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ホリエモン、落合陽一、見城徹...箕輪厚介が「大物」たちの懐に入り、仕事を成功させてきた「秘訣」とは

ニューズウィーク日本版 2023年11月25日 20時53分

<「怪獣人間」たちは、普通なら無理と思われることに熱狂し、普通なら我慢できることが我慢できない。だからこそイノベーションが起こせる>

堀江貴文、見城徹、落合陽一、前田裕二など、さまざまなジャンルの大物の懐に入り、ベストセラーを次々に生み出してきた幻冬舎の名物編集者・箕輪厚介さん。狂ったように目的だけを見て、成果を残していく大物たちを、箕輪さんは「怪獣人間」と呼びます。

「怪獣人間」の生態をどう理解し、いかにして発掘してきたのか? 箕輪さんが自身の編集論を書き尽くしたのが『怪獣人間の手懐け方』(クロスメディア・パブリッシング)です。「怪獣人間」と渡り歩き、関係を深めるための秘訣とは?(※この記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です。)

◇ ◇ ◇

出版オファーの最初のテーマは「気づかい力」だった

──まずは、『怪獣人間の手懐け方』の執筆のきっかけは何でしたか。

2022年に、新人女性編集者から「気づかい力のテーマで書いてほしい」とオファーをもらったんだけど、「いや、気づかいって俺じゃないでしょ」と放置していた。

でも、年が明けて「新しいことをやろう」と思い立って、高田馬場の書店で書店員のバイトを始めたりしたんですよ。そういえば出版のオファーがきていたなと思い出し、編集者と打ち合わせをすることに。企画をもんでいくうちに、「ややこしい大物たちとうまく渡り歩いて仕事をするには?」みたいな切り口なら書ける、となりました。

狂ったように目的だけを見て、成果を出し、世の中を大きく動かしていく。そんな大物たちはまさに「怪獣人間」。このネーミングは、ブロガーのはあちゅうさんが考えてくれたもの。最初は大物たちとのエピソード中心の本を想定していたんだけど、意外に再現性のありそうな内容もけっこう書けることがわかってきた。

編集者に問われるのは、「人間としての固有の生き方」だけ

──幻冬舎から『かすり傷も痛かった』が同日発売されますが、何か狙いが?

たまたま締め切りが重なっただけなんです。ラーメンとサウナ漬けだったから、そろそろ仕事しようと思って。『怪獣人間の手懐け方』『かすり傷も痛かった』、けんすうさんの『物語思考』、ビッグモーターの元幹部・中野優作さんの『クラクションを鳴らせ!』と、同期間で4冊同時進行でした。

──箕輪さんご自身が怪獣人間だと思っていますが、この本はテクニックではなく、箕輪さんの人との向き合い方や生き様が書かれている気がします。

この本は僕の編集論そのもの。編集者として問われるのは、人間としての固有の生き方だけだと思っています。結局は「自分はこういう人間なんだ」というものでしか勝負できないなって。

だから、テクニックやマニュアルはいらないし、死ぬ気で求めれば、いくらでも手段は出てくる。マッチョ主義に聞こえるかもしれないけど、僕は自分が本気で求めればどうにかなるって思うタイプ。逆に、けんすうさんは優しくて、「マニュアル通りにやればうまくできるよ」と方法を提示していて、そういうのが好きな人たちに支持されている。

僕は高尚なことをやる人間じゃない。たとえば、資本主義について語る本は、インテリやエリートが高層ビルの冷房がきいた部屋で「資本主義って問題あるよね」って言っているようにしか思えなくて。もちろん、そういう本が世の中を形づくる部分もあるけど、リアルな現場を見ていると思えない。僕は、地方でもヤンキーの集まりにも顔を出して、そこらへんに歩いているような、もっと普通に生きている人に届く本がつくりたい。

『怪獣人間の手懐け方』
 著者:箕輪厚介
 出版社:クロスメディア・パブリッシング
 要約を読む
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見城さんもイーロン・マスクも「無理」なことに熱狂する

──これまで出会ってきた数々の「怪獣人間」の共通項は何ですか?

共通するのは、人が考えつかないようなことや、無理に決まっていると思うことを、全力でやり続けているところ。常識や前例なんて気にしていないし、突き抜けている。だから努力だけで到達できない場所にいる。

彼らには「無理」なんて発想はない。たとえば、僕が双葉社にいて『たった一人の熱狂』を出版したときは、著者の見城徹さんが「重版のタイミングが遅いから幻冬舎の流通を使え」って言ったんです。幻冬舎の流通で双葉社の本を流通させようとするなんて、正直失礼だと思いますよ。でも、そういう常識を飛び越えていく人ですよね。

ガーシーさんも、自分のYouTubeチャンネルがバンされたときに、グーグルの偉い人を見つけて直談判しようとしたりとか。いや、無理でしょうって(笑)。周りは振り回されますけど、空気や常識にとらわれないから、物事を動かすことができる。

僕は怪獣人間のそういうところが好きだし、彼らの影響で「無理」という発想はもたないようになっていった。僕の箕輪家というラーメン屋の店長・丸ちゃん(丸山紘平さん)も、無理って言わなくなりました。ブラック企業みたいかもしれないけれど。

たとえば、大分で堀江さんのお湯かけフェスがあるから、キッチンカーでラーメンを売ろう、となったのに、大分にキッチンカーがないとわかった。何とかSNSや知り合いづてにキッチンカーをもっている人を見つけたと思ったら、今度は保健所から「お湯を沸騰させたらダメ」といわれた。絶対無理じゃんと(笑)。でも無理なんてことはない。そこで「焼きラーメン」ならできると思いついて、「超背徳家系焼きラーメン」という新メニューが生まれたんです。

──そのストーリー自体にひきつけられますね!

怪獣人間は基本的にわがまま。普通は我慢できることが我慢できない。でも、無理なんてないという発想でいたら、イノベーションが起こるんですよね。

起業家も同じ。スムーズに進められる事業なら差がつかないし、誰かがやっているはずで、大して儲からない。イーロン・マスクも三木谷浩史さんも、無理なことだから熱狂するんだと思う。「この壁を乗り越えたら絶対面白い! ブルーオーシャンだ」って。

ほとんどの人は、そこまでして成し遂げたい野望をもっていない。だからゼロイチの野望をもつ怪獣人間たちの近くで仕事をすると、大きなものを得られる。あらゆる方法を試すと、新しい景色が見えてくるし、解決可能なことしかないなって思えるようになるんですよね。

「こうあるべき」を、全部破壊したい

──数々の怪獣人間と関係を深めるなかで、箕輪さんご自身についての新たな発見や価値観の変化はありましたか?

根は変わっていないけれど、もともとの僕の特性がガンガン強化されて、スケールが大きくなっているのかな。リスクに飛び込むとか、危ういことが好きとか。

僕がしたいのは「人間の解放」。「こうあるべき」みたいなものを全部破壊していきたいんです。人を傷つけたらダメだけど、「こうありたい」という欲求に制限はいらない。日本だと「こうあるべき」が強いので、それを緩めていくような本を作りたい。

──「こうありたい」という自分の欲求に気づけない人もいますよね。

けんすうさんの『物語思考』が支持されているのは、そこな気がして。やりたいことがなくてもいいよっていうのが、けんすうさんの主張。ぼくも別にこれがやりたいとかないですからね。

実は『かすり傷も痛かった』は、2018年に書いた『死ぬこと以外かすり傷』の内容を全否定する本なんです。「やりたいことをやれ」って書いたのに、「やりたいことなんてないよね」とか。あんなに「熱狂せよ」って読者を煽ったのに、「熱狂は続かない」とか(笑)。

わかったのは、見城さんや孫正義さんは永遠に熱狂できると思うけど、僕はそういうタイプじゃないってこと。年単位でも日単位でも、めちゃめちゃ熱狂しているときと休んでいるときの周期がある。サウナに入って、水風呂入って、外気浴で休むみたいな。そのサイクルを回していくのが僕にとっては一番幸福度が高いと最近気づきました。

50歳、60歳になっても「死ぬこと以外かすり傷」と言っていたら、ちょっと嫌なやつですよね。価値観が螺旋階段を上るように変化していくほうが、人間としての味わい深さが出る気がして。

『かすり傷も痛かった』で「脱競争」を謳ったワケ

──これまでの箕輪さんの考え方とかなり変化があるように思いました。転換点はありましたか?

文春砲で一時期仕事がなくなったからですよね。当時はちょうどマレーシア移住を考えていたりして、熱狂が冷めかけていたタイミングだったんですが、走り続けていたレールって降りにくい。でも、あのときはNewsPicks Bookの編集長をやめたし、半ば強制的にレールから降ろされたようなもの。それまでは自分の本がAmazonランキング上位を独占してないと恥ずかしいと思っていたし、本屋さんに行っても自分の本がランクインしてないとダサいと思っていた。ある種、競争中毒だったけれど、一旦競争から降りたら別にどうでもいいわって。『かすり傷も痛かった』では「脱競争」と書いているんですが、競争にとらわれなくなってよかったと思っています。

ただ、最初から「ゆるくいこう」は違うと思っていて。ある程度競争で勝ってきて、時間もお金も余裕ができてからでないと、「脱競争」とか言ってもしんどいだけ。よほど自分の価値観を持っている人じゃないと資本主義のレースから逃げるのは難しい。何かの領域で結果を出してから、競い合いを続けていくか、自分なりのレースをつくるのかを選ぶと思うんですよ。

──まるで「守破離」みたいですね。

まさにまさに。僕にとって見城さんとかホリエモン(堀江貴文さん)のビジネス書に書いてあることを、誰よりも実践して、徹底的にインストールする。これが「守」にあたります。

ライトな自己啓発書は、よく「ファスト教養」って馬鹿にされるんですけど、そんなことなくて。こういうビジネス書は、誰が読んでも仕事をするうえでのベースとして役立つと思う。僕も徹底的に「守」をやることで仕事でも結果を出せた。その後、仕事がなくなって自分と向き合うことが「破」になって、まだ「離」には至ってないけれど、自分流みたいな感じになってきているんですかね。

怪獣人間を面白がるには、「人間に対する解像度」を上げよ

──怪獣人間は人の本質もズバっと見抜くため、こちら側の人間性も丸裸にされると思います。彼らに信頼されるには「人間に対する解像度」を上げることが必要とありましたが、箕輪さんが実践してきたことがあれば、お聞きしたいです。

「この人、何考えているんだろう?」って永遠に考えているんですよね。学生のときから「箕輪に分析されたくない」って言われていたんですよ(笑)。プールで3時間くらい人の分析をしていたから。

「この人、こんないいこと言ってるって絶賛されているけど、裏ではこう思っているんじゃない?」「それ綺麗ごとじゃない?」とか。それが合っているか間違っているかは二の次で、大事なのは、人に対して自分なりの見方をもつようにすること。

だからこそ、こうして「本当はこうじゃないか?」というのがわかる人同士は、「この人はわかってくれる」ってつながり合うんだと思います。

「Z世代」なんて嘘っぱち。沢木耕太郎が教えてくれたこと

──最後に、箕輪さんの人生観を変えた本は何でしたか? そこからどんな影響を受けたのかお聞きしたいです。

中学か高校のときに読んだ沢木耕太郎さんの『深夜特急』かな。大学に入った瞬間に、沢木耕太郎の講演会があるって知って、バックパックにサインしてもらって、そのままインド行くみたいな。超ベタな読者でした。

『深夜特急』は会社員になろうと思った沢木さんが、入社式に雨が降ってきたからなんとなく行きたくなくなって、世界横断の旅に出るっていう話で、そういうふうになりたいなとは思いますよね。みんなが選ぶ道に「僕はいいや」って、自分のやりたいことを優先し、自分なりの気づきを得ていくみたいな。

僕は「Z世代」みたいな言葉も嫌いなんですよ。みんながみんな「環境を大事にしよう」とか、嘘っぱちだなって(笑)。1つの年代を「Z世代」ってラベリングして、「キャンペーンやりましょう」みたいなのが嫌い。本当はそんな記号化された人はいなくて、一人一人の個を見たら、とてつもなくしょうもない悩みを抱えていたりするはず。沢木耕太郎みたいに、「入社式が嫌だから世界横断しよう」って行動をとれる人は稀だけど、これから入社する人たちの思いは個としてそれぞれ違うはず。Z世代には環境保護だと言ってペットボトルを拾う人もいれば、「ブレイキングダウン」のオーディションで目立とうとしてペットボトルを投げる人もいる。僕はその固有性や、一人の人間の中の多面性に興味があるし、そういう個人的なものを本にしていきたいですね。

箕輪厚介(みのわ こうすけ)

幻冬舎 編集者。

大学卒業後、双葉社に入社。「ネオヒルズ・ジャパン」を創刊し完売。『たった一人の熱狂』見城徹、『逆転の仕事論』堀江貴文などの編集を手がける。幻冬舎に入社後は、新たな書籍レーベル「NewsPicks Book」を立ち上げ、編集長に就任。『多動力』堀江貴文、『日本再興戦略』落合陽一、2019年一番売れてるビジネス書、『メモの魔力』前田裕二など次々とベストセラーに。自著『死ぬこと以外かすり傷』は14万部を突破。雑誌「サウナランド」は2021年のSaunner of the Yearを受賞。2022年『死なばもろとも』ガーシーを出版。

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flier編集部

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