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プーチンへの擦り寄りをロシア国営放送にまで嘲笑されたトランプ

ニューズウィーク日本版 2019年8月30日 13時40分

<プーチンへの愛の歌をトランプが熱唱する合成動画を流して、G7での「ごますり」を紹介>

ドナルド・トランプ米大統領は、8月24~26日にフランスのビアリッツで開催されたG7サミット(主要7カ国首脳会議)で、次回サミットにロシアを復帰させたいとの考えを表明。今週放送されたロシアの報道番組は、こうしたウラジーミル・プーチン大統領にすりよるトランプを笑いのネタにした。

トランプは24日に開かれたサミットの夕食会でプーチンの会議への復帰に言及したが、ほかの国の首脳たちの反応は冷ややかなものだった。さらにトランプは26日の会見で、2020年に開催される次回のG7サミットにロシアを招待するつもりだと発言。「ロシアは、テントの外に出しておくよりも中に入れた方がいいと思うからだ」とその理由を語った。

ロシアの国営放送局、第一チャンネルの報道番組「60ミニッツ」は、ビアリッツでのサミットの詳細を伝えると共にトランプの心情についても取り上げ、ピアノを弾くプーチンの映像をベースにした合成動画を流した。

クリミア併合は「オバマの責任」と言及

動画はトランプの演説をうまくつなぎ合わせて、まるでカナダ出身のシンガー、ショーン・メンデスとキューバ生まれのシンガー・カミラ・カベロのコラボ曲「セニョリータ」を歌っているように編集されたもの。プーチンのピアノに合わせてトランプが「歌い」、「あなたが私をセニョリータ(お嬢さん)と呼んでくれるのが好き/あなたなんて必要ないふりができればいいのに」などの歌詞が字幕で表示される。スタジオのゲストたちは薄ら笑いを浮かべてそれを見ている。歌詞には、トランプが次回サミットの会場として提案している「マイアミ」も出てくる。

政府系メディアの同番組でのこの表現は、プーチンを口説こうとするトランプの姿勢が、ロシアでは「ごますり」と解釈されていることを示している。

番組に出演したパネリストたちは、トランプの会見映像を流しながら、その内容について議論した。トランプはこの会見の中で、ロシアが当時の「G8」から除外される原因となった、ロシアによるクリミア併合について、バラク・オバマ前米大統領にその責任があるという持論を述べた。

「オバマ大統領が(プーチン大統領に)出し抜かれたのだ。クリミアは、オバマ政権時代にロシアに併合された。あれはいいことではなかった。正しくやっていれば、阻止できたはずだ」とトランプは語った。



番組の司会者はこの映像を見ると、「素晴らしい。本当に素晴らしい」と言って笑い、ロシア政府によるとまだ次回サミットへの招待状は送られてきていないそうだ、と語った。

だがスタジオのゲストたちは、トランプがクリミアについて「併合された」と評したことには不満だったようだ。クリミアは、住民投票で過半数がロシア編入を支持したことを受けて2014年にロシアに「戻った」というのが、ロシア政府(ひいては同番組)の立場だ。アメリカ、EU、日本などはこの住民投票の結果を認めていない。

それでもゲストの1人は、トランプがクリミアの問題について「たくみにオバマの評判を傷つけ」、事実上クリミア併合をオバマ政権の責任としたことを、皮肉を交えて称賛した。

一方、米ウェブメディアのポリティコによると、米民主党はトランプに対して、プーチンをG7サミットに復帰させないよう求めている。上院のチャック・シューマー院内総務をはじめ民主党議員たちは、「いかなる状況下でも」プーチンをG7に復帰させるべきではないと主張している。

(翻訳:森美歩)


ブレンダン・コール

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