<オーストラリアで見つかったホホジロザメの死骸は、肝臓を狙われてシャチの群れに襲われたものと見られている>
オーストラリアの海岸で、激しく損傷して打ち上げられたホホジロザメの死骸が見つかった。約3メートルの体はバラバラに引き裂かれていたが、これはシャチの群れに襲われたことが原因と見られている。
■【動画】閲覧注意:シャチに襲われた? バラバラに引き裂かれたホホジロザメの衝撃的な姿を海岸で発見
ビクトリア州南岸のケープブリッジウォーター付近で発見されたこのサメは、体長約3メートルで、シャチに襲われたような傷が全身にあった。地元のラジオ局ABCサウスイーストSAによれば、地元の漁師がこのサメを発見した10月17日、沖合ではシャチの群れが目撃されていたという。
オーストラリア、アデレードにあるフリンダース大学の栄養生態学者ローレン・マイヤーは、このサメは、肝臓を狙われてシャチに襲われた可能性が高いと考えている。シャチのこうした行動は、世界のほかの海域でもまれに見られるものだ。
シャチによるホホジロザメへの同様の攻撃は、南アフリカや米国などで確認されている。シャチはホホジロザメを狩り、特に脂肪が多い部位である肝臓を正確に取り出し、残りの死骸を捨てる。
マイヤーはABCの取材に対し、「なぜシャチがこれほど偏食なのか、実はよくわかっていない」と述べている。「これはザトウクジラなどに関しても見られる行動だ。(シャチたちは)ザトウクジラの舌を食べ、残りを捨ててしまう」
「シャチたちが、ホホジロザメやアオザメ、クロヘリメジロザメ、エドアブラザメ、イタチザメの肝臓を好むことは確かだ。本当に不思議だが、マンボウやジュゴンについては、腸を好んで食べることもわかっている」
マグロしか食べない個体、哺乳類を食べる個体
南アフリカ、マカンダにあるローズ大学でサメの研究を行っているアリソン・タウナーは本誌の取材に対し、「サメの肝臓は脂質と栄養が豊富で、体重の非常に大きな部分を占める。シャチにとっては貴重な餌だ」と説明する。
しかし、すべてのシャチがこのような行動を取るわけではない。群れの中でおこなわれる「社会的学習」によって、マグロしか食べないシャチもいれば、(クジラなどの)哺乳類を食べるシャチもいる。
「南アフリカではかつて、沿岸のサメを捕食することが確認されていたシャチは、特定のペアだけに限られていた」とタウナーは話す。
「2022年、ドローンの映像から、既知のペアの片方と一緒に、ほかのシャチたちも同様の行動を取っていることが判明した。シャチは、急速な学習をおこなうことが知られているが、この行動がそうした文化的伝達によるものかはまだわからない。また、こうした行動が広まっているかもわからない。観察が継続されている」
シャチたちのこうした行動は、当該海域の生態系に影響を与えている。南アフリカ沖では、ホホジロザメとクロヘリメジロザメが、シャチが回遊する場所を避けているのが観察されている。それらの海域では、以前は食物連鎖の頂点にこうしたサメが君臨していたのだが、シャチの影響で数が激減する事態となっている。
「サメの減少は中位捕食者の解放につながる」
「海洋生態系の頂点捕食者であるホホジロザメの減少や移動は、中位捕食者の解放につながる可能性がある」とタウナーは説明する。「南アフリカなどの海域では、シャチが原因でホホジロザメが不在になり、ミナミアフリカオットセイと、絶滅の危機にあるケープペンギンとの間で、小型の遠洋魚を巡る競争が激化している」
オーストラリアの研究者たちは現在、サメの死骸に残された傷の調査や、「犯人」が残した唾液などの残留物に関する遺伝子調査をおこなっている。
サメとシャチの相互作用に関する国際的なデータベースを作成するプロジェクトの一員でもあるフリンダース大学のマイヤーは、「シャチはとても神秘的な動物だ。われわれがシャチに接する機会があまりないからだ」と話す。
「あまり見られない動物であるし、群れやエコタイプ(特定の環境条件に適応した個体群)によって行動がかなり異なるため、シャチ全体について何らかの結論を導き出すのは難しい」
(翻訳:ガリレオ)
ジェス・トムソン
オーストラリアの海岸で、激しく損傷して打ち上げられたホホジロザメの死骸が見つかった。約3メートルの体はバラバラに引き裂かれていたが、これはシャチの群れに襲われたことが原因と見られている。
■【動画】閲覧注意:シャチに襲われた? バラバラに引き裂かれたホホジロザメの衝撃的な姿を海岸で発見
ビクトリア州南岸のケープブリッジウォーター付近で発見されたこのサメは、体長約3メートルで、シャチに襲われたような傷が全身にあった。地元のラジオ局ABCサウスイーストSAによれば、地元の漁師がこのサメを発見した10月17日、沖合ではシャチの群れが目撃されていたという。
オーストラリア、アデレードにあるフリンダース大学の栄養生態学者ローレン・マイヤーは、このサメは、肝臓を狙われてシャチに襲われた可能性が高いと考えている。シャチのこうした行動は、世界のほかの海域でもまれに見られるものだ。
シャチによるホホジロザメへの同様の攻撃は、南アフリカや米国などで確認されている。シャチはホホジロザメを狩り、特に脂肪が多い部位である肝臓を正確に取り出し、残りの死骸を捨てる。
マイヤーはABCの取材に対し、「なぜシャチがこれほど偏食なのか、実はよくわかっていない」と述べている。「これはザトウクジラなどに関しても見られる行動だ。(シャチたちは)ザトウクジラの舌を食べ、残りを捨ててしまう」
「シャチたちが、ホホジロザメやアオザメ、クロヘリメジロザメ、エドアブラザメ、イタチザメの肝臓を好むことは確かだ。本当に不思議だが、マンボウやジュゴンについては、腸を好んで食べることもわかっている」
マグロしか食べない個体、哺乳類を食べる個体
南アフリカ、マカンダにあるローズ大学でサメの研究を行っているアリソン・タウナーは本誌の取材に対し、「サメの肝臓は脂質と栄養が豊富で、体重の非常に大きな部分を占める。シャチにとっては貴重な餌だ」と説明する。
しかし、すべてのシャチがこのような行動を取るわけではない。群れの中でおこなわれる「社会的学習」によって、マグロしか食べないシャチもいれば、(クジラなどの)哺乳類を食べるシャチもいる。
「南アフリカではかつて、沿岸のサメを捕食することが確認されていたシャチは、特定のペアだけに限られていた」とタウナーは話す。
「2022年、ドローンの映像から、既知のペアの片方と一緒に、ほかのシャチたちも同様の行動を取っていることが判明した。シャチは、急速な学習をおこなうことが知られているが、この行動がそうした文化的伝達によるものかはまだわからない。また、こうした行動が広まっているかもわからない。観察が継続されている」
シャチたちのこうした行動は、当該海域の生態系に影響を与えている。南アフリカ沖では、ホホジロザメとクロヘリメジロザメが、シャチが回遊する場所を避けているのが観察されている。それらの海域では、以前は食物連鎖の頂点にこうしたサメが君臨していたのだが、シャチの影響で数が激減する事態となっている。
「サメの減少は中位捕食者の解放につながる」
「海洋生態系の頂点捕食者であるホホジロザメの減少や移動は、中位捕食者の解放につながる可能性がある」とタウナーは説明する。「南アフリカなどの海域では、シャチが原因でホホジロザメが不在になり、ミナミアフリカオットセイと、絶滅の危機にあるケープペンギンとの間で、小型の遠洋魚を巡る競争が激化している」
オーストラリアの研究者たちは現在、サメの死骸に残された傷の調査や、「犯人」が残した唾液などの残留物に関する遺伝子調査をおこなっている。
サメとシャチの相互作用に関する国際的なデータベースを作成するプロジェクトの一員でもあるフリンダース大学のマイヤーは、「シャチはとても神秘的な動物だ。われわれがシャチに接する機会があまりないからだ」と話す。
「あまり見られない動物であるし、群れやエコタイプ(特定の環境条件に適応した個体群)によって行動がかなり異なるため、シャチ全体について何らかの結論を導き出すのは難しい」
(翻訳:ガリレオ)
ジェス・トムソン