Infoseek 楽天

ペットと一緒に寝てもいいのか?...「睡眠の質」と「心臓発作」に関する最新研究

ニューズウィーク日本版 2023年11月8日 14時40分

<大好きな飼い猫と快適な添い寝をするために、今すぐ実践するべきベッドルームの掟とは?>

自由気ままな性質とは裏腹に(いや、もしかするとそのおかげで)、猫は人間を穏やかな気持ちにしてくれるパワーがある。とはいえ、寝るときも一緒というのはどうなのか。

米メイヨー・クリニック睡眠医療センターの調査によると、ペットを飼っている人の半分以上(主に猫か犬の飼い主だ)がペットと添い寝している。

確かに猫の睡眠時間は1日12~18時間だが、人間が睡眠を取る時間帯とはズレがある。それによくある誤解だが、猫は夜行性ではなく薄明薄暮性、つまり明け方と夕方に最も活発になる。「一晩中元気な猫もいるが、だからといって夜行性というわけではない」と、動物愛護協会は指摘している。

ペットが飼い主のストレスを軽減したり、健康的な生活習慣を促したりすることで、心身のさまざまな問題を改善してくれることはよく知られている。

2016年のイギリスの研究チームの報告によると、「ペットは、病気や動揺するような経験から患者の気持ちをそらし、体を動かすことを促すことにより、貴重な病気療養の機会を提供する」ことが分かった。

ただ、もともと飼い主の寝つきが悪かったり、飼い猫が特に落ち着きのない活発な性格の場合、添い寝は飼い主の健康にマイナスの影響を与えるかもしれない。

「私自身は猫と一緒に寝るのが大好きだ」と、フロリダ州で動物病院キャット・ケア・クリニックを運営する獣医師アンバー・カーターは言う。

「でも、ぐっすり寝たいときには最高の環境とは言えない。よく人間がベッドの端にしがみつくように寝ていて、真ん中では猫たちがくつろいで眠っているイラストがあるが、まさにわが家の光景だ」

それでも多くの人がペットとの添い寝を選ぶのは、幸せな気持ちになれるからだ。米国立衛生研究所(NIH)によると、動物と一緒に時間を過ごすと、代表的なストレスホルモンであるコルチゾールのレベルが低下する。

「動物は人間の孤独を和らげ、社会的なサポートを与え、気分を高揚させてくれる」

「飼い猫と一緒に寝ると絆が深まる」と、カーターは言う。「猫を寝室から閉め出さないことで、猫にとってもストレスが低下して、飼い主との信頼関係を深められる」

心臓発作による死は30%低下

ただ、「全ての猫と人間が添い寝に向いているわけではない」と、カーターは語る。「むしろ飼い主の睡眠の質を大いに低下させて、健康に悪影響を及ぼす要因もある」

米疾病対策センター(CDC)によると、18~60歳の成人に必要な睡眠時間は1日7時間以上だ。「睡眠時間も重要だが、睡眠の質も、心身の健康に影響を与える」とCDCは指摘している。

「十分眠っているのに疲れが取れないとか、夜中に何度も目が覚めるとか、睡眠障害の症状(いびきや息切れ)があるときは、良質な睡眠が確保できていない可能性がある」

ミネソタ大学の研究チームが約4000人のアメリカ人を20年にわたり追跡調査したところ、猫を飼っている人は飼っていない人よりも心臓発作による死亡リスクが30%低いことが分かった。だが、猫と添い寝をすることで睡眠不足に陥れば、逆に心臓発作のリスクは高まる。

「睡眠時間が7時間未満の成人は、心臓発作やぜんそく、鬱など健康上の問題を抱えている可能性が高い」とCDCは指摘する。

猫は小さな湯たんぽと同じ

猫は眠りが浅く、睡眠のパターンも人間とは違うから、添い寝は飼い主の睡眠の質を低下させる恐れがある。

「猫は眠っている人間の顔をつついたりして、いろいろな時間に飼い主の注意を引こうとする。飼い主の足にアタックしてきたり、顔をなめたりするのも、猫にとっては楽しいゲームなのかもしれない」と、カーターは言う。

逆に、「すやすや眠っている猫の上に飼い主が寝返りを打ったりして驚かせれば、猫は脅威を感じて攻撃的になるかもしれない」。

シアトルに拠点を置くウェルネス財団スリープ・ファウンデーションによると、人間がぐっすり眠るのに最適な室温は18度。これに対して、猫の平均体温は38~39度だ。従って、猫とくっついて寝ると、飼い主の眠りが妨げられる恐れがある。

「猫の平熱は人間よりも高い」と、カーターは言う。「とりわけ暑がりな人にとっては、猫との添い寝は不快なものになりかねない。猫は小さな湯たんぽのようなものだ」

では、猫との快適な添い寝を実現するにはどうすればいいのか。

まず、寝室に空気清浄機を置けば、猫の毛などくしゃみのもとになる浮遊物を最小限に抑えることができると、クリーブランド・クリニックは指摘する。頻繁にシーツを交換するのもいい。

「犬や猫などのペットは、フケや『真菌状の微生物』を寝室にもたらすことがある」と同クリニックは指摘する。「週に1回を目標に寝具を洗濯すると、厄介なものが蓄積するのを防ぐことができる」

ペットを寝室に入れてやる場合でも、寝る場所をしつけることは可能だ。クリーブランド・クリニックは、「ベッドの上の特定の場所で寝るようしつけることで、一緒に寝るとはいえ、一定の距離を維持することを考えてみるのもいい」と提案する。「飼い主のベッドの下に猫用のベッドを設置するという手もある」

また、「子猫がベッドに上がるのをやめさせたいなら、今すぐ行動を起こすべきだ」とカーターは語る。

「猫が快適に過ごせる寝床をいくつか用意して、猫が選べるようにしてほしい」とも、彼女は言う。「初めて家に来たときは、個室に隔離することになるだろう。柔らかい猫用のベッドや隠れ場所をつくってあげよう。大きくなったら、そのベッドを別の場所に移せばいい」

ただ、一定の年齢以上の猫になると、飼い主と添い寝する習慣を変えるのは難しいかもしれない。「究極的には、寝室から閉め出す必要があるかもしれない」とカーターは言う。「その場合は、猫が快適に眠れるように獣医師がサプリメントや薬を処方してくれるだろう」

猫がリラックスする音楽

Relaxing Music for Cats - Soothing Music for Cats | Cat Purring Sounds | Sleepy Cat/Sleepy Cat

    

レオニー・ヘルム

この記事の関連ニュース