<ウクライナ政府が主導する研究プログラムが、赤外線センサーから対象者を「隠す」マントを開発。その性能の高さを示す動画を公開した>
高性能なカメラを搭載した多くのドローンが飛び交うウクライナの戦場では、夜間であっても兵士たちは常に敵から攻撃を受ける脅威にさらされている。そうした状況を変える可能性をもった「透明マント」の量産準備が整ったと、ウクライナの開発チームが本誌に語った。その魔法のようなマントの効果は、テストの様子を撮影した動画を見れば一目瞭然だ。
■【動画】たしかに見えない...ウクライナで開発された、兵士を敵の目から隠す「透明マント」
この「透明マント」は、ロシアの赤外線センサーからウクライナの兵士を隠すことを目的に開発されたもの。すでに月間150枚の生産が可能な状態だという。
ウクライナ政府が主催する研究プログラム、ブレイブ1の下でマントを開発しているチームのマキシム・ボリアックは10月4日、戦場で使われている暗視装置に対応するため、すでにマントは改良段階に入っていると説明した。
「マントをテストした軍からは、肯定的なフィードバックとともに、助言や要望があった」とボリアックは振り返り、「私たちの科学研究が近い将来、改良版マントの成功によって報われることを願っている」と述べた。
10月に入り、ブレイブ1がマントのテストの動画を公開すると、ウクライナの新技術担当副首相兼デジタルトランスフォーメーション(DX)担当相ミハイロ・フェドロフは、「おとぎ話の透明マント」に例えてその性能を称賛した。
実際の完成度は動画で示されている以上に高い
ボリアックによれば、この技術の実際の完成度は動画で示されている以上に高いという。「動画では人間の顔部分を認識することができるが、これは専用マスクで覆われていないためだ。マントのキットにはフェイスマスクが含まれている」とボリアックは説明する。「フェイスマスクと専用のサングラスを着ければ、赤外線カメラからは完全に見えなくなる」
「現在、生産能力は月間150枚が限界だが、必要であれば増産も可能だ」とボリアックは述べる。ウクライナ軍がこの技術を採用するか、採用する場合はいつになるかは不明だ。
「動画で紹介したサンプルは量産可能だ。周囲に自然植生があれば、立っているとき、座っているとき、横たわっているときと、どのような姿勢でも幅広く使用できる。開けた場所では、横たわっているときのみマントを使用できる」
ボリアックによればこの技術は、隠密行動が必要な部隊をはじめ、さまざまな専門部隊を念頭に置いて設計されているという。特殊作戦、偵察、破壊工作、工兵、狙撃、さらには、塹壕(ざんごう)の監視所で見張りを行う兵士、軍事施設をパトロールする兵士などだ。
とはいえ、ウクライナ兵士による実戦での使用は限定的なものになるかもしれない。「マントのマスキング特性は、マントを着用した人が非常にゆっくり動く限り、永続的に維持される。例えば、起伏が多い場所を素早く移動するときなどと違い、体から余分な熱が放出されないためだ」とボリアックは説明する。
「このマントは、ゆっくり体勢を整えることを前提に使用するもので、急激な動きには適していない。体から余分な熱が放出され、マントの通気口からわずかに熱が漏れ出すためだ」。ただし、着用者が周囲の植物に紛れていれば、危険な熱の漏れは多少隠すことができる、とボリアックは補足した。
戦争が急速なイノベーションを促している
ロシアによる本格的な侵攻は、技術と戦術の急速なイノベーションを促している。また、西側の先進的な軍装備品が徐々に導入されていることで、さらにイノベーションに拍車が掛かっている。今回の新しい熱対策技術はウクライナ軍に、夜間の戦場における優位性をもたらす可能性がある。現在、さまざまな種類のドローンがほぼ常時監視活動をおこなっており、高度なカメラを搭載するものもある。
「『善』と『悪』は常に隣り合わせだ。新しいタイプの兵器と、それを打ち負かし、無力化しようとする手段の戦いもそうだ」とボリアックは話す。「だからこそわれわれは、何かを達成したとしても、そこで立ち止まることはない」
ボリアックによれば、現在の計画は「製品を改良し、開けた場所での素早い動きに対応させること」だという。「ほかの科学者たちと協力し、その方向で研究を進めている。年末までには、カムフラージュ効果を高めた新型マントの本格的なテストを実施する予定だ」
「新型マントのマスキング特性をさらに拡大するには、この製品に使用される新素材のテストが終わるまで、少し待つ必要がある」
(翻訳:ガリレオ)
デービッド・ブレナン
高性能なカメラを搭載した多くのドローンが飛び交うウクライナの戦場では、夜間であっても兵士たちは常に敵から攻撃を受ける脅威にさらされている。そうした状況を変える可能性をもった「透明マント」の量産準備が整ったと、ウクライナの開発チームが本誌に語った。その魔法のようなマントの効果は、テストの様子を撮影した動画を見れば一目瞭然だ。
■【動画】たしかに見えない...ウクライナで開発された、兵士を敵の目から隠す「透明マント」
この「透明マント」は、ロシアの赤外線センサーからウクライナの兵士を隠すことを目的に開発されたもの。すでに月間150枚の生産が可能な状態だという。
ウクライナ政府が主催する研究プログラム、ブレイブ1の下でマントを開発しているチームのマキシム・ボリアックは10月4日、戦場で使われている暗視装置に対応するため、すでにマントは改良段階に入っていると説明した。
「マントをテストした軍からは、肯定的なフィードバックとともに、助言や要望があった」とボリアックは振り返り、「私たちの科学研究が近い将来、改良版マントの成功によって報われることを願っている」と述べた。
10月に入り、ブレイブ1がマントのテストの動画を公開すると、ウクライナの新技術担当副首相兼デジタルトランスフォーメーション(DX)担当相ミハイロ・フェドロフは、「おとぎ話の透明マント」に例えてその性能を称賛した。
実際の完成度は動画で示されている以上に高い
ボリアックによれば、この技術の実際の完成度は動画で示されている以上に高いという。「動画では人間の顔部分を認識することができるが、これは専用マスクで覆われていないためだ。マントのキットにはフェイスマスクが含まれている」とボリアックは説明する。「フェイスマスクと専用のサングラスを着ければ、赤外線カメラからは完全に見えなくなる」
「現在、生産能力は月間150枚が限界だが、必要であれば増産も可能だ」とボリアックは述べる。ウクライナ軍がこの技術を採用するか、採用する場合はいつになるかは不明だ。
「動画で紹介したサンプルは量産可能だ。周囲に自然植生があれば、立っているとき、座っているとき、横たわっているときと、どのような姿勢でも幅広く使用できる。開けた場所では、横たわっているときのみマントを使用できる」
ボリアックによればこの技術は、隠密行動が必要な部隊をはじめ、さまざまな専門部隊を念頭に置いて設計されているという。特殊作戦、偵察、破壊工作、工兵、狙撃、さらには、塹壕(ざんごう)の監視所で見張りを行う兵士、軍事施設をパトロールする兵士などだ。
とはいえ、ウクライナ兵士による実戦での使用は限定的なものになるかもしれない。「マントのマスキング特性は、マントを着用した人が非常にゆっくり動く限り、永続的に維持される。例えば、起伏が多い場所を素早く移動するときなどと違い、体から余分な熱が放出されないためだ」とボリアックは説明する。
「このマントは、ゆっくり体勢を整えることを前提に使用するもので、急激な動きには適していない。体から余分な熱が放出され、マントの通気口からわずかに熱が漏れ出すためだ」。ただし、着用者が周囲の植物に紛れていれば、危険な熱の漏れは多少隠すことができる、とボリアックは補足した。
戦争が急速なイノベーションを促している
ロシアによる本格的な侵攻は、技術と戦術の急速なイノベーションを促している。また、西側の先進的な軍装備品が徐々に導入されていることで、さらにイノベーションに拍車が掛かっている。今回の新しい熱対策技術はウクライナ軍に、夜間の戦場における優位性をもたらす可能性がある。現在、さまざまな種類のドローンがほぼ常時監視活動をおこなっており、高度なカメラを搭載するものもある。
「『善』と『悪』は常に隣り合わせだ。新しいタイプの兵器と、それを打ち負かし、無力化しようとする手段の戦いもそうだ」とボリアックは話す。「だからこそわれわれは、何かを達成したとしても、そこで立ち止まることはない」
ボリアックによれば、現在の計画は「製品を改良し、開けた場所での素早い動きに対応させること」だという。「ほかの科学者たちと協力し、その方向で研究を進めている。年末までには、カムフラージュ効果を高めた新型マントの本格的なテストを実施する予定だ」
「新型マントのマスキング特性をさらに拡大するには、この製品に使用される新素材のテストが終わるまで、少し待つ必要がある」
(翻訳:ガリレオ)
デービッド・ブレナン