Infoseek 楽天

ここまで効果的...ロシアが誇る黒海艦隊の揚陸艦を撃破、「海上ドローン」攻撃の瞬間を捉えた映像を公開

ニューズウィーク日本版 2023年11月16日 20時21分

<黒海におけるロシア軍の防空体制の一翼を担う黒海艦隊の揚陸艇2隻に、水上ドローンが攻撃を成功させたとウクライナ軍が発表>

ウクライナ軍は、クリミア半島の港に停泊中のロシアの揚陸艇2隻に海上ドローン(無人機)で夜間攻撃を行った。ウクライナ軍情報機関は攻撃により損壊を与えたと11月10日に発表し、その模様を捉えた動画を公開した。ドローンに搭載されたカメラで撮影された映像には、敵に気付かれることなく揚陸艦に突っ込み、爆発させる瞬間が残されている。

■【動画】ここまで効果的...ロシアが誇る黒海艦隊の揚陸艦を撃破、「海上ドローン」攻撃の瞬間を捉えた映像

「一時的に占領下に置かれたクリミアにおける夜間作戦で、(ウクライナ軍の)兵士たちはロシアの黒海艦隊に属する小型の揚力艇を損壊させた」と、ウクライナ国防省情報総局はメッセージアプリ・テレグラムの公式アカウントで発表した。

黒海に突き出したクリミア半島では今、情勢が一段と緊迫している。半島奪還を目指し、ウクライナ軍が攻勢を強めているためだ。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこの地をロシアが武力で一方的に併合した2014年以前の状態に戻すと宣言している。

公開された1分近い動画には、1機のドローンが艦船に接近し、夜空に煙が上がる模様が写っている。ウクライナ軍はロシア兵と装甲車両を載せた揚陸艇を狙ってドローンを発射し、見事衝突させたと、ウクライナ情報総局は説明している。

黒海における防空のために使用されていた艦艇

同局の見るところ、標的になったのはセルナ級揚陸艇だ。米政府系の自由放送(ラジオ・リバティー)によれば、小型のセルナ級揚陸艇は貨物45トンと92個の重武装部隊を積載できるという。

「占領軍は、トールM2対空ミサイル・システムを活用した黒海における防空のために、これらの艦艇を使っていた」と、ウクライナ国防省はX(旧ツイッター)の公式アカウントで述べている。

本誌はこの発表の真偽を独自に確認できなかったため、ロシア国防省にメールでコメントを求めた。同省は11月10日に2機のドローンが夜間にクリミアを攻撃したことを認めているが、詳細は明かさなかった。

クリミア半島周辺ではここ数週間、ウクライナ軍の攻撃が一段と活発化し、ロシア軍が守勢に回る状況が続いている。ウクライナ国防省に近い複数の専門家は以前、ウクライナ軍はクリミア解放に向けたステップとして、黒海艦隊を「無力化」する戦略を進めていると本誌に語っている。

クリミア解放のためにマルチドメイン作戦を決行

既にウクライナ軍の一連の攻撃で、黒海艦隊の一部の軍艦はクリミア半島南端の母港セバストポリから退避を余儀なくされている。先月撮影された衛星画像で、数隻の艦船が黒海に臨むロシア南部クラスノダール地方の港湾ノボロシスクとクリミア半島の別の港湾フェオドシヤに移動したことが確認された。

その何日か前の9月22日には、ウクライナ軍がセバストポリにある黒海艦隊の司令部にミサイル攻撃を加え、艦隊の司令官を含む複数の将官を殺害したと伝えられた。

ウクライナ軍はこれまでにロシアの複数の軍艦を破壊。最近ではセバストポリのドックに入っていたロプーチャ級揚陸艦ミンスクとキロ級攻撃型潜水艦ロストフ・ナ・ドヌーに修復不能な損壊を与えている。

米軍の欧州軍司令官を務めたベン・ホッジス元陸軍中将は先月、ウクライナ軍はクリミア解放のために「マルチドメイン(領域横断型)」作戦を実施しており、半島とロシアを結ぶクリミア大橋の破壊もその一環だと本誌に語った。

「これは全て、ロシア軍がクリミアを維持・使用できなくするための攻撃で、その間にウクライナ軍は十分な戦闘能力を蓄え、半島解放の戦いに打って出るつもりだ」


イザベル・バンブルーゲン

この記事の関連ニュース