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大谷翔平の経済効果は457億円、1年でほぼ倍増...希代のMLBスターが動かすお金は「桁違い」

ニューズウィーク日本版 2023年10月11日 14時50分

<抜群の実力と好感度を誇る大谷翔平は、たった1人で巨額の450億円を生み出した>

約100年前に投打二刀流プレーヤーとして活躍した「野球の神様」ベーブ・ルースを抜く日本人選手が出てくるとは、野球ファンは想像もしていなかったはずだ。

米大リーグ(MLB)で数々の記録を塗り替えている大谷翔平は100年、いや200年に1人の野球選手かもしれない。そして、日米の野球ファンを熱狂させる彼が生み出す経済効果は、その活躍ぶりに比例するように、とどまるところを知らない。大谷は経済的な面でも莫大な影響力を持つ存在だ。

【図解】桁違いの経済効果...熱狂が生み出す大谷マネー

では、大谷が動かすお金とはどれほどのものなのか。

大谷が生み出す経済効果は年俸をはじめ、スポンサー契約料やCM出演料、ファンが払うチケット代などにより算定される。こうしたお金は経済効果に算定されないと誤解するファンもいるが、いずれも経済効果の元になる。大谷は得たお金を住居や車、食事などに消費し、預金もする。金融機関はそれを基に融資を行い、企業は工場建設に投資したり、従業員に賃金を支払ったりする。これらは全て経済効果である。

経済効果は、人や企業が消費や投資した「直接効果」と、そこから波及した消費・投資の売上増加額である「波及効果」を合計し、その数値を産業連関分析により計算する。

一例として、直接効果の算出方法を説明しよう。

昨年、大谷が出場したホームとビジターの試合では、欠場時と比較して計63万1174人のファンが増加していた。米メディア「マネーワイズ」によると、全球場で4人家族がチケット代や飲食などに費やした平均消費額は、現在のレートや物価上昇率を加味すると3万8720円。大谷目当てのファンがホームの場合は約56万7000人(81試合)、ビジターでは約6万4174人増加したと仮定すると、観客増加による消費額は約61億976万円になる。

1年で経済効果がほぼ倍増

経済効果の算出に欠かせないのが産業連関表だ。国や地域の全産業部門を数十から数百の部門に分類し、各産業部門の生産物・サービスの需要と供給を1つの表にまとめて分析する手法を産業連関分析という。この表を使い、ある産業部門で需要が増加した際、ほかの産業部門でどれだけ生産量が増加するかを計算する。

今回は大谷の年俸、スポンサー契約料、CM出演料、放送権料など8つの項目によって算出した。その上で、直接効果がもたらす波及効果について産業連関分析を用いると、2022年の経済効果は450億円を超え、21年の約240億円からほぼ倍増していた。

では今年、負傷の末に手術のためシーズンを終えた大谷が、24年に動かす額の見通しはどうか。来シーズンは打者に専念するため二刀流は25年までお預けだが、打者として超一流の長打力と走力を発揮するはずで、ファンの人気も依然として高い。努力家でストイックな性格であり、負傷から不死鳥のようによみがえって大活躍する日が来ることを筆者は信じている。恐らく、24年の経済効果は21年と22年の中間に当たる350億円前後に落ち着くのではないか。

抜群の実力と紳士的な人柄でファンから絶大な人気を誇る大谷は、スポーツ選手として比類なきレベルの経済効果を生み出している。

熱狂が生み出す大谷マネー

<年俸、グッズ売り上げ、CM出演料...いずれも破格の水準に到達。二刀流で大活躍する大谷は経済効果も桁違いだった>

61億976万円

「大谷効果」による観客増に伴う消費額――大谷の出場時は欠場時に比べて計63万1174人のファンが増加。米メディア「マネーワイズ」が発表した4人家族による球場での消費額を参考に算出した

約43億4000万円

2023年の年俸

350億円前後

2024年の経済効果――ケガからの早期復活が待たれるなか、今後結ぶであろう複数年契約や打者としての実力、ファン人気を考慮して、経済効果は大きく落ち込まないと想定

約12億8400万円

日米での大谷グッズの売上高――アメリカでは約9億8400万円、日本では約3億円と仮定

457億941万円

2022年の経済効果――年俸やスポンサー契約料、CM出演料に加え、ファンによるチケット代や飲食費、グッズ購入代などを総合的に分析

約12億円

応援ツアーの売上高――日本からの応援ツアー参加者を約4000人、1人平均約30万円と仮定

約2億円

日本のCM出演料

約10億8000万円

スポンサー契約料――2022年のスポンサーは9社、1社平均1億2000万円と仮定。写真の大谷が着用している「ヒューゴ・ボス」もその1社

約69億4800万円

MLB放映権収入への貢献――MLBがNHKから得ている放映権収入は約8000万ドルで、そのうち約6割が大谷の人気によるものと想定

※数字は2023年の年俸と2024年の経済効果以外は全て2022年のもの



宮本勝浩(関西大学名誉教授〔理論経済学〕)

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