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時事芸人・プチ鹿島がラグビー日本代表の「多様性」を語るときにモニョる理由

ニューズウィーク日本版 2023年11月4日 17時35分

<国連が指摘するように日本では女性や外国人などへの差別が残り、また「人権侵犯」杉田水脈議員を政権与党が重用している。この現状を尻目にラグビーだけを褒めるのは、どうなんでしょう?>

こんにちは、プチ鹿島と申します。時事ネタ好きの芸人で、新聞15紙を読み比べをするのが趣味です。今回からコラムを書かせていただきます。

この原稿が世に出る頃は、ラグビー・ワールドカップの決勝が行われた後のはず。そこでラグビーの記事を取っ掛かりに、いろいろ見えてくるものを考えてみたい。

ラグビーは「多様性」がよく報じられている。外国籍選手も一定期間の居住などの条件を満たせば日本代表になれるからだ。

「さまざまな国籍やルーツを持った選手がいる日本代表は、日本人の代表というより、日本で暮らし、日本でプレーする選手の代表ということになる」(読売新聞オンライン、9月28日)。

いいですねぇ。何とも言えない開放感がある。でも一方で思う。日本社会そのものの多様性はどうなんだろう?と。スポーツのときだけ多様性を「自慢」してないだろうか?

国連が指摘した日本社会の問題

そう感じたのはジャニーズ問題を追っていたときだ。創業者ジャニー喜多川氏の長年にわたる性加害がやっと明らかになった。そこでもう一度思い出したいニュースがこちら。

「ジャニーズ性加害、国連専門家が被害者らと面談へ...『ビジネスと人権』作業部会」(読売新聞オンライン、7月15日)。

国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会の専門家が日本を訪問。てっきりジャニーズだけの調査かと思いきや、それだけではなかった。

「ジャニーズ以外にもこんなにも...日本の問題 国連人権理事会作業部会の指摘 女性も、障害者も、労働者も...」(東京新聞、8月12日)。

記事によると、声明では「リスクにさらされている」人たちとして、「女性」「LGBTQI+」(性的少数者)「障害者」「先住民族」「部落」「労働組合」の6つを取り上げた。

つまり国連は、日本にはまだ人権侵害を生む構造的な問題が残っていると考えたのだ。そのせいでリスクにさらされた人たちがいると。

例えば最近のニュースを挙げると、自民党の杉田水脈議員はアイヌ民族や在日コリアンなどに対する差別的投稿をめぐり札幌・大阪法務局から「人権侵犯」があったと認定された。

日本は人間を尊重する社会ではない?

これだけでも驚くが、気になるのは自民党は札幌法務局の人権侵犯認定後、杉田氏を「党環境部会の会長代理」に起用していることだ。

ここで思い起こしたいのはジャニーズ問題である。性加害問題を受け、各企業は人権侵害に寛容と思われないためCM起用などから撤退している。当然の判断だと思うが、自民党は人権侵犯と認定された杉田氏をむしろ重用しているように見える。政党と企業は違うとはいえ、この差はなんだろう。それともこれが自民党の「ビジネス」なのだろうか。

このように国連の「ビジネスと人権」作業部会に指摘された件は、いろいろと考えてしまう。ラグビー日本代表の「共に生きる」姿を見ると、同時に見えてくるのは日本は人間(人権)を本当に尊重していたのか?という問いなのだ。

スポーツのときだけ多様性を誇るのは、どうなのでしょうか。

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