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【写真特集】ポーランドの露骨すぎる難民選別

ニューズウィーク日本版 2023年9月2日 16時30分

<国境地帯では、反移民政策の下で中東やアフリカからの難民が非人道的な扱いを受けている>

これまで、ポーランドは隣国ウクライナからの約97万人の難民に仕事や住む場所を提供するなど寛容な受け入れ政策を取ってきた。しかし、ベラルーシとの国境地帯に広がるビャウォビエジャの森では、中東やアフリカからの難民が反移民政策の下で非人道的扱いを受けている。

ビャウォビエジャの森を越えようとする難民たちは、水も食料もない過酷な「ジャングル」に数カ月も身を潜める。冬は低体温症による死の恐怖と隣り合わせだ。国境警備隊に見つかれば、ベラルーシ側の森の中に夜のうちに置き去りにされる。手持ちの携帯電話を壊され、誰にも連絡できない状況のこともある。

発端はベラルーシが意図的に難民を受け入れ、経済制裁を続ける欧州に圧力をかけようとしたことだ。昨年にはポーランド政府が移民防止のフェンスを建設。人道的支援を行うボランティアへの妨害も続けている。難民に手を貸す地元民も、救い切れない状況に苦悩を隠せない。ポーランド出身の写真家ハンナ・ヤルザベクが、同国の知られざる難民危機を追った。

5カ月前から森の中に潜む32歳のイエメン人と50歳のシリア人の2人は、沼の水をスカーフでろ過して飲んでいる。国境警備隊に7度も拘束され、そのたびにベラルーシ側の森に追いやられた

難民を撮影するためビャウォビエジャの森にポーランドの国境警備隊が設置したモニター

ポーランドとベラルーシを隔てる移民防止のフェンスの上部には、鉄条網が張り巡らされている

イエメン難民のモハマド(30)は森で暮らして2カ月がたつ。国境警備隊に2度拘束された上、携帯電話を壊され催涙ガスをかけられた

ボランティアに食料を配給されたエリトリアからの難民たち。国境警備隊に見つからないよう、ボランティアは短時間しか接触しない

難民が森に残した物を抱える元ボランティアの住民。支援活動を通して精神的ダメージを負い、今は活動を休んでいる

ビャウォビエジャの森で拘束され、収容施設に移送された難民が描いた絵。王冠をかぶった白いワシはポーランドの国章にもなっている

ベラルーシ警察から殴られ負傷した目を見せるイエメン難民のモハマド。一緒に行動している友人は催涙ガスで数時間目が見えなくなった

ビャウォビエジャの森を横切る難民に最も多い健康被害である塹壕足。湿った冷たい靴下や靴を何日も履いていると起きる寒冷障害だ

国境のフェンスを上っている最中に転げ落ちて手当てを受けるイランからの難民女性

ベラルーシとの国境沿いにポーランド政府が建設した移民防止のフェンス。「ヨーロッパ最後の原生林」ともいわれるこの森への環境負荷も懸念される

低体温症になり消防隊員と国境警備隊に運ばれるシリア人難民。医師は病院への搬送を勧めたが国境警備隊の管理下に置かれた

イランからの難民女性を手当てするため、レスキュー隊員が注射を打った痕跡

フェンスを越えようとしてけがをし病院に移送された難民を監視するポーランド国境警備隊員

クルド人難民の夫婦が5人の子供を連れてビャウォビエジャの森に避難中、妊娠していた母親が低体温症になり、病院でおなかの中の男児と共に死亡した(写真はその男児の墓)

Photographs by Hanna Jarzabek

撮影:ハンナ・ヤルザベク
1976年、ポーランド生まれ。政治学の修士号を取得後、国連パレスチナ難民救済事業機関の難民報告書に携わるうちに、写真を志すようになった。現在は、スペインを拠点として、性的アイデンティティーによる差別、欧州の若者の急進化、右傾化などをテーマとした作品を制作している


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