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77%が「管理職になりたくない」、男女で違う理由、打診を断られない方法は?

ニューズウィーク日本版 2023年10月30日 6時45分

<経営者からは嘆きの声。出世したくない若者が増えているが...>

働き方が多様化しワークライフバランスが重視される中、「管理職になりたくない」と思う人が増えているようです。日本能率協会マネジメントセンターの調査によると「管理職になりたくない」と答えた一般社員は77.3%にのぼります。

組織開発コンサルタントである筆者にも「社員に管理職を打診したら断られた」という経営者からの嘆きの声が上がってきます。しかし、組織存続のためにマネジメント層はなくてはならない存在です。

今回は、管理職になりたいと思う社員を増やしていくにはどのような取り組みが必要なのか考えていきたいと思います。

【参考】「管理職の実態に関するアンケート調査」2023年/日本能率協会マネジメントセンター

管理職になりたくない理由とは

昇格により収入が増えキャリアアップにもなるはずなのに、多くの人が「管理職になりたくない」と思う理由はなんでしょうか。

その理由を一言で要約すると管理職というマネジメントを行う役割に対して、マイナスなイメージが浸透していることではないかと考えられます。代表的なマイナスイメージは、下記の3つです。

■1. 責任が重すぎる

管理職になると自分のことだけではなく、チーム全体の業務に対して責任を負わなければならず精神的なストレスが大きいため。

■2. 業務量や拘束時間が増える

新たにマネジメント業務が付加され業務量が増えるだけではなく、夜間や休日も緊急対応で呼び出しがかかる場合もあり、プライベートは重視できないため。

■3. 完璧を求められる

誰よりも業務内容を熟知してチームを引っ張っていけるような強靭なリーダーシップを発揮できる完璧なリーダーを求められる。

こうしたマイナスイメージが広がり、管理職になるメリットが少ないという認識が定着していると考えられます。

男女別「管理職になりたくない理由」

管理職になりたくない理由について、男女別の特徴を見てみましょう。

■女性
1位:責任が重い
2位:仕事・残業が増える
3位:管理職に向いていない

■男性
1位:責任が重い
2位:割に合わないと感じる
3位:仕事・残業が増える

男女とも管理職になりたくない理由は類似していますが、特に「仕事・残業が増える」という理由において男性よりも女性のランキングが高い結果から見ると、ライフステージの変化が大きい女性には家庭やプライベートを犠牲にする働き方は望まないという傾向が強いと考えられます。また、「管理職に向いていない」という女性の回答が多いのも特徴的です。

従来型の組織において、管理職といえば圧倒的に男性でした。女性活躍推進の動きが加速し女性管理職が増加しているとはいえ、まだ多くの企業では、男性の管理職が多数を占めます。そのような男性管理職の働き方は、長時間労働が当たり前。プライベートを犠牲にし、強いリーダーシップを発揮してチームをまとめているというイメージが強いのです。

そんな組織環境で育ってきた女性社員にとって、無意識のうちに管理職=男性であり、子育てや介護をしている女性には務まらないという認識が広がっていると考えられます。

【参考】「管理職になりたくない理由」アンケート調査2022年/株式会社ビズヒッツ

(参考記事)次の候補がいないのはなぜ?管理職不足に陥る中小企業にありがちな3つの原因

管理職になりたいと思う社員をどう増やす?

社員を動機づけるためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。

■1. マネジメント層の仕事を整理し、業務を抱え込ませない

「今の管理職を見ていると大変そう......」というイメージを払拭するためにも、管理職の業務整理が必須です。

できる限り現場業務から離れて、マネジメント業務に集中できるように業務改善を進めましょう。管理職でなくてもいい仕事は積極的に部下に割り振り、管理職の業務を意識的に部下に開示することも大事です。

管理職に業務を抱え込ませずチームで連携しながら成果を上げていくように業務プロセスを見直し、管理職も極力残業をしないような働き方を促していきましょう。

■2. 次世代リーダーを早めに育てる

一般社員がいきなりジャンプアップして管理職になるというのはハードルが高く、リーダー未経験の社員にとっては「できるわけがない」と感じてしまいます。

管理職になってほしいと思う社員に対して、少しずつリーダー経験ができる機会を提供していきましょう。後輩の指導役を任命する、プロジェクトリーダーを任せるなど、役職がつく前に「プチ管理職体験」を積ませてみるのです。

その体験をしっかり見守りフィードバックをしながら、「私にもできるかも」という実感を与えていくことにより、管理職に対してチャレンジしてみたいという気持ちも醸成されていくことでしょう。

■3. キャリアビジョンについて定期的に対話をする

管理職になることは会社の都合だけではなく、自己成長にもつながると認識してもらうことがポイントです。管理職になることで一般社員では見えなかった新たな経験ができ、視野が広がり、自分自身の市場価値も高まるといったメリットを伝えていくことが大切です。

そして、仕事を通してどのようなことを実現したいのか、どんなキャリアを描いているのかなど、定期的に個人のキャリアビジョンについて対話をしながら、会社としてもチャレンジを後押ししたいという姿勢を見せることも重要です。

■4. 責任に合った報酬を支払う

管理職には「組織指針の浸透」「業務の管理」「部下の育成」など、一般社員と比較して複雑で難易度の高い役割が求められます。こうした責任のある仕事に見合った報酬を支払うことも大切です。

管理職になり、責任に見合った収入が得られることは、管理職本人のやりがいやモチベーションが向上するだけではなく、部下にとって管理職のイメージアップにつながることでしょう。

(参考記事)思わぬ落とし穴も!? 義務化された「管理職の労働時間把握」罰則と勤怠管理法を解説

最後に

筆者の経験ですが、管理職に対してマイナスイメージを持っていたクライアント企業の社員が、管理職に昇格し意識的に現場に業務を任せたところ、部下たちがどんどん成長しチーム全体の成果も上がりました。

その姿を見て「管理職にはマイナスイメージしかなかったけど、実際にやってみて管理職の楽しさがわかった」と楽しそうに話していました。

一般社員と比べて大変な側面もあるかと思いますが、管理職だからこそ経験できる管理職業務の醍醐味があるはずです。この醍醐味を味わえる社員を1人でも増やせるように、日頃から一般社員と対話をしながらチャレンジしてみたいと思う環境をつくってみてはいかがでしょうか。

[執筆者]
波上こずみ
那覇市首里出身。株式会社JTBワールド、一般財団法人沖縄観光コンベンションビューローを経て2016年Cosmic Consulting設立。経営理念や組織ビジョンを軸にした「組織開発」を通して、社員一人ひとりの強みを発揮しながらチームの成果を最大化するための組織づくりをサポートしている。のべ100社以上のコンサルティング実績があり、行政・各種団体等主催セミナー・企業研修など120社以上の研修講師実績を持っている。

※当記事は「経営ノウハウの泉」の提供記事です






波上こずみ ※経営ノウハウの泉より転載

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