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人類ならあるはずの「部位」がない...メキシコ議会で公開された「宇宙人のX線写真」に専門家も反応

ニューズウィーク日本版 2023年11月10日 18時23分

<人体に必要な肺や肋骨がない「新種の生き物」だという「謎の遺体」は本物の宇宙人か、それとも偽造されたものか>

メキシコ議会の公聴会で「UFO研究家」が発表した内容が注目を集めている。11月7日、彼が議会に持ち込んだのは、見た目はミイラ化した人間の遺体のようなものの写真とX線写真。これには人体ならあるはずの2つの部位が欠けており、それにより遺体は宇宙人のものだと主張した。公聴会での議論は3時間にもおよんだが、専門家からは懐疑的な見方が示されている。

■【動画】メキシコ議会で公開された「宇宙人のX線写真」...人間ならあるはずの部位がない

AP通信の報道によれば、「UFO研究家」を自称するメキシコ人ジャーナリストのハイメ・マウサンとペルー人のダニエル・メンドーサ博士は、メキシコ議会の公聴会に出席。ペルーで発見された「人間ではない生物」の遺体とされるものの写真およびX線写真を提示した。これを基に、公聴会では3時間におよぶ議論が展開されることとなった。

最近、UFOや地球外生命体の存在への関心はアメリカでも再燃している。7月に、米下院監視小委員会が未確認異常現象(いわゆるUFO)に関する公聴会を開き、国防総省の元職員や元海軍幹部ら3人が「何度も説明のつかない未確認異常現象に遭遇した」と証言したことがきっかけだ。

メキシコ議会の公聴会でマウサンは、自分が発見したものには人体にとって重要な2つの部位である「肺と肋骨」がなく、これは「新種の生き物」だと強調した。ただこの主張に対し、多くの専門家からは懐疑的な見方が示されている。背景には、9月に開かれた前回の公聴会でマウサンが行った「地球外生命体」に関する発見が、「偽造」と疑われていることもある。

本誌はこの件についてマウサンにコメントを求めたが、返答はなかった。

ペルーの検察当局は「最近つくられたもの」と判断

メキシコ議会では9月にUFOに関する初の公聴会が開かれ、マウサンはその場で「宇宙人の遺体」だとする2つの物体を披露。地球外生命体は存在する可能性があると強調した。この「遺体」は目、鼻や口のついた人間のような顔を持ち、新生児ぐらいの大きさで、マウサンはこれらが1000年前のものだと主張した。

ペルー沿岸の砂漠地帯で発見された「人間ではない生物」がミイラ化したものだとするこの「遺体」には、議員たちから懐疑的な声が上がった。マウサンは2017年にペルーでも同様の発表を行ったが、その後ペルーの検察当局は、マウサンが披露した「遺体」が実際には「最近つくられた人形」を紙と接着剤で覆い、皮膚がミイラ化しているように見せかけたものだと発表していた。

元米軍パイロットは「根拠のない馬鹿げた発表」と失望

マウサンの9月の発表に対しては、米下院監視小委員会の公聴会で証言を行った3人のうちの1人である元米海軍パイロットのライアン・グレーブスも苛立ちを示していた。グレーブスは9月のメキシコ議会の公聴会に出席し、マウサンが問題の発表を行う前に証言を行っていた。

自分の証言は「パイロットが経験した未確認異常現象に対する政府の高い関心を維持する」ことが目的だったのに、マウサンによる発表は「この問題を大きく後退させる」ものだと、彼は批判した。

グレーブスは(メキシコ議会での)証言後、X(旧ツイッター)に「私は今後も未確認異常現象について、航空宇宙の安全、国家の安全と科学にまつわる喫緊の要件として、認識を高めるための活動を行っていくつもりだ。しかし、今回の根拠のない馬鹿げた発表にはとても失望している」と投稿した。

メキシコの一部議員らは、マウサンの主張のように根拠のない主張であっても、今後も議会で取り上げるべきだという考えを示した。AP通信によればセルヒオ・グティエレス・ルナ議員は「あらゆるアイデアや提案について、それに同意できるか否かに関係なく、今後も議論を歓迎するし、耳を傾けていくつもりだ」と述べた。


アンナ・スキナー

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