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広範囲の敵を一瞬で...映像が捉えたウクライナ軍「クラスター弾」攻撃の瞬間 その恐るべき性能

ニューズウィーク日本版 2023年9月23日 19時51分

<ロシア側ウクライナ側の双方がクラスター弾を使用し、アメリカも供与しているが、この兵器の使用を禁止している国は多い>

ロシア軍に対するウクライナ軍の「反転攻勢」が始まって間もなく4カ月。今回の戦争では、戦場で使用されるさまざまな兵器の性能や「戦果」を示す多くの映像がインターネット上に出回っている。そうしたなか、ウクライナ軍が発射したクラスター弾がロシア軍の歩兵たちに命中する様子を捉えたとみられる動画が公開され、注目を集めている。

■【動画】一瞬で広範囲の敵にダメージを...クラスター弾がロシア軍の部隊を襲う瞬間を捉えた動画

ウクライナでの戦闘の様子を記録しているテレグラムチャンネル上で共有され、その他のSNSにも転載されている今回の動画は、ドローンに搭載されたカメラが夜間に撮影したものとみられる。動画には、クラスター弾から多数の小型爆弾が飛散され、攻撃を受けた兵士たちが慌ててそのエリアから脱出していく様子が映っている。

本誌はこの動画の撮影時期や撮影場所について独自に裏付けを取ることはできず、この件についてロシア国防省にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。

ウクライナでの戦争においては、ウクライナ側もロシア側もクラスター弾を使用している。クラスター弾は敵の歩兵部隊に対して使用するのに効果的な兵器ではあるものの、一方ではその使用に対して否定的な声もある。

アメリカは7月に、ウクライナに対人・対装甲車両用クラスター弾「DPICM(二重用途改良型通常弾)」を供与することに合意。その後すぐに、ウクライナ南部と東部で反転攻勢を推し進めるウクライナ軍が、初めてクラスター弾を使用する様子を捉えたとされる動画が浮上していた。

世界120超の国は使用を禁止

米国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官は7月半ば、ウクライナはクラスター弾を「効果的に」使用しており、これが「ロシアの防衛陣形や防衛のための部隊移動に影響を及ぼしている」と述べていた。

英シンクタンク「王立統合軍事研究所」のシッダート・カウシャル研究員は、アメリカがウクライナへのクラスター弾供与を決定する前に本誌に対して、クラスター弾は「大勢の歩兵を一掃するのにとても効果的」だと述べていた。

クラスター弾は、広い範囲に多数の小型爆弾を飛散させることで効果を発揮する。だが一般市民を危険にさらす可能性があり、また発射されたときには「不発弾」となり、長い時間を経た後に爆発する可能性もあるため、世界の120超の国ではその使用が禁止されている。

8月半ばには、ウクライナ軍が東部ドネツク州の集落ウロジャイネでの奪還作戦でクラスター弾を使用した様子を捉えたとされる動画が、インターネット上で急速に広まった。

アメリカはクラスター弾の追加供与を計画していた?

ウクライナ軍総司令官ワレリー・ザルジニーの元顧問で、以前からウクライナへのクラスター弾供与を支持してきたダン・ライスは、かつて本誌に対して、ウクライナには高機動ロケット砲システム(HIMARS)からの発射が可能なDPICMのM26ロケット弾も供与されるべきだと述べていた。

米ニューヨーク・タイムズ紙は9月に入ってから、米政府当局者3人の発言を引用して、アメリカがウクライナに対して新たに(追加で)DPICMの供与を計画していたと報じた。ある当局者(匿名)は同紙に対して、クラスター弾はウクライナが南部での反転攻勢の勢いを維持するために不可欠だと述べた。

ウクライナ政府は9月15日、東部ドネツク州バフムト近郊の集落アンドリーフカを奪還したと発表したが、反転攻勢は南部で重点的に進められている。そのわずか数日後、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍がバフムトの南に位置する集落クリシチウカも奪還したと発表した。


エリー・クック

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