Infoseek 楽天

ロシア軍の戦死者1日の最悪を更新? 原因はアウディーイウカの戦略ミス

ニューズウィーク日本版 2023年10月23日 19時39分

<最近の大規模攻撃でロシア軍の死者は急増し、空前のレベルに達するとウクライナ側が発表。ロシアの犠牲が大きいことは確実だ>

<動画>ウクライナ軍のドローン攻撃で次々と誘爆するロシア戦車

ウクライナでのロシア軍の兵員の損失はここへきて急増し、死傷者数は30万人に近づいている、とウクライナ側が発表した。

ウクライナ軍参謀本部が10月21日に出した最新情報によれば、2022年2月の戦争勃発以来、ロシア軍は約29万2850人の兵士を失ったという。そのうち790人は過去24時間以内に死亡した。

その前日の20日には、ロシア軍が1日で1380人の戦闘員を失ったと発表。ほぼ20カ月に及ぶこの戦争において、ロシア軍にとって最も人命の損失が大きい戦闘だったと述べた。

ロシアはウクライナ戦争における自軍の死傷者数を発表していない。ロシア国防省は20日、ウクライナ軍は過去1週間、クピアンスク周辺の前線で約995人、ドネツクのライマン周辺で940人の戦闘員を失ったと発表した。

ロシアによると、ウクライナ軍はドネツク周辺で2065人以上の兵士を失い、さらにロシアが併合した地域の南部で過去7日間に1010人の兵士が戦線離脱したという。ウクライナは同じ期間にザポリージャ南部とへルソン地方でさらに820人の兵士を失った、とロシア政府は発表した。

ロシア側が発表したこれらの数字を合計すると、10月14日〜20日の間にウクライナ南部と東部で失われたウクライナ軍兵士は3895人となる。ウクライナ軍参謀本部は、同時期にロシア軍は6140人を失ったと主張している。

自国の被害は認めない

本誌は、ロシアとウクライナが発表した数字を独自に確認することはできなかった。ロシアもウクライナも自国の被害については口を閉ざし、自国の死傷者数や破壊された軍備の量について、認めることはほとんどない。

「現在進行中の紛争で死傷者数を特定するのはきわめて難しい。双方がデータを秘密にし、敵の死傷者数を膨らませようとするからだ」と英ロンドン大学キングス・カレッジ戦争学部の特別研究マリーナ・ミロンは今年5月に本誌に語っている。

ロシアは10月から、ウクライナ軍が6月初めに夏の反攻を開始して以来初の大規模な攻撃を開始し、ウクライナ東部ドネツクの町アウディーイウカに焦点を当てた。このコークス生産の中心地は、9年前からウクライナとロシアおよび、親ロシア派武装勢力の間の戦闘の最前線になっている。ここで勝てばロシア政府にとって戦術的にも象徴的にも重要な勝利となっただろう。

だがロシアはアウディーイウカ周辺の領土をいくらか獲得したものの、西側のアナリストはすぐに、この攻撃で多くの兵士と軍備を失ったと評価した。

ロシア軍は軽歩兵を「確実な死」にさらしていると、アウディーイウカを担当するウクライナ軍タブリア部隊のオレクサンドル・シュトゥプン報道官は17日に本誌に語った。

 

ウクライナ政府高官や西側の専門家たちは最近、ロシアの攻撃は絶望的で、攻撃の回数は減少しているという見方を示していた。

だがロシア軍部隊は20日、「アウディーイウカ近郊で再び攻勢を開始」し、わずかな領土を確保したと、ワシントンのシンクタンク戦争研究所(ISW)は最新の分析で述べた。

ISWによれば、ロシア軍司令官たちは、物資や人員の莫大な損失にもかかわらず、この地域での攻撃作戦に全力を尽くしている。

ウクライナの参謀本部は21日、「わが軍の兵士は着実に防衛を維持し、敵に多くの損害を与えている」と述べた。

だがロシア軍の死傷者の急増は、アウディーイウカに対する戦略的に誤った攻勢に負うところが大きいと、英国防省は分析する。アウディーイウカに対する度重なるロシア軍の攻撃はこれまでのところすべてウクライナ軍に跳ね返されたと、同国防省は22日に指摘した。

 

<動画>ウクライナ軍のドローン攻撃で次々と誘爆するロシア戦車

 



エリー・クック

この記事の関連ニュース