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アフガン和平でも「壊し屋」発揮したトランプという人災

ニューズウィーク日本版 2019年9月10日 15時30分

<アメリカの外交上重要な和平交渉よりもミスコンやゴルフに夢中で、繊細な外交交渉のやり方をわきまえていない、と猛批判>

ドナルド・トランプ米大統領は9月7日、アフガニスタンの反政府勢力タリバンと予定の和平交渉を中止したとツイッターで表明。タリバン幹部やアフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領をアメリカに招いて行う予定だった極秘会談もキャンセルしたことを明らかにした。

トランプが和平交渉を中止する直前まで、アメリカとタリバンはアフガニスタン駐留の米兵5400人を撤退させることで大筋合意に達した、と言われていた。タリバン指導部は怒り、米軍が撤退しない限り報復を続けると言った。

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米ニュース専門局MSNBCの司会者ジョー・スカーボローはトランプの場当たり的な対応を強く批判し、トランプは外交政策より美人コンテストやゴルフトーナメントのことばかり考えている、と言った。

元共和党の下院議員で現在は無党派だというスカーボロ―は、9日の朝の番組「モーニング・ジョー」の中で次のように語った。

「トランプは、アメリカの外交にとって今最も重要かもしれない会談を計画したり、成功させたりするよりも、美人コンテストやゴルフのトーナメントを成功させるためにはるかに多くの労力を注ぎ込んでいる。真面目な話だ」

トランプは、ミス・アメリカ(上)やミス・ユニバースのオーナーでもある


番組にゲスト出演していたCIA元長官のジョン・ブレナンも、これに賛同し、こう語った。「この政権は、意思決定にはプロセスを踏む必要があるということをまったく考えていない」

「どんな奴らだ」と怒り心頭

トランプは7日のツイッターで、米大統領の別荘であるキャンプデービッドにタリバン幹部とアフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領を招いて極秘会談を行う予定になっていたことを明かし、しかし5日にアフガニスタンの首都カブールで起きた爆弾テロ(米兵1人を含む12人が死亡)にタリバンが関与していたので招待を取り消した、と言った(この時期にタリバンによるテロが起こったのが本当だとすれば、タリバン指導部と実行部隊の間に意思疎通ができていない可能性も指摘されている)。

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「(爆弾テロを受けて)すぐに会談を取りやめ、和平交渉を中止した。交渉で有利に立つためにこんなに多くの人を殺すなんて、一体どんな連中なのか」と、タリバンを批判。「彼らはあと何十年戦い続けるつもりなのか」

アフガニスタンでは、2001年の9.11テロの報復で米軍が侵攻して以来、18年間にわたって戦争が続いている。この戦いで犠牲になった米兵は2300人以上にのぼる。



トランプのツイートを受け、タリバンの幹部(匿名)はNBCニュースに対し、トランプの言い分は不正確だと言った。トランプのツイートよりも前に、極秘会談への招待を断ったのはタリバンのほうだと主張した。

「我々は(アメリカのアフガニスタン和平担当特別代表である)ザルメイ・ハリルザドに何度も、アシュラフ・ガニと彼が率いる政権を正当な政府と認めていないと伝えてきた。だから今回、彼らとの直接協議を断った」と、カタールを拠点にしているタリバンの幹部はNBCに語った。それが「大統領を怒らせ、それが和平協議の中止を招いたのだろう」とこの人物は語った。

マイク・ポンペオ米国務長官は8日、テレビ番組のインタビューの中で、和平交渉は当面の間、中止すると語った。

「タリバンが行儀よくしないのなら、トランプ大統領は圧力をかけ続ける。アメリカは、アフガニスタンで懸命に戦っている治安部隊への支援を続ける」と、ポンペオはCNNの番組「ステート・オブ・ザ・ユニオン」のインタビューに対して語った。

トランプがタリバンの幹部を招いたことについては、とりわけそのタイミングが2001年に同時テロが起きた9月11日にあまりに近いことから、多くの批判の声が上がっている。アメリカは同時テロの後、テロの首謀者であるアルカイダとその指導者ウサマ・ビンラディンをかくまった当時のタリバン政権を妥当すべく、アフガニスタンに侵攻した。

(翻訳:森美歩)



トランプが所有するミス・アメリカ



ジェイソン・レモン

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