<「提督」クラスが戦死は滅多にないが、それがロシアの誇る黒海艦隊で起きた、というのがウクライナの主張だ。連日のようにウクライナ軍の攻撃が続くなか、ロシア海軍が取った行動は>
<動画>潜水艇が黒海艦隊の大型揚陸艦「オレネゴルスキー・ゴルニャク」を直撃する瞬間
ウクライナ軍による攻撃で、ロシア黒海艦隊の司令官ビクトル・ソロコフ提督が死亡したとみられることについて、ジェームズ・スタブリディス元NATO欧州連合軍最高司令官は、ウクライナにとって「素晴らしい戦果」だと評価した。
ウクライナ政府は9月25日、クリミア半島にあるロシア海軍黒海艦隊の司令部に対して、22日にイギリスから導入した長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」で攻撃を行い、成功したと発表。この攻撃で海軍要員100人超が負傷し、ソコロフを含む34人が死亡したという。ソコロフは同艦隊の司令官で、ウクライナ側にとってきわめて重要な標的だった。
ベラルーシの反体制メディア「ネクスタ」によれば、ウクライナ特殊作戦軍は声明で、「揚陸艦ミンスクが翌日に戦闘任務に就く予定であることがわかり、ロシア海軍の人員が多く集まると想定した」と述べた。「犠牲は62人にのぼった。取り返しのつかない損失だ。ロシア黒海艦隊司令部の攻撃で、黒海艦隊の司令官を含む34人の将校が死亡し、ほかに105人が負傷した。司令部の建物は復旧不可能だ」
提督の戦死は第2次大戦以来
スタブリディスは25日、X(旧ツイッター)上に「ロシア軍の重要な指導者とその配下の要員多数を排除したことは、ウクライナの素晴らしい戦果だ」と述べた。「提督の戦死は第2次大戦以来ではないか」
第2次大戦では、米軍複数の提督が交戦中に死亡している。
スタブリディスは元米海軍提督で、1970年代以降、軍のさまざまな役職を務めた後、2009年から2013年まではNATO欧州連合軍の最高司令官を務めた。ロシアとウクライナの戦況について、専門家の視点から頻繁に意見を求められている。
ロシア政府はまだソコロフの死亡を確認しておらず、クリミアへの攻撃についてはウクライナ政府と食い違うコメントを出している。ロシア国防省は22日に発表した声明の中で、攻撃により黒海艦隊司令部が損傷したと認めたものの、兵士1人が死亡したのみだと述べた。後に声明を修正したが、問題の兵士については死亡が確認された訳ではなく、行方が分からないだけだ、という内容だった。
米シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」の欧州防衛問題専門家であるラジャン・メノンは本誌に対して、「ソロコフ提督の死亡が確認されれば、少なくとも2つの点で注目に値する」と述べた。「第一に、ロシアはこの戦争で既にかなりの数の将校を失っており、今回もそうだということ。ウクライナ側の発表ではソコロフのほかにも33人の将校が死亡している。1日の損失としては相当なものだ」
「第二のさらに重要な点は、ソコロフが死亡したとされる22日のセバストポリ(黒海艦隊の基地がある軍港都市)への攻撃の数日前から、ウクライナはクリミアの軍事標的に何度も攻撃を行っていたということだ。それを考えると、たとえ必要不可欠で緊急を要するものだったとしても、クリミア半島の一カ所にこれほど多くの将校を集めたのは不可解だ。リスクは予測できたはずなのに」
ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、クリミア半島はロシア海軍にとって戦略的な価値があるという意味でも、ウクライナ政府が奪還を目指しているという意味でも、ウクライナ軍にとって主要な標的となっている。ロシアは2014年に一方的にクリミア半島を併合。国際社会はこれを非難し、併合を認めていない。
<動画>劇的!ストームシャドウが着弾した黒海艦隊司令部
トーマス・キカ
<動画>潜水艇が黒海艦隊の大型揚陸艦「オレネゴルスキー・ゴルニャク」を直撃する瞬間
ウクライナ軍による攻撃で、ロシア黒海艦隊の司令官ビクトル・ソロコフ提督が死亡したとみられることについて、ジェームズ・スタブリディス元NATO欧州連合軍最高司令官は、ウクライナにとって「素晴らしい戦果」だと評価した。
ウクライナ政府は9月25日、クリミア半島にあるロシア海軍黒海艦隊の司令部に対して、22日にイギリスから導入した長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」で攻撃を行い、成功したと発表。この攻撃で海軍要員100人超が負傷し、ソコロフを含む34人が死亡したという。ソコロフは同艦隊の司令官で、ウクライナ側にとってきわめて重要な標的だった。
ベラルーシの反体制メディア「ネクスタ」によれば、ウクライナ特殊作戦軍は声明で、「揚陸艦ミンスクが翌日に戦闘任務に就く予定であることがわかり、ロシア海軍の人員が多く集まると想定した」と述べた。「犠牲は62人にのぼった。取り返しのつかない損失だ。ロシア黒海艦隊司令部の攻撃で、黒海艦隊の司令官を含む34人の将校が死亡し、ほかに105人が負傷した。司令部の建物は復旧不可能だ」
提督の戦死は第2次大戦以来
スタブリディスは25日、X(旧ツイッター)上に「ロシア軍の重要な指導者とその配下の要員多数を排除したことは、ウクライナの素晴らしい戦果だ」と述べた。「提督の戦死は第2次大戦以来ではないか」
第2次大戦では、米軍複数の提督が交戦中に死亡している。
スタブリディスは元米海軍提督で、1970年代以降、軍のさまざまな役職を務めた後、2009年から2013年まではNATO欧州連合軍の最高司令官を務めた。ロシアとウクライナの戦況について、専門家の視点から頻繁に意見を求められている。
ロシア政府はまだソコロフの死亡を確認しておらず、クリミアへの攻撃についてはウクライナ政府と食い違うコメントを出している。ロシア国防省は22日に発表した声明の中で、攻撃により黒海艦隊司令部が損傷したと認めたものの、兵士1人が死亡したのみだと述べた。後に声明を修正したが、問題の兵士については死亡が確認された訳ではなく、行方が分からないだけだ、という内容だった。
米シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」の欧州防衛問題専門家であるラジャン・メノンは本誌に対して、「ソロコフ提督の死亡が確認されれば、少なくとも2つの点で注目に値する」と述べた。「第一に、ロシアはこの戦争で既にかなりの数の将校を失っており、今回もそうだということ。ウクライナ側の発表ではソコロフのほかにも33人の将校が死亡している。1日の損失としては相当なものだ」
「第二のさらに重要な点は、ソコロフが死亡したとされる22日のセバストポリ(黒海艦隊の基地がある軍港都市)への攻撃の数日前から、ウクライナはクリミアの軍事標的に何度も攻撃を行っていたということだ。それを考えると、たとえ必要不可欠で緊急を要するものだったとしても、クリミア半島の一カ所にこれほど多くの将校を集めたのは不可解だ。リスクは予測できたはずなのに」
ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、クリミア半島はロシア海軍にとって戦略的な価値があるという意味でも、ウクライナ政府が奪還を目指しているという意味でも、ウクライナ軍にとって主要な標的となっている。ロシアは2014年に一方的にクリミア半島を併合。国際社会はこれを非難し、併合を認めていない。
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トーマス・キカ