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「プーチンは死の床で、世界が今見ているのは影武者」説を検証する

ニューズウィーク日本版 2023年10月16日 17時30分

<プーチン死後もしばらくは替え玉を動かしてスムースに権力委譲を進める計画が進んでいる?>

<動画>本物のプーチンなら「あり得ない」仕草......ビデオに映った不可解な行動に、「影武者説」が再燃

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とその政権は秘密のベールに包まれており、そのためプーチンについては健康不安説から影武者説まで根拠不明の「ニュース」が絶えない。

とりわけプーチンの健康状態は、近ごろ急激に悪化したと言われ、10月に入ってからはまさに死の淵にあり、それを隠すために「影武者」を使ったとの説が流れている。

複数の著名なネットメディアでも、「プーチンの健康状態は急激に悪化しており、死も近い」という主治医の診断が見出しに躍った。

この話の出所は「SVR将軍」というテレグラフチャンネルだ。SVR将軍はこれまでもプーチンの健康状態や権力の掌握ぶりについて、匿名の情報源の話として伝えてきた。

「プーチンの死後、あるいは権力を失った後しばらくは、影武者が使われる可能性はある、というのが一般的な理解だ」とSVR将軍は伝えている。

政権中枢が影武者「擁立」で合意?

「ほぼすべての利害関係者は、自分たちの思い通りに動く影武者の下で団結する用意ができている。唯一の問題は、誰が影武者を動かすかだ。(この作戦には)相互信頼が必要だが、あいにくそんなものは存在しない」

SVR将軍はまた、プーチン政権中枢の人々が「プーチン後のプーチン政権」をいかに作っていくかについてコンセンサスを作ろうとしていた、とも伝えた。この時は、次の大統領は安全保障会議書記のニコライ・パトルシェフになる、という前提だったそうだ。

プーチン自身が後継にしたいと考えているのはミハイル・ミシュスチン首相だが、他の高官たちはパトルシェフの方を推しているとも伝えている。

プーチンの健康状態に関しては、不自然な様子で座ったり動いたりしている様子が映ったビデオを根拠に、現在に至るまでさまざまな憶測が流されてきた。原因についても、末期癌からパーキンソン病まで様々な病気が取り沙汰されている。

信頼性がより高いだろうと思われる他の情報源によって、こうした噂の信ぴょう性が増した例もある。昨年7月、情報機関の幹部3人は本誌に対し、アメリカの機密報告書によればプーチンは2022年4月に進行癌の治療を受けたと語った。

同じ年、モスクワ・タイムズは独立系ニュースサイト「プロエクト・メディア」の調査報道を引用し、プーチンが2016〜2019年にソチの別荘を訪ねた際は甲状腺癌の専門外科医を含む医師団を伴っており、2016年11月に「手術を行った可能性もある」と伝えている。

 

もっとも、プーチンの死が近く後継者への権力委譲プロセスも動き出しているという最近のニュースに関しては、検証可能な証拠なしで投稿されているし、裏付けとなるような他の情報源からの情報もない。

たとえプーチンが病床にあったとしても、彼の健康状態についてロシア政府が進んで情報を開示するとは考えにくい。SVR将軍はただの噂話を流した過去もあり、今回の内容も疑って懸かる必要があるだろう。

SVR将軍は他にも、プーチンが昨年階段から落ちて失禁したとか、モスクワで暗殺されそうになったとか、12月に大腸の緊急手術を受ける予定だった、といった情報を流しているが、いずれも裏は取れていない。

 



トム・ノートン

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