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今の上海は、まるでゴーストタウン? 中国経済「低迷」の象徴だという「無人の大都会」写真の真偽は

ニューズウィーク日本版 2023年9月8日 19時46分

<アメリカのジャーナリストが、中国経済の「深刻な状況」を示す証拠だという写真を投稿。これには反論の声や「反証動画」も寄せられている>

コロナ禍からの回復が思うように進まず、経済の減速が指摘される中国。その国内最大の都市である上海が、「ゴーストタウン」と化しているのではないかという論争が、ネット上で勃発している。人気(ひとけ)のない街並みを写した写真が、X(旧Twitter)で拡散されたことを受けてのことだ。

■【写真】上海がゴーストタウンに? 人通りがほとんどない街並みやスタバ周辺を撮影した写真

アメリカのジャーナリストであるマイケル・ヨンは、人通りのないがらんとした上海市内の写真をXに投稿した。閑散とした道路や無人のスターバックスの写真は、2023年9月4日に友人が撮影したもので、中国経済が「深刻な状況にある」証拠だと述べている。

ヨンはXで、こうコメントしている。「上海は、以前と比べるとゴーストタウンだ。ここは金融のハブで、かつては西洋の影響を大きく受けていた。今日は月曜日で、普通の平日なのに、まるでドイツの日曜日のような雰囲気だ。とても静かで、走っている車もほとんどない。以前は、西洋料理レストランで食事をすることが紛れもないステータスシンボルだったのに、いまは客がおらず閑散としている。上海発の貨物量は半減した。中国は苦境に陥っている」

写真に写っているあたりの地域は、コロナ禍以前は「とてもにぎやか」だったという。新型コロナウイルス感染症が中国で発生し、世界各地でロックダウン(都市封鎖)が実施されると、世界的な不況が起きるのではないかという懸念が高まった。しかし中国は、世界経済で引き続き重要な役割を果たしている。

「ゴーストタウン」化を否定する投稿が続々

ヨンがXに投稿した上海市内の写真はたちまち拡散し、表示回数は148万回以上、リポスト(リツイート)も1200回を超えた。ヨンの投稿に反応したユーザーの多くは、上海が「ゴーストタウン」と化したという指摘を否定し、人で混雑するにぎやかな上海の様子を自ら撮影して投稿している。

Xユーザーの@thisischaneceは、上海市内の繁華街にある南京路歩行街(歩行者天国)を大勢の歩行者が歩いている動画を投稿した。撮影日は9月5日夜(現地時間)だという。繁華街をぞろぞろ歩く人を示して、これが「ゴーストタウン」なのかと皮肉っている。

「ゴーストタウンの上海からお伝えします。いまは火曜の夜7時47分。私はいま、外灘(ワイタン)地区にいて、こちら側は、南京路の歩行者天国。ご覧のとおり、たくさんの人の姿は見えません。中国経済は困難な状況にあると思います」。@thisischaneceは、カメラに向かってそう話している。

すでに閉店されたスターバックスだった?

別のXユーザーの@taro_taylorは、もともとの写真に写っているスターバックスはすでに閉店されたとコメントし、車が行き交う道路と、多くの歩行者でごった返す歩道を撮影した動画を投稿した。

「カフェはたくさんあるから、すべてのスターバックスが人でいっぱいだというわけではない。もともとの写真に写っていたスターバックスはもう閉店されている。上海がゴーストタウンだと言うのなら、2週間前の平日に撮影したこの動画を見てほしい」とコメントしている。

上海在住のピーター・リーは、満席のイタリア料理店の写真を投稿して、こうつけ加えた。「上海がゴーストタウンだとは思わない。これは9月3日の日曜夜に、アリメンターリというイタリア料理店で写した写真だ」

多くの住民は、上海がゴーストタウンと化したという説に異議を唱えている。しかしエコノミストからは、中国経済の現状を危惧する声があがっている。中国は、ゼロコロナ政策を終了させたあと、成長が鈍化しているからだ。

中国経済については、不安をかき立てる指標がいくつかある。たとえば、若年失業率は高く、人民元は16年ぶりの安値をつけた。不動産セクターも、このところ苦境にあえいでいる。
(翻訳:ガリレオ)


アンドリュー・スタントン

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