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毒を盛られたとの憶測も...プーチンの「忠実なしもべ」に何が? 公開された「新動画」で議論が再燃

ニューズウィーク日本版 2023年9月23日 12時35分

<チェチェン共和国のカディロフ首長の健康状態をめぐり、ウクライナ側からの情報も含めてさまざまな憶測が飛び交っている>

ウクライナを相手に苦戦が続くロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、またもや重要な「盟友」を失ってしまったのか......。ここ最近、チェチェン共和国のラムザン・カディロフ首長の健康状態をめぐって、「死亡説」を含むさまざまな憶測が飛び交っている。そうしたなか、カディロフのテレグラムチャンネルには、病院で撮影されたと見られる彼の動画が投稿されて議論を呼んでいる。

■【動画】「健在」をアピールするも、真偽について議論は二分...公開されたカディロフの新たな動画

カディロフは、プーチンの「盟友」または「忠実なしもべ」などと呼ばれることの多い人物だが、最近は重病説や死亡説まで囁かれている。今回、こうした動画を公開したのには、それらの噂を払拭する狙いがあったとみられる。

カディロフの健康状態については先週、ウクライナ国防省情報総局のアンドレイ・ユソフ報道官が、全身性の健康問題によりかなり前から体調を崩していると発言したことから、さまざまな憶測が浮上していた。ユソフは9月15日にウクライナの国営通信社「ウクルインフォルム」に対して、カディロフが「数日前から重体」だと述べていた。

今回カディロフのテレグラムチャンネルに投稿された内容によれば、彼は生きていて体調にも問題はないという。動画の場面は、モスクワの大統領府中央病院で治療を受けている、叔父のハースマゴメド・カディロフを見舞ったときのものだとしている。

動画には、カディロフが病室で叔父の隣に座っている様子が映っている。さらに医師とみられる男性の姿もあり、この人物はハースマゴメド・カディロフが2週間前から入院していると説明し、「今日は9月20日だ」とも述べている。

「誰が嘘をついているかが分かった」

ただカディロフは動画の中で、自身の健康状態をめぐる憶測については語っておらず、動画に添えられた文章の中で言及されているだけだ。また動画は、カディロフを近距離から撮影してはいない。

本誌はこの動画がいつ、どこで撮影されたものか裏付けを取ることができなかった。本誌はこの件についてロシア外務省にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。

カディロフのテレグラムチャンネルに投稿された文章は、次のようなものだった。「私の健康状態をめぐる噂についてコメントしよう。全能の神のおかげで、私は元気に過ごしている。それに、もしも私が病気だったとしても、大騒ぎするようなことだろうか。だが今回の一件ではいいこともあった。どのメディアやどの人物が、読者に向けて図々しく嘘をついているのかが分かったということだ」

ウクライナ側は死亡説や重病説に言及

同チャンネルには9月17日にも、雨の中を歩くカディロフが映った動画(撮影場所は不明)が投稿されていた。この動画には、「真実とインターネット上の嘘の区別がつかない者は、散歩に出て新鮮な空気を吸い、思考を整理するよう強く勧める」という言葉が添えられていた。

ウクライナ内務省のアントン・ゲラシチェンコ顧問は、9月17日にX(旧ツイッター)への投稿でカディロフの健康状態に言及。「彼(カディロフ)が既に死亡していると言う者もいれば、彼が重篤な腎不全か毒を盛られたかで昏睡状態に陥っていると考えている者もいる」と述べていた。

2007年からチェチェン共和国の首長を務めているカディロフについては、複数の国際機関が、拉致や拷問、裁判なしの処刑や弾圧を含む人権侵害を行っていると非難している。

またカディロフの配下にあるチェチェン特殊部隊は、ウクライナでロシア軍と協力して戦闘に参加している。


イザベル・ファン・ブリューゲン

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