<NATO加盟の報復に「自転車難民」を送り込んでくる?ロシアの新種の攻撃を防ぐには、人権保護に厚いフィンランドも壁を築くしかない>
フィンランドは、ロシアとの国境からの入国制限を強化している欧州諸国の一つだ。際限なく続く亡命希望者は、フィンランドを弱らせるためにロシアが送り込んでいる「武器」だと非難している。
<動画>自転車でフィンランド国境を突破しようとする難民たち
ある専門家は本誌の取材に対し、ロシアは、NATO加盟でアメリカと軍事同盟を組んだフィンランドの決意を試そうとしていると語り、状況はさらに悪化する可能性があると付け加えた。
フィンランドでは南部の国境から入国を求めるイラク、イエメン、ソマリアなどからの亡命希望者が急増し、11月16日、ロシアとの国境にある9カ所の検問所のうち4カ所を2月18日まで閉鎖すると発表した。
フィンランド国境警備隊によると、フィンランド南東部にあるバーリマー、ヌイヤマー、イマトラ、ニイララの各交差点に障壁が設置された。この4カ所は両国間の最も交通量の多い地点で、1日あたり約3000人が国境を超える。
この動きを見たノルウェーのエミーリエ・エンゲル・メヘル法務大臣は、ロシアからノルウェーへの越境者が急増した場合、極北にあるロシアとの国境を閉鎖する用意があると警告した。
越境阻止に動く近隣諸国
一方、バルト三国のエストニアでは、ソマリアからの移民8人が国境都市ナルバを経由してNATOおよびEU加盟国に入国しようとする事件があり、必要とあればロシアとの国境通過点をすべて閉鎖すると発表した。
エストニア政府は、東部ナルバにあるロシアとの国境に、対戦車用の「竜の歯」という障害物を設置するよう命じた。ラウリ・ラーネメッツ内相は、ロシアが「理由もなく」亡命希望者を国境に向かわせていると非難した。エストニアは、書類も許可もなしに国境を越えようとする人々を全員送還した。
ヨーロッパ各国のロシアとの国境における緊張を如実に物語るのが、ニイララ国境駅でのフィンランド国境警備隊と移民の対立を撮影した動画だ。ソーシャルメディア上で共有された画像には、自転車で国境に集まった難民たちの姿が写っている。
フィンランドはロシアと1340キロに渡る国境を接している。
フィンランドのペッテリ・オルポ首相は、ロシアがフィンランドのNATO加盟に報復しようとしていると主張し、ロシアからの難民は「ロシアの国境警備隊の助けを借りて国境まで護衛されたり、移送されたりしている」と非難した。
シンクタンク英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のアソシエイトフェローでヘルシンキ大学の客員研究員サリ・アルホ・ハブレンは、ロシアはフィンランドのNATO加盟と10月に発表されたアメリカとの防衛協力協定(DCA)の両方に反応していると述べた。
「フィンランド当局は、こうしたロシアの圧力に断固として対応する用意があると言っているが、状況は緩和されるどころか、悪化する可能性がある」と彼女は本誌に語った。フィンランドは今も国際人権協定を遵守し、正当な亡命希望者の申請手続きを進めているというが、ロシアはそれを逆手に取っている可能性もある。
ロシアはフィンランドに圧力をかけるために亡命希望者を利用している、とハブレンは言う、「冬の気候を考えると、国境地帯に集まった人々はとても厳しい状況にある」
「今や、フィンランドに住むロシア人までが、国境を開放し続けるよう要求し始めている。事態の根本的な原因はロシア政府の攻撃的な政策にある」と、彼女は言う。「ロシアが次にどんな行動を計画しているのか、推測するしかない」
巧妙な難民利用作戦
ロシアのドミトリー・ペスコフ報道官は、フィンランドが移民問題でロシアと対立するのは「大きな過ち」だと述べ、ロシア外務省は「移民を武器化している」というフィンランドの主張を否定。「非常に奇妙」な非難だと表現した。
移民の武器化といえば、ロシアから数千人の移民がロシアの同盟国ベラルーシ経由でEU加盟国のポーランドとリトアニアに入国した2021年のケースが有名だ。EUはベラルーシの指導者アレクサンドル・ルカシェンコがEU圏を不安定化させようとしていると非難した。
フィンランドのタンペレ大学の研究員ペッカ・カッリオニエミは、ロシアはベラルーシとともに、軍備と難民の「ハイブリッド攻撃作戦」をEUに仕掛けていると本誌に語った。
「ロシア政府は、この作戦からさまざまな面で利益を得ることができる。国内のプロパガンダに利用できるだけでなく、フィンランドを亡命希望者を不当に扱う国に仕立て上げることもできる」
<動画>自転車でフィンランド国境を突破しようとする難民たち
Migrants from Russia continue their attempts to break into Finland.Finland's authorities have closed four out of the eight border crossing points with Russia. They justified their decision by a large number of migrants from third countries that they blame Russia for: Russian... https://t.co/Bxtwld3K59 pic.twitter.com/wE5cGBYhYU— Anton Gerashchenko (@Gerashchenko_en) November 19, 2023
ブレンダン・コール
フィンランドは、ロシアとの国境からの入国制限を強化している欧州諸国の一つだ。際限なく続く亡命希望者は、フィンランドを弱らせるためにロシアが送り込んでいる「武器」だと非難している。
<動画>自転車でフィンランド国境を突破しようとする難民たち
ある専門家は本誌の取材に対し、ロシアは、NATO加盟でアメリカと軍事同盟を組んだフィンランドの決意を試そうとしていると語り、状況はさらに悪化する可能性があると付け加えた。
フィンランドでは南部の国境から入国を求めるイラク、イエメン、ソマリアなどからの亡命希望者が急増し、11月16日、ロシアとの国境にある9カ所の検問所のうち4カ所を2月18日まで閉鎖すると発表した。
フィンランド国境警備隊によると、フィンランド南東部にあるバーリマー、ヌイヤマー、イマトラ、ニイララの各交差点に障壁が設置された。この4カ所は両国間の最も交通量の多い地点で、1日あたり約3000人が国境を超える。
この動きを見たノルウェーのエミーリエ・エンゲル・メヘル法務大臣は、ロシアからノルウェーへの越境者が急増した場合、極北にあるロシアとの国境を閉鎖する用意があると警告した。
越境阻止に動く近隣諸国
一方、バルト三国のエストニアでは、ソマリアからの移民8人が国境都市ナルバを経由してNATOおよびEU加盟国に入国しようとする事件があり、必要とあればロシアとの国境通過点をすべて閉鎖すると発表した。
エストニア政府は、東部ナルバにあるロシアとの国境に、対戦車用の「竜の歯」という障害物を設置するよう命じた。ラウリ・ラーネメッツ内相は、ロシアが「理由もなく」亡命希望者を国境に向かわせていると非難した。エストニアは、書類も許可もなしに国境を越えようとする人々を全員送還した。
ヨーロッパ各国のロシアとの国境における緊張を如実に物語るのが、ニイララ国境駅でのフィンランド国境警備隊と移民の対立を撮影した動画だ。ソーシャルメディア上で共有された画像には、自転車で国境に集まった難民たちの姿が写っている。
フィンランドはロシアと1340キロに渡る国境を接している。
フィンランドのペッテリ・オルポ首相は、ロシアがフィンランドのNATO加盟に報復しようとしていると主張し、ロシアからの難民は「ロシアの国境警備隊の助けを借りて国境まで護衛されたり、移送されたりしている」と非難した。
シンクタンク英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のアソシエイトフェローでヘルシンキ大学の客員研究員サリ・アルホ・ハブレンは、ロシアはフィンランドのNATO加盟と10月に発表されたアメリカとの防衛協力協定(DCA)の両方に反応していると述べた。
「フィンランド当局は、こうしたロシアの圧力に断固として対応する用意があると言っているが、状況は緩和されるどころか、悪化する可能性がある」と彼女は本誌に語った。フィンランドは今も国際人権協定を遵守し、正当な亡命希望者の申請手続きを進めているというが、ロシアはそれを逆手に取っている可能性もある。
ロシアはフィンランドに圧力をかけるために亡命希望者を利用している、とハブレンは言う、「冬の気候を考えると、国境地帯に集まった人々はとても厳しい状況にある」
「今や、フィンランドに住むロシア人までが、国境を開放し続けるよう要求し始めている。事態の根本的な原因はロシア政府の攻撃的な政策にある」と、彼女は言う。「ロシアが次にどんな行動を計画しているのか、推測するしかない」
巧妙な難民利用作戦
ロシアのドミトリー・ペスコフ報道官は、フィンランドが移民問題でロシアと対立するのは「大きな過ち」だと述べ、ロシア外務省は「移民を武器化している」というフィンランドの主張を否定。「非常に奇妙」な非難だと表現した。
移民の武器化といえば、ロシアから数千人の移民がロシアの同盟国ベラルーシ経由でEU加盟国のポーランドとリトアニアに入国した2021年のケースが有名だ。EUはベラルーシの指導者アレクサンドル・ルカシェンコがEU圏を不安定化させようとしていると非難した。
フィンランドのタンペレ大学の研究員ペッカ・カッリオニエミは、ロシアはベラルーシとともに、軍備と難民の「ハイブリッド攻撃作戦」をEUに仕掛けていると本誌に語った。
「ロシア政府は、この作戦からさまざまな面で利益を得ることができる。国内のプロパガンダに利用できるだけでなく、フィンランドを亡命希望者を不当に扱う国に仕立て上げることもできる」
<動画>自転車でフィンランド国境を突破しようとする難民たち
Migrants from Russia continue their attempts to break into Finland.Finland's authorities have closed four out of the eight border crossing points with Russia. They justified their decision by a large number of migrants from third countries that they blame Russia for: Russian... https://t.co/Bxtwld3K59 pic.twitter.com/wE5cGBYhYU— Anton Gerashchenko (@Gerashchenko_en) November 19, 2023
ブレンダン・コール