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ガザ地区の病院空爆、イスラエルはイスラム過激派の誤射だと責任を否定。そこでバイデンは何を語るのか

ニューズウィーク日本版 2023年10月18日 17時24分

<ガザの病院に対する攻撃の責任をめぐって、パレスチナとイスラエルの言い分が真っ向から対立。間もなくイスラエルを訪問するバイデン米大統領も明言を避けているが、この悲劇と憎しみをどう収拾するのか>

<動画><閲覧注意>ガザ地区病院空爆、本当の被害

10月17日にガザ地区にあるキリスト教系の病院で爆発があり、数百人が死亡したと伝えられている事件について、ハマス、NGO、アラブ・イスラム諸国はイスラエル軍の空爆によるものだと非難し、イスラエルはパレスチナ人武装組織のロケット弾が原因だと主張している。

現在、イスラエルとの最大規模の紛争の渦中にあるイスラム教原理主義組織ハマスの傘下にあるガザのパレスチナ保健省は、アル・アハリ・アラブ・バプテスト病院が空爆され、少なくとも500人が死亡したと発表した。

声明の中でハマスは「シオニストの占領者による恐ろしい虐殺」が起きたと非難した。ハマスの政治指導者であるハリド・マシャルとイスマイル・ハニヤは、世界中のアラブ人とイスラム教徒に対し、抗議のために立ち上がれと呼びかけた。

「国境なき医師団」をはじめとする国際的な非政府組織は、この爆発をイスラエルの空爆によるものだとしている。バーレーン、エジプト、イラン、イラク、ヨルダン、レバノン、オマーン、パキスタン、カタール、サウジアラビア、シリア、トルコも、事件発生から数時間後に、イスラエルの空爆とみなされる今回の爆発を非難した。

ロケット弾攻撃の失敗か

だがイスラエル国防軍(IDF)は、この壊滅的な被害は、ハマスとともに戦う別のパレスチナ武装勢力「イスラム聖戦機構」によるロケット弾攻撃の失敗によるものだと主張した。

「IDFの作戦システムの分析によれば、ガザのテロリストが連射したロケット弾が、ガザのアル・アハリ病院のすぐ近くを通過していた」とIDFは声明で述べた。

「われわれの手元にある複数の情報源からの情報によれば、イスラム聖戦機構はロケット弾発射に失敗してガザの病院を爆発させた責任がある」

本誌は、死傷者の数や爆発が起きた原因を独自に確認することはできなかった。

その後、公開されたIDFのダニエル・ハガリ報道官のビデオ声明ではこの点をさらに強調し、「ガザの病院で罪のない人々を殺害したのは、イスラム聖戦機構である」と断言した。

IDFはさらなる声明で、「ガザ地区内のテロ組織はイスラエルに向けて無差別に発砲している」とし、「戦争が始まって以来、イスラエルに向けて発射された約450発のロケット弾がガザ地区内に落下し、ガザ住民の生命を危険にさらし、傷つけている」と主張した。

その後、ハガリはIDFの調査についてさらに詳しく説明し、イスラエルによるガザへの陸、海、空の攻撃を検証した結果、ロケット探知レーダーがアル・アハリ・アラブ・バプテスト病院に向かう一連のロケット弾を探知したと述べた。また、現時点では「病院に隣接した」地域でイスラエル軍による攻撃は行われておらず、被害の状況も「イスラエル空軍の弾薬に適合する」ものではなかったと主張した。

 

爆発の後、IDFはドローン一機を飛ばして現場を観察したという。ハガリは、被害状況を示すものとして空から映した病院の映像を記者団に公開し、「病院は直撃されていなかった」としながらも、ロケット弾が施設の駐車場に命中した結果、「直撃」したと評価された黒ずんだエリアがあるとした。

彼は、病院の附近、またはその地下に存在する「興味深い何か」が原因で二次爆発が起きた可能性を示唆したが、弾薬やその他の物質が保管されていたかどうかはまだ確認できていない。

ハガリはまた、IDFはアラビア語の会話の録音を入手しており、それはこの爆発の背後にイスラム聖戦機構がいたことを示唆していると述べた。

イスラム聖戦機構内の軍事組織アル・クッズ旅団は、この爆発についてすぐにメディア声明を出さなかったが、テルアビブ、アシュドッド、アシュケロンといったイスラエルの都市へのロケット弾攻撃を続けた。「占領軍の民間人に対する虐殺」に対する報復だという。

ドイツなどの一部の国やNGO、世界保健機関(WHO)などの国際機関は、アル・アハリ病院への攻撃を非難したが、原因については触れなかった。

ヨルダン訪問は延期

75年に及ぶイスラエル・パレスチナ紛争における破壊行為は、過去1年半の間に記録的なレベルにまで急増していた。そして、10月7日にハマスがイスラエルに仕掛けた前例のない奇襲攻撃と、それに対応するイスラエル国防総省によるガザ地区に対する過去最大規模の空爆は、ここ数十年で最も激しい武力衝突となっている。

イスラエル当局は、ハマスによる陸・空・海の攻撃以来、イスラエルで少なくとも1400人が死亡したと発表した。ガザ地区の当局者は、パレスチナ人の死者は3000人に達したと推定している。

アル・アハリ病院の爆発は、ジョー・バイデン米大統領がイスラエルに向けて出発する前夜に発生した。バイデンは同盟国として予定通りイスラエルを訪問し、イスラエルへの支持を確認する。その後に予定されていた隣国ヨルダンへの訪問は延期された。

ホワイトハウスは17日夕方に声明を発表。バイデンは「ガザのアル・アハリ病院での爆発と、その結果生じた恐ろしい人命の損失に憤りを覚えると共に、深く悲しんでいる」と伝えた。バイデンは、ヨルダンのアブドラ2世国王とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と話したという。だが責任の所在については触れなかった。

「アメリカは、紛争の間、民間人の生命を守るために断固として立ち上がる」と、バイデンは述べた。「われわれは、この悲劇で死傷した患者、医療スタッフ、その他の罪のない被害者を哀悼する」

 

<動画><閲覧注意>ガザ地区病院空爆、本当の被害



トム・オコーナー

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