治を動かすのは、結局は「人」。例えば昨今の日韓関係悪化について、本誌は7月30日号で「ファクトチェック文在寅」という特集を組み、「反日大統領」文在寅(ムン・ジェイン)の思考回路に切り込んだ。

さて、「パックン流危険人物図鑑」だが、取り上げたのは以下の6人である(ほかに「番外編」として、米民主党の有力な次期大統領選候補6人も紹介している)。

・ウラジーミル・プーチン(ロシア大統領、66歳)
・金正恩(北朝鮮・朝鮮労働党委員長、35歳)
・ドナルド・トランプ(アメリカ大統領、73歳)
・習近平(中国国家主席、66歳)
・ボリス・ジョンソン(イギリス首相、55歳)
・安倍晋三(日本国首相、64歳)



トランプの不適切な演説のせいで、ボーイスカウトが謝罪⁉

なぜ、この6人なのか。パックンは説明する。

紹介するメンバーをどうやって選んだかは気になるはず。世の中に山ほど存在する危険人物の中からなぜこの6人を「抜擢」したのか。(中略)それは、この不名誉な殿堂入りを果たすには、指導者の「性格」だけでなく、経済規模や軍事力などの「国力」、その国における本人の「権力」、そして地政学的な「日本への影響」もそろわないといけないからだ。方程式に直すとこうなる。性格の危険性 × 国力 × 本人の権力 × 日本への影響 = 危険度適当な審査基準に思われるかもしれないが、本当は合理的かつ科学的に見せ掛けた適当な審査基準だ。でも少なくとも、これで安倍晋三さんも入っていることを説明できる。実際にそこまで危険じゃなくても、日本への影響は絶対的。あと、入れないとつまらないでしょ。

この方程式による「危険度」で最高点を記録したのは、トランプ(危険度は4860)。パックンいわく、「キング・オブ・危険人物」である。

ロシアの米大統領選介入とトランプの司法妨害――いわゆる「ロシア疑惑」「ロシアゲート」――については日本でも多く報じられてきたが、複雑過ぎてもう何がなんだか分からないし、結局どうなったんだっけ、という人が多いかもしれない。

ロシア疑惑を含むトランプの危険性について、パックンは「キング・オブ・危険人物のいいところを紹介しよう」という記事で、こんなふうに痛烈に解説している。

(ロバート・ムラー特別検察官の)2巻の448ページにわたる超大作の報告書によれば、起訴されたのは37人。有罪判決を食らったり、罪状を認めたりしたトランプの側近は5人。押収された資産は約27億円。しかも、これらは一部にすぎず、捜査自体はまだ進行中! 報告書の最後に継続する裁判が列挙されているが、その数は黒塗りされた12も含めて14にも上る。全く終わっていない。当然だ。ラスボスがまだ残っているから。ムラー捜査から視野を広げると、脱税、収賄、詐欺、慈善団体基金の不正使用、国家機密漏洩、選挙法違反、性的暴行、偽証教唆、銀行詐欺、マネーロンダリング(資金洗浄)、外国政府からの報酬授受など違法行為の疑惑だけでも枚挙にいとまがない。さらに規範破り、常識破り、不道徳な言動を足すと、とんでもない件数に。主賓である大統領の不適切な演説のせいで、イベント主催のボーイスカウトが謝罪したことってある?

ここから、身体障害者や子供、少数派にも「優しい」――などと、皮肉たっぷりにトランプの「いいところ」を紹介していくパックン。この記事1本だけで、トランプについてもアメリカ政治についても十分な基礎知識(と、友人知人に語るときに使える小ネタ)を得られるだろう。

こんな「人物」が始めたのが、日本も大きな影響を被ってきた米中貿易戦争なのだ。パックンはこうも言う――「記録的な大嘘つき」のトランプだから、TPP(環太平洋経済連携協定)やイラン核合意などと「日米安保条約も同じ扱いにならない保証はある?」。

あなたはもう、自分には関係ないから知る必要はない、なんて言えないだろう。

【関連記事】「日本のお笑いって変なの?」をパックンが外国人3人と激論しました
【関連記事】日本人は「政治に興味ない」「専門的に生きている」──外国人のお笑い座談会より
【関連記事】ウーマン村本×パックン「原発や基地をやるきっかけは堀潤さん」
【関連記事】ウーマン村本×パックン「カウンターパンチは全部ありだと思う」
【関連記事】「日本にも政治風刺はある、強かったのは太平洋戦争のとき」早坂隆×パックン
【関連記事】「下ネタは世界共通。男たちは同じオチで、同じ顔で笑う」早坂隆×パックン


※8月13&20日号(8月6日発売)は、「パックンのお笑い国際情勢入門」特集。お笑い芸人の政治的発言が問題視される日本。なぜダメなのか、不健全じゃないのか。ハーバード大卒のお笑い芸人、パックンがお笑い文化をマジメに研究! 日本人が知らなかった政治の見方をお届けします。目からウロコ、鼻からミルクの「危険人物図鑑」や、在日外国人4人による「世界のお笑い研究」座談会も。どうぞお楽しみください。



ニューズウィーク日本版編集部

この記事の関連ニュース