<「簡潔さは美点」。不穏なイメージを提示するだけでなく、前向きな変化に焦点を当てたい...。地球環境改善のメッセージを込めるアーティストの挑戦>
昨年、あるロビーに座っていたハンナ・ロススタインは、壁に飾られた1960年代のサイケデリック・ロックのポスターたちに目を留めた。当然ながら、そのとき頭に浮かんだのは気候変動のことだった。
飛躍しすぎと思うかもしれないが、そんなことはない。アーティストのロススタインがここ数年、力を入れているのは気候変動がテーマの作品。それらのポスターからひらめきを得て、彼女の最新プロジェクトは生まれた。
ジェファーソン・エアプレインやクリームといったバンドのLPジャケットのようなグルービーなデザインで、気候変動の解決策を魅力的に見せるポスターだ。
大衆文化を自分なりに解釈した作品を手がけてきたロススタインは2017年、気候変動に着目した。
「人々の考えが大きく変わるには演劇、音楽、視覚芸術といったアートが必要だ」と彼女は言う。「視覚芸術を使い、気候変動対策を前進させたかった」
最初のプロジェクトは、1930年代に作成された国立公園のポスターからヒントを得た。
その「国立公園2050」シリーズはオリジナルにひねりを加え、30年にわたる異常気象で荒廃した公園──間欠泉が消えたイエローストーン、湖のないクレーターレイク、火に焼かれたグレートスモーキー山脈など──が描かれている。
彼女の目標は、多くの人があまりに簡単に無視してきた、進行中の災害を直視してもらうこと。「いくら大きな問題でも、人は目の前に来るまで気にしないものだ」とロススタイン。
「それを変えるには、遠くて抽象的なものを、差し迫った具体的なものに感じさせる必要がある。つまり未来を現在に持ってくればいい」
ポスターは、気候変動のメッセージを脳の別の部分に伝えられると彼女は言う。「言葉と数字で科学的に説明すると、人々は退屈しがちだ。視覚を使えば一瞬で注目を引ける」
国立公園に続き制作したのは、「50州の変化」シリーズ。よくある観光ポストカードに似せた版画だが、干ばつで地割れのできたアリゾナ、水没したテキサスなど、お決まりの光景が気候変動で破壊されている。
どちらのプロジェクトも口コミで広まり、オリジナルと同じくらい象徴的な存在になった。
来るべき未来の不穏なイメージを提示するという見事な仕事をしてきたロススタインは最近、ロックポスターの新プロジェクトを始めた。
「初めは、事態を解決しなければ何が起こるかを示すことだった」と彼女は言う。「今は、気候変動と闘う前向きな変化に焦点を当てたいと思う」
そして誕生したのが60年代ロックをテーマに、ウッドストックをもじった「グッドストック」だ。大胆な文字デザインで、「森林を守ろう」「食品廃棄物をなくそう」など、地球に優しい行動を奨励するさまざまなスローガンが掲げられる。
これを見た人全員が行動に移すという幻想は抱いていないが、メッセージの簡潔さは美点だと彼女は言う。「解決方法については情報が多く、圧倒される。一目で理解できるくらいにまとめたほうがいい」
次の計画は、生物の珍しい特徴で人々の関心を引く作品だ。候補はウミウシとセコイアの木。「セコイアにはサケのDNAが含まれている。そうした自然の細部がどれほど素晴らしいかを表現したい」
手法はプロジェクトごとに変わるが、一貫した目標は気候変動への関心を呼び起こすこと。「役立つアートを作りたい」という思いだ。
ハンナ・ロススタインの作品
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デービッド・H・フリードマン
昨年、あるロビーに座っていたハンナ・ロススタインは、壁に飾られた1960年代のサイケデリック・ロックのポスターたちに目を留めた。当然ながら、そのとき頭に浮かんだのは気候変動のことだった。
飛躍しすぎと思うかもしれないが、そんなことはない。アーティストのロススタインがここ数年、力を入れているのは気候変動がテーマの作品。それらのポスターからひらめきを得て、彼女の最新プロジェクトは生まれた。
ジェファーソン・エアプレインやクリームといったバンドのLPジャケットのようなグルービーなデザインで、気候変動の解決策を魅力的に見せるポスターだ。
大衆文化を自分なりに解釈した作品を手がけてきたロススタインは2017年、気候変動に着目した。
「人々の考えが大きく変わるには演劇、音楽、視覚芸術といったアートが必要だ」と彼女は言う。「視覚芸術を使い、気候変動対策を前進させたかった」
最初のプロジェクトは、1930年代に作成された国立公園のポスターからヒントを得た。
その「国立公園2050」シリーズはオリジナルにひねりを加え、30年にわたる異常気象で荒廃した公園──間欠泉が消えたイエローストーン、湖のないクレーターレイク、火に焼かれたグレートスモーキー山脈など──が描かれている。
彼女の目標は、多くの人があまりに簡単に無視してきた、進行中の災害を直視してもらうこと。「いくら大きな問題でも、人は目の前に来るまで気にしないものだ」とロススタイン。
「それを変えるには、遠くて抽象的なものを、差し迫った具体的なものに感じさせる必要がある。つまり未来を現在に持ってくればいい」
ポスターは、気候変動のメッセージを脳の別の部分に伝えられると彼女は言う。「言葉と数字で科学的に説明すると、人々は退屈しがちだ。視覚を使えば一瞬で注目を引ける」
国立公園に続き制作したのは、「50州の変化」シリーズ。よくある観光ポストカードに似せた版画だが、干ばつで地割れのできたアリゾナ、水没したテキサスなど、お決まりの光景が気候変動で破壊されている。
どちらのプロジェクトも口コミで広まり、オリジナルと同じくらい象徴的な存在になった。
来るべき未来の不穏なイメージを提示するという見事な仕事をしてきたロススタインは最近、ロックポスターの新プロジェクトを始めた。
「初めは、事態を解決しなければ何が起こるかを示すことだった」と彼女は言う。「今は、気候変動と闘う前向きな変化に焦点を当てたいと思う」
そして誕生したのが60年代ロックをテーマに、ウッドストックをもじった「グッドストック」だ。大胆な文字デザインで、「森林を守ろう」「食品廃棄物をなくそう」など、地球に優しい行動を奨励するさまざまなスローガンが掲げられる。
これを見た人全員が行動に移すという幻想は抱いていないが、メッセージの簡潔さは美点だと彼女は言う。「解決方法については情報が多く、圧倒される。一目で理解できるくらいにまとめたほうがいい」
次の計画は、生物の珍しい特徴で人々の関心を引く作品だ。候補はウミウシとセコイアの木。「セコイアにはサケのDNAが含まれている。そうした自然の細部がどれほど素晴らしいかを表現したい」
手法はプロジェクトごとに変わるが、一貫した目標は気候変動への関心を呼び起こすこと。「役立つアートを作りたい」という思いだ。
ハンナ・ロススタインの作品
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デービッド・H・フリードマン