Infoseek 楽天

インドネシア大統領選、顔ぶれほぼ確定 最有力候補は大統領長男を副大統領に指名

ニューズウィーク日本版 2023年10月23日 16時11分

<1度は否決された大統領長男の出馬が可能となり、最強の正副大統領候補コンビが誕生......>

2024年2月のインドネシアの大統領選に向けた正副大統領候補の顔ぶれがほぼ確定した。10月19日から始まった総選挙管理委員会への正副大統領候補の届け出でガンジャル・プラノウォ中ジャワ州知事とアニス・バスウェダン前ジャカルタ州知事はそれぞれペアを組む副大統領候補を指名して届け出た。

最大与党「闘争民主党(PDIP)」所属のガンジャル州知事はジョコ・ウィドド内閣の重要閣僚であるモハンマド・マフード政治・法務・治安担当調整相をペアの相手に指名。アニス前ジャカルタ知事はイスラム教徒が支持基盤の政党「国民覚醒(RKB)」のムハイミン・イスカンダル党首を指名、それぞれ届け出た。

プラボウォ国防相がギブラン市長擁立へ

一方で最有力候補とみなされるプラボウォ・スビアント国防相は22日になってようやくジョコ・ウィドド大統領の長男ギブラン・ラカブミン・ラカ中部ジャワ州ソロ市長を指名する方針を発表。届け出最終日の25日に正式に届け出るとの方針を明らかにした。

ギブラン市長を巡っては政党関係者などが大統領選への立候補可能な年齢制限の下限を現行の40歳から35歳に引き下げるという請願を憲法裁判所に提出、審理が続いていた。

10月16日に憲法裁は年齢制限の下限変更を否決、ギブラン市長の大統領選への出馬は不可能となった。

ところが、同日に別の判断を憲法裁は示し、年齢制限の下限変更は認めないものの「選挙で選ばれた州知事、県知事市町村長などはこの限りに非ず」としたのだった。

これにより36歳ながら現職のソロ市長であるギブラン氏の大統領選への立候補が可能となったのだ。

この裁定に関係した裁判官の中にジョコ・ウィドド大統領の親戚が含まれていたことからマスコミは「政治的中立性に欠ける判断だ」と一斉に反発。

ジャカルタ市内中心部モナス周辺ではギブラン市長の立候補への道を開いた憲法裁と背後で暗躍しているとみられるジョコ・ウィドド大統領を非難するデモが起きる事態になっている。

大統領とPDIP党首の確執決定的に

今後ギブラン市長がプラボウォ国防相とペアを組む副大統領候補になれば、対抗馬であるガンジャル州知事と同じPDIP所属同士の対決というに構図になり、PDIPがどう対応するのか注目される。

このギブラン市長のプラボウォ陣営への参加はかねてから言われてきたジョコ・ウィドド大統領とPDIP党首メガワティ・スカルノプトリ元大統領との間の不仲説、確執説を裏付けるもので、両者の関係は修復不可能の段階に入ったと地元マスコミは報じている。

どうなる今後の展開

2014年、2019年の大統領選でジョコ・ウィドド大統領に僅差で敗北したプラボウォ国防相は1998年に崩壊した長期独裁政権を築いたスハルト大統領の女婿(すでに離婚)であり、陸軍の特殊部隊や戦略予備軍の司令官を務めるなど軍のエリートだった。

スハルト大統領のような強権的で強い指導者を求める国民は多く、各種世論調査ではガンジャル州知事とトップ争いを演じている。

スマトラ島やカリマンタン島、スラウェシ島などでの人気は高く、全国的な知名度がある。

これに対しガンジャル州知事はPDIPが伝統的に強い中ジャワ州、東ジャワ州、バリ州などで圧倒的な人気だが、全国レベルではプラボウォ国防相には及ばず、僅差での接戦が予想されている。

アニス前知事は世論調査でガンジャル州知事、プラボウォ国防相には水を開けられ常に3位に甘んじている。以前、教育文化相を務めている時代に汚職の疑惑が取り沙汰されたこともあり、全国的な支持や人気はガンジャル州知事やプラボウォ国防相には「遠く及ばない」のが現状だ。

大統領候補の届け出を受けて11月28日から2024年2月10日までの長期間の選挙キャンペーンを経て2024年2月14日に投票が行われることになっている。

インドネシアの大統領選挙はフィリピンのように正副大統領のペアがそれぞれ独自に投票を受けるのとは異なり、ドゥテルテ比前大統領時代に副大統領として野党のレニー・ロブレド氏が選出され正副大統領のバランスを取ったような事態にはならない。

インドネシアは正副大統領のペアを有権者が選ぶ方式で副大統領候補の人選が重要と言われている。

総選挙法では2017年に「正副大統領候補のペアは得票の50%を獲得し、なおかつ全州のうち少なくとも半分以上の州で最低20%を得たら当選となり、そうでない場合は上位2候補者による決戦投票を実施する」と規定されている。

現状ではプラボウォ国防相が勝利するか、ガンジャル州知事が決戦投票に持ち込むかが焦点となっている。

大塚智彦

この記事の関連ニュース