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「グリーンランド売らないなら行かない」トランプ訪問中止の非礼にデンマークで驚きと怒り

ニューズウィーク日本版 2019年8月22日 17時10分

<グリーンランド購入話を「ばかげている」と中道左派の女性首相に一蹴されてへそを曲げたトランプに、デンマーク政界はあきれ顔>

ドナルド・トランプ米大統領が9月2日に予定していたデンマーク訪問をキャンセルし、これがデンマーク王室に対する侮辱だと怒りの声が上がっている。

トランプはデンマークの女王マルグレーテ2世の招待を受けて、同国を訪問することになっていた。だが、トランプがデンマークの自治領である世界最大の島グリーンランドの購入に関心を示していることに対し、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相が「グリーンランドは売り物ではない」と釘を刺すと、すぐさま訪問中止を発表した。

事の発端は、ウォールストリート・ジャーナルが先週、トランプがグリーンランドの購入を示唆したと報道したこと。フレデリクセン首相はこの話を「ばかげている」と一蹴した。

トランプは20日、「デンマークは素晴らしい人たちが住むとても特別な国だ」とツイート。「だがメッテ・フレデリクセン首相の発言によると、彼女はグリーンランドの売買について話し合うことに関心がないようなので、2週間後に予定されていた訪問は延期する」

デンマーク王室はノーコメント

トランプはさらに皮肉を込めて、「首相のストレートな発言のおかげで、アメリカとデンマーク双方が膨大な費用と労力を無駄にせずに済んだ」と、ツイートを続けた。「その点では首相に感謝する。いつかまた訪問の予定を組むのを楽しみにしている」

トランプのツイートでは「延期」という表現が使われたものの、ホワイトハウスは訪問を中止したと発表し、BBCの報道によれば、デンマーク王室も中止と受け止めている。デンマーク王室の広報責任者レーネ・バレビーは「驚きだった」と認めつつ、「この件についてはこれ以上申し上げることはない」と報道陣の質問を突っぱねた。

デンマークとグリーンランド自治政府の政治家は、突然の訪問中止と、トランプが本気で購入を考えていたことに呆れ返り、怒りを露わにしている。

野党・保守党のラスムス・ヤルロフ議員はこうツイートした。「デンマーク人として(また、1人の保守主義者として)、これは信じがたいことだ。トランプは何の理由もなく、わが国の一部である自治領を売り物とみなし、誰もが準備していた訪問をぶしつけにもキャンセルした。アメリカの一部も売り物なのか。アラスカを売るのか? 頼むから、もう少し敬意を払ってほしい」



デンマーク国民党の共同創設者で、デンマーク国会の議長も務めたピア・グラスゴーは、トランプの訪問中止は、デンマーク王室への「敬意を完全に欠いた」決定だとツイートした。

「トランプ大統領は、私たちがグリーンランドの売却を望んでいないことを理由に、デンマーク訪問中止をツイッターで発表した......これはデンマークの人々と、彼を招待した女王に対する礼節を欠いた振る舞いだ」

1980年代に保守派政権で外相を務めた老政治家ウフェ・エレマンヤンセンも、「わが国の女王に対する侮辱」だとトランプの決定を非難したと、デンマーク紙ユランズ・ポステンが伝えた。

グリーンランド自治政府のキム・キールセン首相は以前に、「グリーランドは売り物ではないが、アメリカを含め他の国々との貿易と協調には、喜んで話し合いに応じる」と述べている。

デンマーク政府は売買話をすぐさま一蹴したが、グリーンランドにおける米軍のプレゼンスをめぐっては、米政府との連携を密にするため協議を行うつもりだった。

大西洋と北極海の間に位置するグリーンランドは戦略的に重要な島だ。島の西北部にある米空軍のチューレ基地からは、北米に向かう大陸間弾道ミサイル(ICBM)を早期に探知できる。

今後、米軍のグリーンランドにおけるプレゼンスの拡大は「避けられない」と、フレデリクセン首相は語っている。

「(地球温暖化で氷の融解が進む)北極海ではここ数年、幸いにも平和的な開発が行われている。あらゆる理由から、世界は今後もこの動きを支持すべきだ。しかし一部の国々が北極海に関心を示し始め、安全保障面に影響がおよんでいる。これに対しては断固たる対応が必要だ」と、フレデリクセンは地元放送局TV2のニュース番組で語った。


ブレンダン・コール

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