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建国70周年の中国が披露したアメリカを脅かす最新兵器

ニューズウィーク日本版 2019年10月2日 18時30分

<中国は記念パレードで、アメリカ本土到達可能なICBMや攻撃力を備えたステルスドローンなど国産の最新兵器を初公開。増強した軍事力を誇示した>

中国は10月1日、建国70周年を記念する軍事パレードを行い、世界最大級の軍の能力を見せつけた。初公開の最新兵器も多数あった。

中国人民解放軍は、建国から70年の間に革命のためのゲリラ部隊から世界有数の軍隊へと進化を遂げた。建国の祖である毛沢東が中華人民共和国の建国を宣言した天安門広場の壇上で、習近平(シー・チンピン)国家主席は、中国の急速な発展を今後も継続させる意思を明確にした。

「いかなる勢力もこの偉大な国家の基盤を揺るがすことはできない。いかなる勢力も、中国国民と国家の前進を妨げることはできない」と習は、天安門広場を埋めつくした大観衆に語った。

習は今後数十年かけて軍事力をさらに近代化することも誓っている。それを象徴するように、建国70年記念パレードは、航空機160機と580の兵器や装備、兵士約1万5000人を動員する大規模なイベントとなった。そして滅多にみられない最新兵器の一部が初めて公開された。

最も話題になっているのは、核弾頭搭載可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)「東風(DF)41」だ。射程約1万2000〜1万5000キロと推定され、世界で最も航続距離の長いミサイルといわれている。しかも、マッハ25の極超音速で最大10発の核弾頭を運ぶことができる。戦略国際問題研究所(CSIS)によると、発射から約30分でアメリカ本土に到達するという。

ミサイルの行進と解説(「東風41」は最後)


中距離兵器で優位に

さらに最近開発された大陸間弾道ミサイル「DF-31AG」と、以前から中国軍の定番である多弾頭核ミサイル「DF-5B」もパレードに加わっていた。初公開の武器のなかには、中距離兵器の近代化の一部として追加された「東風(DF)17」もあった。これは、既存のすべての防衛システムを妨害することができる新世代の極超音速滑空ミサイルとみられている。

中距離弾道ミサイル「DF-21」は、太平洋に展開する米軍の航空母艦が攻撃対象になる可能性があることから「空母キラー」と呼ばれている。射程約2100キロで、陸上攻撃型と対艦型がある。

中国政府はパレードでも展示された「グアムキラー」とよばれる中距離弾道ミサイル「DF-26」含む中距離兵器を全体的に拡充させている。アメリカと旧ソ連は1987年に中距離核戦力全廃条約(INF)を締結し、中距離弾道ミサイルの開発を停止していたため、条約に縛られなかった中国が有利な立場になった。

だがアメリカは先月INF条約を破棄、ロシアもすぐに後を追った。そして中国とロシアの当局者は、世界のトップクラスの軍事大国の間で潜在的な「軍拡競争」が勃発することを警告している。

21世紀の戦争のための準備を進めている中国軍は、空中発進ロケット推進式ドローン「WZ-8」、さらにステルス無人攻撃機「GJ-2」「GJ-11」などステルスドローンの数々も披露した。

<参考記事>中国建国70周年「人民民主独裁」はいつまで続くのか
<参考記事>安倍首相の祝賀ビデオメッセージが中国のCCTVで大写し──中国建国70周年記念



中国軍の軍事力は全体としてみれば、まだ米軍には及ばない。だが先ごろ提出された中国の海軍力の増強に関する米国議会調査局の報告書は、中国の軍事力の成長に対する懸念を何度も伝えている。

「中国海軍は、西太平洋の海域において戦況を支配する米海軍の能力に重要な難題を突き付けているもの見なされる。これは、冷戦終結後初めて、米海軍が直面する課題であり、西太平洋において長年優位を保ってきたアメリカの軍事的地位に対する中国の挑戦の重要な要素を形成している」と、報告書は述べている。

原子力空母ロナルド・レーガンが南シナ海を航海して中国を牽制したタイミングで発表されたこの報告書を、中国国防省の任国強(レン・クオチアン)報道官は否定した。「中国の大きな祝日の前にアメリカはつまらない嫌がらせをしたいのだろうが、中国軍と中国の発展に何の影響も及ぼさないことは、歴史が証明している」と、9月27日に記者団に語った。

マイク・ポンペオ国務長官は国慶節の前に「アメリカはこの先1年間の中国の人々の幸福、健康、平和、繁栄を祈ります」と祝意を表した。だが、中国との貿易紛争の渦中にいるドナルド・トランプ大統領は9月30日、皮肉たっぷりのメッセージをツイートした。「アメリカは優位になり、いずれ勝つ。中国はわれわれとの取り決め破るべきではなかった。中国建国おめでとう!」

その翌日、トランプはより中立的なメッセージを発表した。「中華人民共和国の建国70年に際し、習近平国家主席と中国の人々に祝意を表します!」

(翻訳:栗原紀子)



ミサイルの行進と解説(「東風41」は最後)

トム・オコナー

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