<3本指を立てた格好が「WP(ホワイトパワー)」の文字に見えるからと白人至上主義者の間で人気になったというが、そのうちピースサインも使えなくなる?>
反差別を掲げるユダヤ系団体、名誉毀損防止連盟(ADL)は、親指と人差し指で輪をつくる「OK」のサインを「ヘイト(憎悪)のシンボル」としてデータベースに追加した。
ほかにも、動画と差別的なスピーチを組み合わせたミーム「ムーンマン」(2ページ目に動画)や、2015年にサウスカロライナ州の教会で乱射事件を起こした白人至上主義者ディラン・ルーフ死刑囚のボウルカット(おかっぱ頭)(2ページ目に写真)などが同データベースに追加登録された。
このデータベース「ヘイト・オン・ディスプレイ」には、極右や白人至上主義者が使う画像やスローガン、シンボルが登録されており、ADLは今回、新たに36のミームを追加したと発表した。
<参考記事>銃乱射を同性愛のせいにするアメリカの懲りない白人至上主義者
「OKサイン」がヘイトのシンボルとなったきっかけは、ネット上の匿名掲示板「4Chan」でオルタナ右翼たちが悪ノリで始めたキャンペーンだった。
彼らは2017年に同掲示板で「オペレーションO-KKK」を立ち上げた。リベラル派やメディアに、ドナルド・トランプ大統領もよく演説中に使うこのOKサインが白人至上主義の「秘密の合図」だと思い込ませたのだ。親指と人差し指で輪をつくって残り3本の指を立てると「ホワイト・パワー」を意味する「WP」の文字に見えるから、白人至上主義者を自称するジェスチャーだという訳だ。
高校の卒業アルバムが台無し
ADLが指摘したように、このでっち上げが大々的に広まり、遂には白人至上主義への支持表明のジェスチャーとして使われ始めた。ニュージーランドのクライストチャーチにあるモスクで銃を乱射し、51人を殺した罪に問われているオーストラリア人のブレントン・タラント被告は、初めて出廷した際に笑顔でOKサインのジェスチャーをしてみせた。
5月には、シカゴのオークパーク・アンド・リバーフォレスト高校が、2018年度の卒業アルバムを作り直すと発表した。生徒たちがOKサインのポーズを取って写っている写真が複数含まれていたというのが理由だ。
同高校の責任者であるジョイリン・プルイットアダムズはこの一件について、生徒たちが白人至上主義に同調する意思を示したものだと批判するつもりはないと説明。ただ、このジェスチャーが将来、極右と関連づけられる可能性を懸念したと述べた。OKサインの写真をアルバムにすることで、生徒たちの将来に悪影響が及び、「大学や雇用主などから疑われたり、罰せられたりする」ことになる可能性があると彼女は語った。
<参考記事>黒人差別の「ブラックフェイス」、なぜ今も米国で政治に影響与えるタブーであり続けるのか
ADLのリストに追加されたそのほかのミームには、2015年にサウスカロライナ州チャールストンにある黒人教会で銃を乱射し、9人を殺害したディラン・ルーフのボウルカット(おかっぱ頭)が含まれている。彼と同じ髪型にすることで、彼への支持や尊敬の念を表明する人々がいるためだ。
2017年8月にバージニア州シャーロッツビルで開かれた極右集会「ユナイト・ザ・ライト」に参加した、白人至上主義者のクリストファー・キャントウェルは、極右ソーシャルネットワークのGabに、ルーフと同じ髪型に合成加工した自分の画像を投稿していた。
キャントウェルは、同SNS上で公然とルーフを称賛する白人至上主義者の集まり「ボウル・ギャング」や、ルーフの支持者が不定期に放送しているポッドキャストの番組「ボウルキャスト」などともつながりがあった。
「危険信号として役立てて欲しい」
ユダヤ人男性を差別的に描いた風刺漫画「ハッピー・マーシャント」も、ADLのデータベースに追加された。ADLはこの風刺画について、「白人至上主義者の間で群を抜いて人気がある反ユダヤ的なミーム」だと説明している。
かつてマクドナルドの広告に登場した人種差別主義者のラッパーを彷彿とさせる「ムーンマン」も、ADLのデータベースに追加された。「ムーンマン」は、このラッパーの動画と人種差別的なスピーチを組み合わせたミームだ。
ADL過激主義センターのマーク・ピットキャベジ上級研究員は、「これらはヘイト(憎悪)を表現する新たなシンボルだ」と語った。「一部のシンボルは一時的な流行で終わるが、独り歩きをしてオンライン・トロール(荒らし)のツールになるシンボルもある。ADLではそのように影響力を持ち続けるシンボルや、オンラインから現実世界へと広まったシンボルに特に注目している」
ADLは2000年以降、独自のデータベースを作成して発表している。過激主義や反ユダヤ主義に対する人々の関心を高めることが、その目的だ。
「過激主義者たちは、定期的に新しいシンボルやミーム、スローガンをつくって、自分たちの憎悪に満ちた感情を表現している」と、ADLのジョナサン・グリーンブラットCEOは言う。
「コミュニティーや学校が危険信号として役立てることができるように、司法当局や一般市民に、こうしたシンボルの意味をきちんと知らせる必要があると考えている」
それにしても、OKサインがネオナチへの支持を示すサインになってしまうとは危ないことこの上ない。既存のシンボルへの浸食はいつ止まるのか。
どんどん増える白人至上主義のシンボル
(翻訳:森美歩)
※10月1日号(9月25日発売)は、「2020 サバイバル日本戦略」特集。トランプ、プーチン、習近平、文在寅、金正恩......。世界は悪意と謀略だらけ。「カモネギ」日本が、仁義なき国際社会を生き抜くために知っておくべき7つのトリセツを提案する国際情勢特集です。河東哲夫(外交アナリスト)、シーラ・スミス(米外交問題評議会・日本研究員)、阿南友亮(東北大学法学研究科教授)、宮家邦彦(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)らが寄稿。
どんどん増える白人至上主義のシンボル
イワン・パーマー
反差別を掲げるユダヤ系団体、名誉毀損防止連盟(ADL)は、親指と人差し指で輪をつくる「OK」のサインを「ヘイト(憎悪)のシンボル」としてデータベースに追加した。
ほかにも、動画と差別的なスピーチを組み合わせたミーム「ムーンマン」(2ページ目に動画)や、2015年にサウスカロライナ州の教会で乱射事件を起こした白人至上主義者ディラン・ルーフ死刑囚のボウルカット(おかっぱ頭)(2ページ目に写真)などが同データベースに追加登録された。
このデータベース「ヘイト・オン・ディスプレイ」には、極右や白人至上主義者が使う画像やスローガン、シンボルが登録されており、ADLは今回、新たに36のミームを追加したと発表した。
<参考記事>銃乱射を同性愛のせいにするアメリカの懲りない白人至上主義者
「OKサイン」がヘイトのシンボルとなったきっかけは、ネット上の匿名掲示板「4Chan」でオルタナ右翼たちが悪ノリで始めたキャンペーンだった。
彼らは2017年に同掲示板で「オペレーションO-KKK」を立ち上げた。リベラル派やメディアに、ドナルド・トランプ大統領もよく演説中に使うこのOKサインが白人至上主義の「秘密の合図」だと思い込ませたのだ。親指と人差し指で輪をつくって残り3本の指を立てると「ホワイト・パワー」を意味する「WP」の文字に見えるから、白人至上主義者を自称するジェスチャーだという訳だ。
高校の卒業アルバムが台無し
ADLが指摘したように、このでっち上げが大々的に広まり、遂には白人至上主義への支持表明のジェスチャーとして使われ始めた。ニュージーランドのクライストチャーチにあるモスクで銃を乱射し、51人を殺した罪に問われているオーストラリア人のブレントン・タラント被告は、初めて出廷した際に笑顔でOKサインのジェスチャーをしてみせた。
5月には、シカゴのオークパーク・アンド・リバーフォレスト高校が、2018年度の卒業アルバムを作り直すと発表した。生徒たちがOKサインのポーズを取って写っている写真が複数含まれていたというのが理由だ。
同高校の責任者であるジョイリン・プルイットアダムズはこの一件について、生徒たちが白人至上主義に同調する意思を示したものだと批判するつもりはないと説明。ただ、このジェスチャーが将来、極右と関連づけられる可能性を懸念したと述べた。OKサインの写真をアルバムにすることで、生徒たちの将来に悪影響が及び、「大学や雇用主などから疑われたり、罰せられたりする」ことになる可能性があると彼女は語った。
<参考記事>黒人差別の「ブラックフェイス」、なぜ今も米国で政治に影響与えるタブーであり続けるのか
ADLのリストに追加されたそのほかのミームには、2015年にサウスカロライナ州チャールストンにある黒人教会で銃を乱射し、9人を殺害したディラン・ルーフのボウルカット(おかっぱ頭)が含まれている。彼と同じ髪型にすることで、彼への支持や尊敬の念を表明する人々がいるためだ。
2017年8月にバージニア州シャーロッツビルで開かれた極右集会「ユナイト・ザ・ライト」に参加した、白人至上主義者のクリストファー・キャントウェルは、極右ソーシャルネットワークのGabに、ルーフと同じ髪型に合成加工した自分の画像を投稿していた。
キャントウェルは、同SNS上で公然とルーフを称賛する白人至上主義者の集まり「ボウル・ギャング」や、ルーフの支持者が不定期に放送しているポッドキャストの番組「ボウルキャスト」などともつながりがあった。
「危険信号として役立てて欲しい」
ユダヤ人男性を差別的に描いた風刺漫画「ハッピー・マーシャント」も、ADLのデータベースに追加された。ADLはこの風刺画について、「白人至上主義者の間で群を抜いて人気がある反ユダヤ的なミーム」だと説明している。
かつてマクドナルドの広告に登場した人種差別主義者のラッパーを彷彿とさせる「ムーンマン」も、ADLのデータベースに追加された。「ムーンマン」は、このラッパーの動画と人種差別的なスピーチを組み合わせたミームだ。
ADL過激主義センターのマーク・ピットキャベジ上級研究員は、「これらはヘイト(憎悪)を表現する新たなシンボルだ」と語った。「一部のシンボルは一時的な流行で終わるが、独り歩きをしてオンライン・トロール(荒らし)のツールになるシンボルもある。ADLではそのように影響力を持ち続けるシンボルや、オンラインから現実世界へと広まったシンボルに特に注目している」
ADLは2000年以降、独自のデータベースを作成して発表している。過激主義や反ユダヤ主義に対する人々の関心を高めることが、その目的だ。
「過激主義者たちは、定期的に新しいシンボルやミーム、スローガンをつくって、自分たちの憎悪に満ちた感情を表現している」と、ADLのジョナサン・グリーンブラットCEOは言う。
「コミュニティーや学校が危険信号として役立てることができるように、司法当局や一般市民に、こうしたシンボルの意味をきちんと知らせる必要があると考えている」
それにしても、OKサインがネオナチへの支持を示すサインになってしまうとは危ないことこの上ない。既存のシンボルへの浸食はいつ止まるのか。
どんどん増える白人至上主義のシンボル
(翻訳:森美歩)
※10月1日号(9月25日発売)は、「2020 サバイバル日本戦略」特集。トランプ、プーチン、習近平、文在寅、金正恩......。世界は悪意と謀略だらけ。「カモネギ」日本が、仁義なき国際社会を生き抜くために知っておくべき7つのトリセツを提案する国際情勢特集です。河東哲夫(外交アナリスト)、シーラ・スミス(米外交問題評議会・日本研究員)、阿南友亮(東北大学法学研究科教授)、宮家邦彦(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)らが寄稿。
どんどん増える白人至上主義のシンボル
イワン・パーマー